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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第4章

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第93話 放課後、約束な!


 昼休みの中庭、俺はどうすればいいか困っていた。


「ほ、ほら、私が力になるよ!」


 目の前にはガチガチに緊張した結季先輩。

 それだけじゃなく、大きく手を広げてさぁ! と言わんばかりのポーズ。


 つまり、非常に目立っていた。


 昨日と同じくお昼を摂ってる他の生徒の目が痛い。


「ええっと、俺、そんな悩んでいるように見えました?」

「ふぇ?! いや、その……えぇっと……」


 単純な疑問だった。

 そんなに悩みがあるような顔をしていたのだろうか?


 中西君の件は、確かに悩みだけど……


 そう問いかけたら、どんどん結季先輩の目が泳いでいく。

 あわあわしながら、話と違うよ! と言いたげな表情で顔を逸らしてどこかを見る。


 その姿は、普段の凛とした姿からは考えられないほどの狼狽ぶりだ。


 ……本人には悪いけど、ギャップ可愛い。

 最近、こんなポンコツぶりを見かける機会が多いな。


「まぁ確かに悩んでることがあるんですけどね」

「そ、そうかい! 何かあるなら話してくれ! その、と、友達だろう?!」

「……友達」

「ち、違うのかい?」


 なるほど、そういうことか。


 こういう時、友達だと相談に乗ったりするのだろう、と考えて話しかけてくれたのか。


 そう考えると、一生懸命に話しかけてきてくれた結季先輩にほっこりしてしまう。

 思わず目尻も下がってしま――うん?


「どうしたんですか?」

「な、なんでもない!」


 なんでもないと言いつつ、頬を膨らませていた。

 ううん、なんだろう?


 ま、まぁいいや。


「実は、俺のクラスメイトが今度デートすることになってね――」



 …………


 ……



 と、中西君と根古川さんの件を、今までの事情を踏まえて説明した。

 結季先輩は俺の話を食い気味に聞いてくれた。

 お嬢様とはいえやはり女の子、こういった話題が好きなのだろうか?


 ともかく、要は全然意識していなかった子と恥をかかない様にデートするにはどうすればいいかってことだ。


 言葉にしてみると、我ながら情けない内容である。


「ふむ、デートと言えばウィンドショッピングが定番だと言うが……駅前のモールとかどうだろう? 若者向けもお店も一杯入っているみたいだし」

「あ、でも俺、ウィンドウショッピングってどう楽しめばいいかわかんないですよね」

「えっ?!」

「買う買わないもはっきりしないし、あれってどう楽しめばいいんでしょうかね?」


 そういや季節龍さんにも勧められたんだよな。

 だけど、どこが楽しいのか正直わからん。

 想像するしかないが、ただの苦痛な時間じゃなかろうか?


 しかし定番と言うくらいだから、女の子的には楽しいものなのだろう。

 その辺を教えていただければ――あれ? 結季先輩?


「すまない……実は私自身もウィンドウショッピングをした事無くて、その、どこが楽しいのか……」

「あぁ……」


 うんうん、お嬢様だもんね。

 むしろ外商を家に呼びつけて何かを買っているイメージだ。


「映画館はどうだろうか? 近くに人気のカフェもあるし、話題にも事欠かなくなると思うが」

「あぁ、いいかもね。あまり知らない相手だし、何もせず時間を潰せ――」

「初めていく場所としては不適切かもしれないな、うん」

「えっ?!」


 結季先輩は自分で提案しながら却下された。

 え? 相手を知るための交流が出来ない?

 うぅむ、そうなものなのか。無言でも許されるから良い案だと思うのだが。


「緑地公園はどうだい? 広々としているし、お弁当でも一緒に食べれば良い感じになると思う」

「根古川さん、料理とかできるのかな?」

「あっ……」

「まぁお弁当じゃなくても、足を伸ばしておしゃべり……いや、それが一番の難関か。そういう時って何を話せばいいんだろう?」

「うぅっ……」


 もっとも、俺も中西君もその辺りを卒なくこなせられるようなら、こんな事態になっていないんだけどな。


 他にも気になっていた事があった。


「根古川さんって、デートとか慣れてるのかな?」

「それは……」


 はっきり言って、俺も中西君もこういう経験は皆無だ。

 訓練も碌にされていない新兵と言ってもいい。


 もし、根古川さんが百戦錬磨の熟練兵だとしたら?


 ……考えるまでもなく恐ろしい。


 それでなくても、セコンドがたくさん付いているのだ。


「それがね、残念な事に根古川さんも初めてみたいなの」

「っ! 君は……」

「美冬」


 いつの間にやら現れた美冬が、俺たちの会話に入ってきた。

 ちゃっかりと俺の隣に座り、結季先輩と挟まれる形になる。

 正直目立つので止めてほしいところだ。


 根古川さんも初めてってどこで知ったんだ?

