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帰省

 電車に揺られること二時間が過ぎた。電車に乗った駅の周りはかなり栄えていたし、電車が走りだした頃に窓の外を見るとビルが建ち並んでいた。しかし今窓の外を見ると見えるのは木や田んぼばかり。電車の中にいるのにセミの鳴き声が聞こえる気がした。二時間前とは違い過ぎる。その光景に俺、黒木裕也は懐かしさを覚えていた。


(田舎すぎる…)


 中学卒業後、俺は都会の学校に通うことを決意した。理由は田舎に嫌気を指していたからだ。このまま田舎暮らしを続けると一生自給自足をする羽目になっていただろう。そんな人生はまっぴらごめんだった。


『まもなく、宮野川。宮野川』


 車内アナウンスから地元の名前が聞こえてくる。この名前を聞くのは実に一年半ぶりだ。正直地元が嫌いな俺は帰ろうとは思っていなかった。その結果一年半もの間地元に帰ろうとはしなかった。決め手になったのは母親からの『友達に会わなくていいの?』というメールだった。


 宮野川は小さな町だ。だから幼稚園も小学校も中学校もメンバーが変わらない。つまりお互いを知り尽くしているのだ。母親の言っていた友達はその中でも特にかかわりの濃かった五人。あいつらが何をしているかは確かに気になる。


 電車が駅に停車し、俺は外に出る。すると夏の日差しと熱気が全身を襲い始める。できることならもう少し電車の中の冷房で涼んでいたかった。


 謎の後悔をしながら俺は電子カードで改札を通る。思っていた以上の値段が改札に表示されて言葉が出ない。あとで親に請求しよう。


 駅を出て街を見下ろす。駅は高い場所にあるから街を見下ろせるのだ。みんなでよく遊んだ公園。通った小学校と中学校。そして秘密基地を作った山。自分の家や友達の家。この景色を俺は昔から何度も見てきた。


 ついに地元に帰ってきた。そう思った俺の足は、ローダンセを無慈悲に踏みつぶしていた。

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