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自分の世界を作ろうーLet's making my world  作者: でぃく
1章 ゴブさんの拠点造り
5/15

1-2 現状確認

ゲーム世界の話ですが、またまた説明タイムです。

 気が付くと、目を閉じた状態で俺は立っていた。

 木々のざわめきと、わずかに触れる風を感じてゆっくりと目を開ける。目の前には、今までいた白の世界でも見慣れた天井でもなく、周囲を覆う木々の群れだった。


「これが、VRゲーム?マジで現実みたいだな」


 いくらグラフィックがきれいになろうと、現実との差は発生し違和感はあると思っていた。しかし、自分が今見ている光景や感覚は、実にリアルで、今までの世界こそが偽物であったのではないかという錯覚を起こしそうになる。軽く頬をたたいてみるが痛みはない。フルダイブ式VRゲームは痛覚までは厳密には再現していないと聞いたことがある。痛みがないってことはやはりここは・・・。

 そう思い自分の手を見て言葉が詰まった。手が緑色だ。慌てて自分の体を見回してみて改めて驚く、手だけでなく全身が緑色で上半身は服を着ておらず下は茶色く汚れたハーフパンツをはいているだった。そして、いつもより視線が低い。地面から120cm程度だろうか、いつもであればひざ立ちか正座をした程度の視線が、たった状態で広がっている。


「そういえば、ゴブリンを選んだんだったか・・・」


 先ほどまでやっていた初期設定を思い返す。種族値のみで何気なく選び、お試し感覚でいたが少し後悔した。しかし、現実と背丈が異なるアバターでも問題なく動かせるというのは発見である。あと、言葉も普通に話せるようで安心した。これが「ゴブ」としか話せないなんてことになったら、即リセットしていただろう。

 とりあえずはステータスを見てみるか。


 名前:ミヤ

 ・種族:ゴブリン ・Lv:1 ・取得経験値:0

 ・HP 10/10 ・MP:3/3

 ・腕力:3 ・知力:4 ・技量:4

 ・体力:2 ・精神:1 ・敏捷:2

 ・スキル:【採取Lv1】【採掘Lv1】【伐採Lv1】【棒術Lv1】


 能力値として高い低いは分からないが、ゴブリンLv1のステータスだ弱いだろう。戦闘になったらHPが0になる前に、撤収するしかないな。しかし、これからどうするか・・・。


「プレイヤー『ミヤ』の覚醒を感知しました。ただいまよりチュートリアルを開始します」


 無機質な音声と共に目の前にウィンドウが立ち上がる。ゲーム開始前の説明の時間だ。普段はスキップしているが、初めてのフルダイブ式VRゲームだ。操作方法の感覚が違うだろうしここはしっかりと受けておこう。

 まずは世界観や地形についての説明をナビゲーションAIが始める。直前にユウからのプレゼンを聞いていたが、ここで新しい情報が入った。それは各種地形の環境に適合した野草動物や魔獣が生息しているということ。そう、すでに魔獣が生息しているらしい。

 てっきりエンカウントする敵モンスも俺が準備するかと思っていたのだが、すでに設置済みで制作者のアバターだろうが容赦なく襲ってくるようだ。

 街づくりに必要な素材はこのような魔獣からも手に入れることができるようで、積極的に狩る必要があるだろう。まあ、俺のステータスではかなり厳しい為、しばらくはスキルを使った素材回収がメインだろう。

 次にこの世界の発展の方法について、これは制作者である俺の一番の目的だ。ユウからの説明であった通り、発展のためには素材が必要となり、それは先ほどの魔獣を狩ることや指定のポイントで採取や採掘を行うことで手に入れることができるが、ただ素材を手に入れるだけではダメらしい。その素材を使って製作する物の設計図が必要になるそうだ。本来であればこれはNPC商人から購入したり、クエストの報酬として受け取ることができるのだろうが、今俺がいるのは完全な未開拓の森の中で、それらの存在と出会える可能性はかなり、いや、ないだろう。


「マジか・・・これはかなり無理ゲーじゃないか?」


 本来であれば運営が用意すると言っていたサンプルでクエストをクリアしたり、素材を揃えてからこちらの世界で調達するなどの措置があるのかもしれないが、現在そこには行く手段がない。というか、行く方法を教えてもらっていない。こんな状態なら、そりゃテスターも集まらないだろうよ・・・。

 いや、待てよ、魔獣が自動で設定されるとしたら、そういう街や村もある程度は自動で設定されるのか?でも、フィールドMAPでそれっぽい場所はなかったよな?それは俺がゴブリンだからなのか?理由はどうあれ、周囲の探索を優先したほうがいいだろう。素材集めをしつつ周囲の探索、これはかなり厳しいな。

 この先が思いやられる状態だが、ナビの説明は続いていく。今度は、採取や採掘・伐採などの方法についてだった。これらは該当するスキルを保持していると取得できる場所が光って見えるらしい。実際に周囲を見回してみると茂みの中の草が光っていた。そういえばランダムで取得できる採取・採掘・伐採がすべて持っていたな。これはかなり良いんじゃないか?