 まぁ女子の間にそういった情報網とかあるだろう。


「そうそう、お店行くならね、モール近くにあるグッズショップがいいかも」

「へ? どうして?」

「根古川さん、今よしネコに嵌まってるみたいだからね~。ちょっとしたキーホルダーとかなら数百円だし、プレゼントしてもいいでしょ?」

「お、おぉっ!」


 なんだか美冬がまともな意見を言ってる!


「他にも映画よりスポーツ観戦の方がいいんじゃない? 2人とも体動かすの好きみたいだしさ」

「でも贔屓のチームが違ったら喧嘩の元にならないか?」

「ん~、特に2人ともそういうの無いみたい」

「なるほど、これを切っ掛けにそのスポーツに興味を持つかもしれないと」


 確かに映画より、身体を使うと言う点でスポーツ観戦とかの方がいいかもな。

 映画よりも、自分の得意分野に近かったら意見も言いやすいだろうし。


 どうしたんだ、美冬?

 先日の紳士の社交場レポートとは打って変わってマトモだぞ?

 真面目に考えればちゃんと出来るんなら、最初から言ってくれよな!


 さて、俺は良い意見だと思うが、結季先輩的にはどう――あれ? 


「うふふ、ちょっと考えればこれくらいわかると思うんだけどぉ……箱入りのお嬢様にはちょおっと難しかったかなぁ。龍元せーんぱい?」

「うぐっ……!」

「美冬?」


 何喧嘩売ってんの?

 結季先輩泣きそうな顔してるよ?!


 あ、こら! ほっぺたつつかない!

 つつきたくなる位、むくれちゃってるけどさ!


「……ごめんっ!」

「結季先輩っ!」


 耐えられなくなったのか、ベンチを立ち上がり去っていく。


 なんだよ、一体……


「美冬、お前――」

「追いかけて!」

「――へ?」

「早く追いかけて、あきくん!」

「お、おう!」


 いつもの鈍くささはどこへやら、急かすように俺に追いかけろと言う。

 どういうつもりだったのか問い質したかったが――今は結季先輩の方が心配だ。


 一度だけ振り返ると、美冬は真剣な表情をしていたのが見えた。


 ……美冬、どういうつもりだ?




  ◇  ◇  ◇  ◇




 結季先輩に追いつくのは簡単だった。


 俺が追いかけているのにも気付いていたし、途中からは足早に歩いているだけで、どこかに誘導しているような感じだった。


 果たして、着いた場所は校舎の屋上。

 遮るものが何もないので、時折強い風が吹く。

 長い黒髪をどこか悲し気にたなびかせながら、フェンス際まで歩いていく。


「ははっ、情けない先輩ですまない」

「そんなこと……」


 ちゃんと応えられず、自分を責めているかのようだ。

 まぁなんとなく察してはいたけれど。

 いやでも、なんていうか、その――


「普通の友達ですら今までいなかったんだ、こんな私が相談だとか可笑(おか)しなことだったんだ……」

「結季先輩……」


 まるで慟哭だった。

 何ともならない事に関して、ただ悲しみ、泣き叫んぶ咆哮に聞こえた。


 よくわからないけど『それは違う』と無性に言いたくなった。

 この気持ち、どこかで……


 いや、今はそれよりも――


「よし、じゃあ放課後にでも遊びに行こうか! そうだな……件のモールとグッズショップはどうだ?」

「え? いや、それは……!」


 気付けば、そんな事を言ってしまった。

 随分大胆な事を言っているという自覚がある。

 だけどずっと昔に、こんな事を言っているかのような、そんな奇妙な気安さがあった。


「誰かに知らない場所を勧めるってのも変な事だろう?」

「それは……そうだけど……」

「なら決定! あ~、小春たちに見つかって変に勘繰られてもあれだな。現地で待ち合わせ……て、そういや番号もアドレスもしらないっけ。交換、いいかな?」

「ふぇ?! あ、はい、これ……」

「よし、駅前の改札な! 何かあったら連絡してください!」

「あ、うん」


 自分でもびっくりした。

 相手が先輩だとか、誰しもが知るお嬢様なんだとか、そういった認識はあった。


 だけど、小春や美冬みたいに、小さなころから知っている相手のような相手に言うように、気安く言った自分にビックリした。


 …………


 ははっ、この地を治めてきた龍元の血筋の力なのかな?


 それでもいいや。


 驚きながらも、何だか嬉しそうな顔をする結季先輩を見て、そう思った。


※ちなみにグッズショップの名はアニメート。某D&Dなどでのアニメート・デッド(死体操作)とかのアニメート。美冬に言わせたかったけどわかりにくいネタなのでやめました……


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