学園HEROS
2.黒西英太
「部活体験はあと1週間程だから放課後
行きたいとこがあったら行っとくように
正式に入部できるのは一週間後です。」
ホームルームが終わり、教室を出る。
入りたい部活のない僕は迷わず校門へ向かう。
校門の前にはでっかい看板を持った女子生徒が1人いた。
七草鴎さんだ、、、
どうやら彼女は先輩達の間でも有名人らしく、茶化されたりしていた。
僕は帰宅部生に紛れ、目をつけられないように校門を出ようとする。
「ちょっと待って!」
腕を捕まれる。
恐る恐る視線を向けると、そこには目をキラキラに輝かせた七草鴎さんがいた。
「えっと~何ですか?」
苦笑いを浮かべながら聴く。
他の生徒は僕達を避けるように校門を出ていき、その誰もが僕に対してドンマイという表情を向けていた。
「君!新入生だよね!!」
ドキッとする。
なぜ知ってるんだ?
「ぇと~、そうですけど
何で知ってるんですか?」
「だって部活紹介の時いたじゃん!!」
「え?」
覚えてるのか?
1年だけで300人はいるんだぞ!?
「ま、とりあえず、部室いこーーー!」
七草さんは僕の手を引き、走り出す。
「ちょ、、、」
「ここが???部の部室です!!」
「はぁ、」
結局連れてこられた僕は目の前の物置部屋を見る。
多分、文化祭で使われたであろう小道具や、衣装などがあった。
「君さ!うちに入らない!?
今なら副部長になれるよ!」
「副部長、、」
「そう!どう?」
強引に押してくる七草さん。
「、、、考えときますね」
やんわり断る時に使う
伝家の宝刀『考えときますね』
これならこの先輩だって、
「いや、今欲しいんだ
答え」
効かない!?だと、、
今までこれでどんな押しだって乗り越えてきたのに、、
だが、そこで1つの疑問が頭のなかを過る。
「あの~、1つ聴いてもいいですか?」
「うん、いいよ~」
「何で僕なんですか?
あの校門を通っていた1年は僕以外にも
結構いた気がしますけど、、」
「え!?そうなの!
気づかなかった~」
「え?覚えてなかったんですか?」
「覚えてる?1年生を、全員?」
突然、七草さんは吹き出した。
「覚えてるわけないじゃん!
1年生って確か300人位いるんでしょ?
ムリムリ」
どこにツボったのか
腹を抱えて笑っている七草さん。
「え!?だって僕のこと覚えてたじゃないですか?
それでてっきり、、、」
「あぁ、だって君は
私のことしっかり観ててくれたから」
「え、」
「体育館にいた誰よりも君が私を観ていてくれた
だから誘ったんだよ」
何故かその時、喜びを覚えた。
この人は僕を観ていてくれてたんだって
窓から射す光が七草先輩を照らす。
その時の先輩は、とても美しく見えた。
「は、入ります!
???部!」