学園HEROS
3.鳥串大晴
「今回の活動内容を発表しまーす」
僕は先日のことがあり、体験入部期間を使って???部に来ていた。
「まずは部室の掃除!
こんな物置状態じゃ来る人もこないよ」
物置の自覚はあったのか、、
「でも、どうするんですか?
これってなにかのイベントで使われた道具ですよね?」
「うん、そうだよ!
先生には一応許可取りしてるし
これを全部校舎裏のごみ捨て場に
もっていくの」
「え~、全部ですか?」
???部の部室は校舎の3階の一番隅なのに、、、
「さ、行くよ~
まずは重いものからね
軽いのは後でまとめて行けばいいし」
七草先輩は部室から人体模型を引きずり出す。
あれいつ使うんだ?
「じゃあ頭持って!
私、脚行くし」
2人で持ち上げ、運び出す。
普通に重い、、
「そーいえば、先輩ってなんで部活
作りたいんですか?」
先輩は一旦考え、両の口角を上げ、満面の笑みで
「人の助けをする仲間が欲しかったからかな!
私1人だと助けられる人も減るし!」
「人助けですか、、
ボランティア部的なやつですか?」
「ん~まぁ、そんな感じ」
少しの沈黙が漂う。」
「黒西君ってさ、2年の黒西渚ちゃんの弟?」
「はい、そうですよ
知ってるんですか?」
僕には姉がいる。
義母の連れ子なので義姉であるが、
6歳から一緒に暮らしている。
「もちろん!大大大親友だよ!」
そんなことを言ってる間にごみ捨て場に着く。
ゆっくり下ろし、ようやく1つ目
「さ、次行こうか」
「はい」
その日の部室の掃除だけで終わった。
家に帰るとリビングに姉がいた。
「ただいま」
「おかえり~
英太、アイスいる?」
「うん」
姉からバニラアイスを受け取って、ソファに座る。
姉は抹茶を選んだようだ。
「どう?学校、慣れた?」
「まぁまぁって感じ
部活も決めたし、」
アイスを口に入れると、ひんやりとした甘さが舌全体に広がる。
「へー、何にすんの?」
「名前はまだらしいんだけど、
七草先輩が作ってる部活」
「え、ナナちゃんの?」
ナナちゃんというのは七草先輩の愛称だろう。
「うん、姉ちゃん知り合いなんだよね?」
「そうだよ~
良い子でしょ?」
「うん、まぁ、元気な人だよね」
最後のアイスをすくい口に含む。
そのままカップを流し台に置き、2階に上がる。
明日は何するのかな?
授業が終わり、3階の部室に行く。
部長はまだ来てないっぽい
昨日で掃除はほとんど終わり、あとは清掃だけだった。
埃くらいこの教室が今日から僕らの部室になる。
そういえば、うちってなにする部活なんだろ?
「で、昨日アイス食べてたんだけどね、
それがもぅ~可愛くってね!」
「も~ナギちゃんその話、朝からしてるよ~」
下の階から聞き覚えのある声が2つしてくる。
姉と七草先輩だ。
「お!もう来てたんだ
早いね~」
「こんにちわ、七草先輩」
なにやら、隣の姉がソワソワしている。
「どうしたんだ?姉ちゃん」
少し顔を赤らめた姉が聴いてくる。
「いや、その~今の話、、聴いてた?」
「なんの話?」
姉は目を見開き
「ううん、なんでもない!」
と語尾を上げて喜んでいた。
その横で七草先輩はニヤニヤとしている。
「ところでなんで姉ちゃんがいるの?」
「英太の様子見に来たんだよ~」
「別にわざわざ見にこなくても、、」
「黒西君、姉心ってやつだよ」
「ちょ、ナナちゃん!」
「アハハ」と笑う七草先輩と困り顔の姉
この2人を見ていると本当に仲が良いんだなと思う。
姉は勉強もスポーツも出来て、顔も世間一般から見ても美人な方である。
中学生の時はよく妬みや僻みの的になっていた。
だから、七草先輩のような人が友達だと弟としても安心できる。
「と、とりあえず、今日は何するか決まってるの?」
「うん、部室の清掃」
姉は部室のなかを見て
「確かに埃っぽいわね」
と、眉をひそめて言う。
「じゃあ早速始めますか!」
とりあえず棚の上や中、机の上を吹いたりした。
その後、ほうきでまとめて捨て、始めとは見違えるほどに綺麗になった。
「はぁー、疲れた~」
ソファにダイブする七草先輩。
「お疲れ様です」
「でも、いよいよだよ!
