夏祭り(中編)
気が付けば10月も終わりですね……(泣)
中々更新出来ず申し訳ありません。
「むふぅ……」
満足げな水曜日が抱えているのは、菓子の詰め合わせセット。
その辺の駄菓子屋(といっても最近は見かけないが)であれば百円もしないだろう代物だった。
だが彼女が実質的に得たのはちゃちな菓子セットではなく、「射的で景品を獲った」という満足感……プライスレスな経験というやつなのかもしれない。
本当のところは僕にもわからない。そう、まさにプレイスレス……。
「フ……まったくあの嬢ちゃん、いい顔しやがるぜ……俺たちァあの顔見るために射的続けてんのよォ……」
おお、なんだこの怪しげなリーゼントのおじさんは?
僕の小ボケが滑り倒したことに対しての救済措置か?
「おいおい、忘れたとは言わせないぜ………」
??
「田中!コー……ただの田中!!さっきまで普通に話してただろ!!?」
もう前回から3ヶ月くらい経ってるからなぁ……
「ねぇなんですぐそうメタに走っちゃうのかなぁぁぁぁぁあ!!」
さて、一通り田中さんを転がし終わると、タイミングよく水曜日が僕の方へと軽やかに駆けてきた。
「お兄様、ここでの目的は達成しました、次に行きましょう!!」
その後、僕と水曜日はリンゴ飴や焼きそば、金魚掬いなど、お祭りの定番を遊び尽くした。
そうして歩き疲れた頃、水曜日は両手にいっぱいの金魚やヨーヨーやらを抱え、お面を横向きに付け、リンゴ飴と綿飴を交互に食べているという大変忙しない状況に陥っていたのだった。
「お、お兄様ぁ…ど、どうしましょう水曜日、とても楽しい、です……!」
楽しそうにパタパタと袖を振って歩く水曜日の姿に、思わず笑みがこぼれた。
水曜日も悪魔……なんだよな?こうしてみると普通の女の子変わらないように見える。
顔は相変わらず無表情で、クールな妹キャラなのだけど。
「お兄様、そろそろメインに行きませんか?」
不意にかけられた声に俯けていた顔を上げると、眼前に水曜日の整った顔が広がった。
メイン?
なにそれ銀河の歌姫?
僕が首を傾げると、水曜日はぷくりと頬を膨らませた。
「違います。お兄様、今日は花火を見にきたのですよね?そろそろ打ち上がる時間ですが」
あぁ、花火!
屋台を満喫しすぎてすっかり忘れていたけど、そういえば花火大会に来ていたのだった。
黒目川沿いを見に行ってみようか。
そう提案すると、水曜日は珍しく口角をいっぱいに上げて、
「はい!」
元気よく返事をしたのだった。
✳︎
「うぅ、繋がらないなぁ〜」
これで五度目となる留守番電話サービスの音声を聞きながら、月野天は大きくため息をついたのだった。
「もーよくない?早く行かないとお祭り終わっちゃうし」
退屈そうにベンチに腰掛けているのは同じクラスの西田暦ちゃん。茶髪のポニーテールが印象的。
今日は年に一度の夏祭りの日で、勇気を出して好きな人を誘ってみたんだけど……。
「う……暦ちゃん……」
じわりと涙が滲んだ。暦ちゃんの慌てた声が聞こえる。
「わ、泣くなっての!ほら、ソラの好きなチョコバナナあっちにあるし!行こ!」
何故わたしがこんなに涙目なのかというと、どうやらその好きな男の子に約束をすっぽかされたっぽいのです。
勇気を出して約束を取り付けたまではいいものの……
「やっぱり脈無しなのかなぁ……」
「いや、アイツそんなモテないっしょ」
ポツリとこぼした弱気な発言に、暦ちゃんがすかさずツッコむ。うう、厳しいなぁ。
「でも、シュウくんってすっごくかっこいいし、すっっっごく優しいんだよ??女の子だったら絶対惚れちゃうよ……」
「ベタ惚れ!?そもそもアタシ、アイツの名前がシュウってことすら初耳なんですけど……ってちょ、あれ?噂をすればってやつじゃん」
そう言って暦ちゃんが指差した先には、シュウくんと、可愛らしい女の子が腕を組んで楽しそうに歩いていた。
「あっ!あっ!こ、暦ちゃん!い、いるよ!いたよぉ!」
「あっ、そんなツチノコ見つけたみたいな反応なんだ…」
「あの子が妹さんかな?おーい!シュウくーん!!」
ブンブンと手を振りながら大声で呼びかけても、お祭りの喧騒でシュウくんは聞こえていないみたいだった。どんどん歩いていって、人混みに消えてしまった。
「しゃあなし、近くまで行こっか」
「うん、そうだねっ!」
心が湧き立つのが分かる。ちょっと遅れちゃったけど、シュウくんとお祭り……!
そういえば、さっきシュウくんの側にいる女の子がこっちを睨んだ様に見えたのは……気のせい、だよね……?
「出番……」
土曜日が泣いてますが、水曜日編もうちょっと続きますよ!!




