01.目覚め
残業にきちんといつも通り取り組み、きょうは珍しく家で寝れるぞ、そう思い部屋の扉を開ける。
ベッドにすぐに倒れ込み、深いため息をつく。
「ブラックすぎる」
そうつぶやき、うつぶせの状態から仰向けになろうと体を動かす。
仰向けになった瞬間すさまじい光が天井からさしてくる。
それは強い眠気を放っているようで残業の続きの私は目がすぐに閉じていった。
次に目を覚ました時には、良く分からない建物の中にいる。
まわりには私とは髪色が異なるメイド服を着た女性たち。
そして一斉に歓声を上げ始める。
目が覚めたばかりの私には痛いくらいのその声は一人の女性が私に近づいてきた瞬間止んでいく。
そして彼女は私にこういうのだ。
「私は魔術師ですわ」
「はい?」
「一緒に働きませんか?」
働くという言葉に敏感になっている私は今のこの状況よりも気になることをつい言葉にしてしまった。
しかも食い気味で。
「その職場はホワイトですか!?」
「ホワイト?」
言葉は通じるのにホワイトという意味は通じなかったみたいだ。
そして、私が今置かれている状況に不安を感じてきた。
目覚めた私はベッドに服を替えられて寝かされていた。
けれど、体に何かの異常は感じない。
「お名前を伺っても?」
「あ、三澄琥珀です」
「あら、その瞳と同じお名前なのね」
「瞳?」
よくわからないことを言われ、疑問に思っていると相手にも通じたのか鏡を渡される。
鏡に視線を移すと日本人であった私には想像のつかない瞳の色をしていた。
そう、琥珀色をしているのだ。
黄色のようなオレンジのようなそんな色をしている。
髪の色はもともと色素がうすく茶色寄りだったがここまで瞳は薄い色をしていた覚えはない。
「ここに召喚する間に何かあったのでしょう」
「しょ、召喚!?」
「はい。貴方をこの世界に召喚したのは私ですわ」
「いや、ちょっと待ってください!」
状況に理解が追い付かない。
確かに現実世界にこんなところあったらまずいけども、異世界というのも信じがたいのだが...と頭を悩ませていると突然扉が開き、がっしりとした服を着用している男性が入ってくる。
そして、私の目の前に来ると素早い動きで頭を下げられる。
わけも分からずおろおろしているとあちらから言葉が聞こえた。
そして、第一声は
「申し訳ないことをした!」
「あら、国王いらすなら先におしゃって下さいと言っているのに」
「君はいつも...誰のせいだと思っているんだ!」
「あの...?」
「申し遅れた、シラグ・ラントリトと申す。」
「私はミュアリー・ラントリトですわ」
周りをもう一度見返してみると私を囲んでいるメイド服の女性達は腰を低くしている。
私は本当に違う世界に来てしまったようだ。