再開 三
瑞樹のやつ確実に変だった。陽介もそうだったが、仲間の話を出すと二人とも凄い動揺していた。あの感じは普通じゃない。もしかして仲間に何かあったのか。そう思いながら俺は買い物を済ませて家へと続く道を歩く。
エアコンが効いた涼しいスーパーから出たせいで凄く暑い。滝のように汗が流れる。だけどこの汗が暑さだけのものによって流れているものなのかは少しわからなかった。俺の中には今考えてはいけないような内容が浮かんでいる。そんな思考を頭から捨て去り、俺は急ぎ足で家へ向かった。
「あれ? もしかして裕太か?」
いきなり名前を呼ばれて足を止め、声のする方を見る。するとそこにいたのは二人の女子。木陰にあるベンチに腰掛けてアイスを食べている大人びた子と小さくて可愛らしい女の子。俺はこの二人を知っている。
「花蓮と遥か?」
「やっぱり裕太か。久しぶりだな」
そう言ってほほ笑む大人びた女子は野崎花蓮。俺たちの仲間の中の一人で、一番落ち着いて大人びていた奴だ。一年以上会ってないだけなのに凄い大人びていて驚いた。
「久しぶりだね裕太君。私は一発で分かっちゃったよ」
そう言ってにっこりと可愛らしく笑うのは中村遥だ。こいつももちろん仲間の一人。仲間の中ではマスコットのようなポジションにいて、それは中学になっても変わらなかった。可愛らしさだけなら中学一だったため、数人に告白されたという噂も多々聞いていた。
「お前には言われたくないぜ。遥はあんまり変わってないな。それに比べて花蓮は変わったな。マジで大人びた」
「それは遥にも言われたよ。私自身あまり変わってないと思うんだけどな」
「そんなことないよ! 花蓮ちゃん凄い美人になったよ!」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
花蓮は手を持ち上げて遥の頭をなでる。それを受けて遥は安心したように笑う。この二人の行動はかなり絵になる。一部の人たちにはかなり受けていた。
「でもいつ帰ってきたんだ? 去年は帰ってこなかっただろ」
「母親に流石に帰って来いって言われて今日帰ってきたんだよ。まあ帰ってきてすぐこき使われてるわけだが」
「それでスーパーの袋を持ってるんだね」
「そういうこと。ていうかそういうお前は何やってんだ? こんなくそ暑いのに」
「遥がアイス食べたいって言いだしたからだよ。私はその付き添い」
「だって花蓮に会うの久しぶりなんだもん!」
「久しぶりってどういうことだ?」
「私も地元を離れてるんだ。今ここから離れた女子高に通ってる」
「そうだったのか」
俺以外に地元に残っていないやつがいたとは驚きだ。まあ仲間の進路なんか聞かずにここを飛び出した俺が悪いのだが。それにしても女子高に通っているとは驚いた。
「でもどうして女子高なんだ? なんか理由でもあるのか?」
「もともと遥を誘っていくつもりだったんだ。だけど遥がてしまってな」
「ごめんね花蓮ちゃん。私バカだったから……」
「気にしなくてもいい。私もこっちで楽しいし、遥も楽しんでるんだろ」
「うん! 花蓮ちゃんと離れたのは悲しかったけど……」
「なんかやっぱりお前ら二人は全く変わってないな」
仲間の中でもこの二人は本当に仲が良かった。時々二人の間に割って入ることすらできなかったくらいだ。陽介も瑞樹も仲間の話をしようとしたら変な反応をしていたから少し嫌な予感がしたが、この調子なら大丈夫だろう。
「そういえば他のみんなはどうしているんだ? 元気してるんだろ?」
「え?」
その疑問を投げかけたとき、二人の顔から笑顔が消えた。そして衝撃を受けたような顔をする。
「なんだよ? なんか変なこと聞いたか俺」
今回ばかりは逃がさない。さっきの二人も驚いた顔をした。絶対に何かある。話してもらわないとこっちの気が済まない。
「すまない。その話にはあまり触れたくない」
「どういうことだよ?」
「正直この話はもう封印されてるんだよ……」
「俺には話せないってのか!」
思わず声を荒げる。するとその声に驚いて遥がビクッと怯える。そういえばこいつは極度の怖がりだったな。俺は俯いて「ごめん……」と謝った。
「裕太君は知らなくてもいいと思う。知ってもいいことないと思うから……」
遥にそう言われて次何を言えばいいかわからなくなった。というより、何を聞いてもダメなんだろうと思った。もう俺には知る由もないだろう。
「わかった」
そう一言いい残して俺はその場を去った。その時の俺の気持ちは仲間たちに裏切られたようでとても残念だった。