これでようやく、、、」
「ん、なんだろう?」
廊下が騒がしい。
「ドタドタ」と大勢の足音がする。
扉を開け廊下側を確認する。
「、、大晴!!?」
「おー!英太じゃん!助けてー」
中学の時から友人の鳥串大晴が、大勢のユニフォームを来た人達に追いかけられている。
なんとなく察しがついた。
大晴は中学の時から運動神経が抜群によく、注目の的だった。
だから、大晴を部活に入れようと皆必死なんだろ
う。
そのまま一直線で走ってきて、部室に駆け込む大晴。
それを先輩と姉が凝視する。
数秒の沈黙。
大晴が閉めたはずのドアが大きな音をたてて、開け放たれる。
「鳥串君!ぜひ、サッカー部へ!!」
「いや、野球部だよね!」
「いやいや、バスケ部入るよね!!」
そんな感じでギャーギャーと勧誘をする先輩達。
あまりの勢いに腰が抜けてしまった僕。
すると、走りきって床に突っ伏してた大晴が起き上がり
「いや、俺???部に入りますよ」
数秒間が空き
『えぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!?』
と、大晴以外は全員この反応。
七草先輩は歓喜の驚き、勧誘にきた先輩達は普通に驚き、僕は最大の驚きだった。
「え、本当なのか!?七草!」
サッカー部の先輩が七草先輩に聴く。
「うん、本当だよ!」
いつものニッコリとした笑顔で答える七草先輩。
それと対比して、恋人に振られたような顔の先輩達。
「ま、そういうことなんで
すいません皆さん」
大晴は一礼をする。
先輩達は興が冷め、ぞろぞろと部室を後にする。
「いやー、助かりましたわ!
マジ感謝!!」
大きくため息を付き、勢いよくとソファに座る大晴。
「まじで入る気か?うちの部活」
「入るよね!?鳥串君!!」
大晴の答えを待たずに、食い気味で答える七草先輩。
「う~ん、助けてもらってアレなんですけど、
わかんないっス」
やっぱり勢いで出た物だったか。
中学の時もそうだったが、大晴は部活を毛嫌いしている。
あの皆で一致団結して頑張る感じが嫌いなのだとか、
「そもそも、この部活ってなにするとこなんすか?」
大晴の疑問に七草先輩は笑顔で答える。
「人助けをする!!かな」
「人助け、、
なんか面白そうすね!」
「でしょでしょ!?」
いつもよりテンションの高い七草先輩。
「でも、今部活のメンバーって何人なんですか?
英太の姉ちゃんも入ってるんですか?」
姉は首を横に振り
「いや、私は部活の様子見に来ただけだから」
と答える。
横の七草先輩は少し残念な顔をしている。
「そっかー
確か部活の創設必須メンバーって、」
「5人だよ
部活紹介でも言ったけど、うちは今月末までに5人いないと廃部しちゃう」
大晴はそれを聴き、天井に目を向け
少し考えた後、勢いよく立ち上がる。
「よし、じゃあ俺入りますよ!
???部!」
「本当!?やったーー!」
七草先輩は跳びはね大喜びする。
「英太もよろしくな!」
「おう」
大晴と七草先輩の笑顔はよく似ている。
昼の太陽のように暖かく、優しい笑顔。
僕とは違う2人に少し憧れる。