Side 水曜日
「……すき」
どうしようもない。抑えきれない。
「すきすきすき」
心臓がドクドクと激しく脈打つ。
せっかくさっき整えたお兄様のシーツが、またくしゃくしゃになってしまう。
でも止められない。止める気も、なかった。
初めて会った時から、目が離せなくなった。
7日に一度しか会えないのが、苦痛だった。
だから、日付が変わった瞬間からお兄様の部屋に入るのが私の習慣になった。24時間、お兄様を感じていたかった。
「すき」
言葉にするたび想いは強くなる。
恋は熱しやすく冷めやすいなどと言うけれど、私のお兄様への想いは冷めるどころかますます熱を増していく。
「……っ!……ぁ……お兄様ぁ……」
こんな蕩けた顔をした私を見たら、お兄様はどう思うだろう。いつも無表情な妹が、いない間に、こんなふうに自分のベッドの上で悶えていることを知ったらどう思うだろう。
好きです、お兄様。
この世界の何よりもあなたを愛しています。
きっと他のどの曜日よりも。どの女よりも。
すきです。
玄関が開く音が聞こえた。
きっとお兄様が帰ってきたのだ。
少しボーッとする頭を抱えながら、汚してしまったシーツを綺麗に整える。
そして何事もなかったように階段を降りる。
「ただいま……」
帰ってきたお兄様は少しお疲れみたいだった。学校で何かあったんだと分かった。
でもそんなことお構いなしに抱きつく。
胸いっぱいにお兄様の匂いを吸い込む。
私を幸せが包む。
すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
そうして堪能した後、上を見れば少し困った顔のお兄様がいる。すき。
「おかえりなさい兄様。ご飯以下略、それともワ・タ・シ?」
「反応に困るから止めなさい水曜日……」
その言葉に少しムッとする。未だにお兄様は私のことを妹だとは思ってくれていない。
他の曜日と同じ、仲の良い同居人程度にしか思っていない。それが悔しい。
少し強くお兄様の体に抱きつく。そうしたらお兄様から衝撃的なことを聞かされた。
来週、花火大会に行くらしい。しかもクラスメイトと。
私は思わず、いつものように丁寧に話すことも忘れてお兄様に詰め寄ってしまった。
誰と、どうして、誰が……。
お兄様は少し戸惑った様子だったけれど、月野という女から誘われたことを教えてくれた。
私は月野を知っていた。以前火曜日が学校に行った時、会ったと言っていた。
……火曜日といえば、昨日アイツのせいでお兄様が学校に遅刻したって聞いた。許せない。
気付かぬうちに口から声が出ていた。
「絶対お兄様は渡さない」
「水曜日?」
お兄様が不思議そうな顔で私を見ている。
でも安心した。きっとお兄様はこの誘いに乗り気じゃない。
私は満面の笑みを浮かべて言った。
「分かりましたお兄様。私、お兄様のクラスメイトと『仲良く』できるように頑張りますね」
「うん……そうしてくれると助かる」
そう言うとお兄様は優しく頭を撫でてくれた。
安心してお兄様。水曜日に全部任せて。
水曜日がお兄様を困らせる女も、邪魔な曜日も綺麗に片付けるから。
そしたらもっと、褒めてくれるよね?
主人公って何者なんですかね?




