霧
夜霧が出ていた。
さまざまなモノの境界がにじんで曖昧に感じる。
外灯のあかりが柔らかくなる。
肺に入る空気の湿度が濃い。
いつもより音が静かに感じる。
深夜に走る車たちも大人しい。
物陰の輪郭がぼやけて感じる。
国道沿いのマクドナルドの黄色い看板がやけに主張する。
国道を照らす背の高い明るい外灯が乳白色のなかに並ぶ。
明かりの下で、空気の揺らぎに合わせて、霧が生き物のように動いて見える。
空気中の水分に乱反射して光源のあわいが明確ではなくなる。
怪異でも何でもないが、少し怖く、ざわつく夜。
こんな夜は、あの川沿いの道や、坂を少し登ったあの道は通りたくない。
この世のものざる何かの存在が強まる気がする。
何かがいつもと違う夜。