 少し希望が見えたような気がして、試しに光っている場所に触れてみるとアイテムを取得したとアナウンスが出ていた。


 【未鑑定】謎の草

 ・用途不明の草


 未鑑定品?どういうことだ?

 首をひねっていると、ナビが補足説明をしてくれる。どうやら採取で手に入れたものには【鑑定】というスキルをしないと、どういうものか分からない仕様らしい。未鑑定品でも取ったものを食べたり投げたりすることはできるようだが、怪しいものを食べようとは思わない。食べたら鑑定扱いになれば試してもよかったが、そういう仕様ではないらしい。

 ゴブリンは初期スキルとして【鑑定】が設定されていないので、これの詳細を知るためには【鑑定】持ちのNPCに見せる必要があるが、今の状況では無理な話である。ちなみにヒューマン・エルフ・ドワーフは持っていたようだが、今の状況ではどうしようもない。やはり選択を間違えたか・・・。

 最後に戦闘方法についてだが、これは意外と難しかった。初期装備として支給されていた『こん棒』というただの短い棒を手に持ち、練習用に現れたかかし相手に殴ってみるが距離感が掴めない。これは現実とゲームのリーチの違いから出ているらしく、近づきすぎたり離れすぎたりしてしまった。ただしスキルを使った戦闘術-アーツを使用した場合は、それらの距離感は自動で補正されるため使いやすいことが分かった。ただし使用したアーツはしばらく使用できなくなるクーリングタイムが設定されている為、乱発ができない点は注意が必要だ。

 その後、食事やパーティーシステム、LvUPとスキル取得・熟練度システムなどの説明を受ける。その後、一通りの説明を終えたナビは、チュートリアル終了のアナウンスと共に沈黙した。そして、俺は今の状況に頭を抱えることになる。


「やっべぇ、どうするか・・・。さすがに一人じゃどうしようもないよな・・・」


 いくら何でも一人でやるには無理がある。この世界でもスキルという概念があり、それを持っていなければ家を建てたり、畑を耕したり、そもそも道具をそろえたりすることもできない。そんな状況で独りでせっせと街つくりをする・・・?かなりのドがつくマゾさんじゃないとやっていけないだろう。

 これをこれから1か月間、空いた時間にやり続けろ・・・?正気かあいつ・・・。脳裏にへらへらと笑うゆるふわ天パの悪友の顔を思い浮かべ、殺意を思い浮かべる。


「よし、一度ログアウトして問い詰めて・・・ってなにか届いてるな」


 思い切り殴ることを決意した俺は、ログアウトボタンを押す前にメールボックスに未読のメールが届いていることに気が付いた。

 どうやら、チュートリアル完了による報酬がもらえたようだ。開いてるとLvUPやスキル取得に必要な経験値と、『携帯食料』というアイテム5個取得できた。


 携帯食料 ☆1

 ・1本で満足できる健康バー


「味は・・・あまり美味しいものではないな」


 食事は1日に最低1度はとる必要があるそうで、前に食べた時から24時間が経過するとステータスにデメリットが付くらしい。忘れないうちに食べてみたが、好んで食べるほど美味しいものではなく、ほんの少し甘味が感じられるパサつくほどではないしっとりしたクッキーバー。ある意味、説明文通り1本で満足、というかお代わりはいらないアイテムだ。しかし、この世界で活動するなら、これを食べ続けることになるだろう。☆は品質を表しているようなので、最低品質という事だが、最大の☆10になると味は変わるのだろうか?


「っていうか、これもスキルで作らないとダメってことだよな・・・。よし、絶対にあいつを殴る。その前にもう1通を確認しておくか」


 もう一つは「制作者の皆様へ」というタイトルだ。中身を見てみると『サポートAI引換券』というものが入っていた。

 そういえば、あの悪友が説明で言っていた気がする。だがNPCが一人ついたところで、今の状況がどうにかなるわけじゃ・・・。


 サポートAI引換券 ☆10

 ・発展のサポートを行うNPCを召喚する。譲渡・売却不可。


「いや、意外となるのか?」


 幸い【採取】【採掘】【伐採】といった素材集めのスキルはそろっている。確定で必要なのは【鑑定】と取得した素材を加工できるスキルだ。理想は家が建てれそうなスキルか、鉄を加工できるスキル・・・そうなると【木工】か【鍛冶】といったスキルだろうか。【採取】でとれた謎の草が薬草とかならば、【調薬】も有効かもしれない。サポートAIってことは、そういうことができるスキル持ちってことだよな。

 淡い希望を持ちながら『サポートAI引換券』の使用ボタンを押す。すると画面からいくつもの光の粒が飛び出し、目の前の空間に集まり徐々に人の形に収束していく。いきなりの演出にとっさに俺は目を腕で隠し、光が弱まるのを待つ。数秒間の演出が終わったことを感じた俺は、ゆっくり何があったのかを確認する。そこにいたのは灰色のロープを身にまとった少女の姿であった。

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