表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

最強の誕生②

  ドラゴンはこの世に存在する魔物の頂点に位置する生物である。

  あらゆる攻撃を跳ね除ける強靭な鱗にあらゆるものを噛み砕く最硬の牙、そして無尽蔵に生み出される魔力を基にした強力な攻撃魔法は一流魔導師のそれを優に凌駕する。

  固体にもよるがミゲルが呼び出したドラゴンは一体で大きな街一つ滅ぼせるほどのものだ。

  一般的に魔物を召喚し使役する召喚術の中でもドラゴンを召喚するには本来は国を挙げての大掛かりな儀式が必要なのだ。

  それを一人で二匹も使役するのは異能の力もあるがミゲル本人の持つ潜在能力(ポテンシャル)の底知れない高さのおかげである。

  この力によってミゲルは強者達がひしめく星浄教会内でもトップの激戦区 異端審問会の会長にまでのし上がったのだ。

 

  「さぁ、行け我が眷属よ。目の前の魔王を貪り殺せ。」

  ミゲルの号令と共にけたたましい咆哮をあげる二匹の怪物はまず赤竜が先頭を切ってモドキに襲いかかりその後ろを青龍が続く。





うひゃあ。あれがドラゴンってやつか。初めて見た。

案外トカゲっぽい顔してんだな、なんて考えていると赤竜の牙がオイラの体を貫いた。

噛まれた箇所からは血が吹き出し体が二つに割れかける。

2枚目は顎が外れそうなほど高笑いしている。

赤竜はオイラの血潮を美味そうに啜っている。

美味いか?よかったな。最後にいい夢が見られて。

先程からずっと赤竜の()()()()()()()オイラは右足で赤竜の首を思いっきり蹴り飛ばす。

すると、竜の鱗が小気味よく割れ、肉が裂け骨が砕ける感触が足に伝わる暇すらなく竜の首は胴体から離れ凄い勢いで吹き飛んだ。

竜の首は山をいくつもぶち破り遥か彼方へと飛んで行った。

山はU字型のオブジェへと見事に変貌した。


「グガァァァァァァァァァァ」

青龍が背後からオイラに襲いかかってくる。

ウルセェな。きっとひと睨みすると青龍の動きがぴたっと止まった。


「お、おいどうした?行け、行くんだ。」

青龍の後ろから哀れなほど必死な叫び声が聞こえる。

オイラが一歩踏み出そうとした時青龍は背を向け驚くべき速さでいずこかへと飛び去った。

あっ、逃げた。まぁいいか。



「なっ、う、嘘だお前みたいなガキにドラゴンが逃げ出しただと…」


2枚目は口を金魚みたいにパクパクさせている。

オイラが少しずつ近づくと剣を構えた。

しかし、剣が小刻みに震えている。

戦ってもいいがめんどくさいからカットで。


「えっ…」

まず2枚目の両腕を消し飛ばした。

空中に血の虹が咲く。

2枚目は何が起きたのか分からずキョトンとしていたが自らの体が異様に軽くなったことに気づいたのだろう。

かつて腕があった場所を見た。そして絶叫した。


「ギャァァァォァーーーーーお、俺の腕が。」


「だから、ウルセェって。」

顔面を踏み潰し鼻をへし折る。

「次騒いだら睾丸を潰す。わかったら頷け。」

2枚目が何度もコクコクと首を縦に振る。


よし、素直で大変よろしい。

「じゃあ、質問だ。まず、お前の名前は?」


「み、ミゲルです。」


「よし、ミゲル君オイラはこれから君にいくつか質問をする。素直に答えてくれたら君をこれ以上痛めつけない。」

ミゲルは唇を強く噛み双眸が裂けんばかりにオイラを睨みつける。

屈辱に苛まれているのだろう。

それもそうか。

自分たちより遥かに劣る何かに負けた挙句に両腕を消しとばされたんだからな。


「意地を張るのは勝手だが余計苦しくなるだけだぞ。こちとら人がどこをどうされれば長く苦しむか知り尽くしてんだ。」

いわば拷問のスペシャリストって感じだな。

はは…全然笑えねぇ。





クソックソックソッ。

調子に乗りやがって。魔王ごときが。

見てろよ。貴様は異能の万能感に酔いしれて油断している。

そこを突いて殺してやる。

俺はわざと聞かれたことを誰にも聞き取れないほど小声で話した。


「え、なんだって?」

すると案の定魔王はもっとよく聞き取ろうと顔を俺の方へと近付けてきた。

阿呆が。

瞬間俺は魔王の頸動脈を思いっきり噛みちぎった。

口には暖かい鮮血の味があふれる。

限りなく甘い。

「は、ははは。馬鹿が虫けらごときが調子付きやがって。貴様の遺体は虫けらにでも食わしてやるさ。」


「それは、困るなぁ。オイラにも墓は欲しい。」



ミゲルは聞こえるはずのない声がした方へと反射的に振り向いた。

すると、そこには首に傷ひとつ無い魔王が立っているではないか。


なんで生きてるんだ。たしかに殺した筈だ。まさか幻か?

いや、そんなはずはない。あの肉を噛みちぎった感触はたしかに本物だった。

ならば答えは一つ。魔王の異能だ。

しかし、どんな異能だ?皆目見当がつかない。

先ほどは指一本触れずに部下を皆殺しにしたかと思えば今度はリアルとしか思えない幻を見せる。

なんなのだ。一体?


ミゲルの身体中から冷や汗が吹き出す。

そんなミゲルの様子を感じ取ったのだろう。

魔王が笑みを浮かべた。


「お前さんがさっき体験した出来事は本物だよ。オイラはたしかに死んでいた。そういう現実だった。」

ミゲルには言っている意味がわからなかった。

しかし、魔王が嘘をついていないことだけは本当だとわかった。


「さぁ、もう満足しただろう?素直に答えてくれよ。」




「ふざけるな!この異端審問会会長ミゲルが魔王の拷問ごときで口を割ると思うか?」



「わかったよ。じゃあ我慢比べだ。」

本当はあんまりやりたくないんだけどなぁ。




面白かったら高評価、ブックマークお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