第35話 お泊り会➁
31.1.17 PM21:30頃 エピソード追加
「美冬?」
「…………」
押隈美冬という女の子は、昔から涙と縁が遠い存在だった。
いつもにこにこ表情を緩め、とてとて後ろを付いてくる。
最近は……まぁスキンシップ過剰で変なオーラを放出するけれど……
それでもやっぱり、涙とは無縁だ。
えーっと、その、なんだ。辛気臭い顔されると困る。
だから、なんとかしようと考えてしまうのは条件反射だった。
「美ふ――」
「ふゅーちゃん!!」
背後からドスドスと床を鳴らしながら小春がやってきた。
まるで食事を邪魔された人喰い虎のようにブスーっと不機嫌だ。
俺はそれを宥めるような目で小春を諌める。
ほら、美冬が――
「こんにちわ、あきくん、はるちゃん」
再び美冬に視線を戻したら、いつもの美冬に戻っていた。
……俺の勘違いだったか?
「あ、これお土産ね」
「お、おぅ……って何じゃこりゃ?!」
「うふふ♪」
手渡されたのはやたらファンシーにラッピングされた箱。
なんとなく、液体の入った瓶だというのはわかる。
中身が何かは聞かないけど。
「美冬お姉様も、もう来てたんですね!」
「あ、あのあの、お邪魔しますっ」
開けっ放しのドアの向こう側から2人の女の子が現れた。
1人は夏実ちゃん。
シンプルなデザインのチュニックにショートパンツ。
その幼い相貌も相まって、小学生の男子に混じって遊ぶ女子って感じ。
もう1人は、ふわふわの栗色の髪に眼鏡の小柄な女の子。
明るい色のカットソーにジーンズという、いかにも友達の家に遊びに来たって感じだ。
「夏実ちゃんに……ええっと……?」
「東野咲良ですっ、大橋さんのクラスメイトですっ!」
「あ、あぁよろしく」
そういやこないだ保健室で会ったっけ。
「初日に宿題終わらせるためにうちで集まるって言ったら、食いついたのよ」
「なるほど」
どこか照れくさそうに言う小春。
そういえば、美冬以外で小春の友達が来るのって初めてじゃないかな?
「先輩、これ」
「お、おぅ」
夏実ちゃんに手渡されたのはこれまたラッピングされた箱というか、ぜってーこれの中身福祉の濃いやつだろ、これ!
とりあえず突っ込んだら負けだと思うので笑顔で受け取ってスルー。
一方東野咲良と名乗った子は――
「お、大橋さんの彼と一緒って聞いてないんだけど!」
「お、落ち着いて東野さん! お兄ちゃんなの! 兄なの!」
「き、禁断の仲?!」
「ち、違うわ! 妹としての当然の権利を行使してるだけよ!」
――小春と不穏な会話を繰り広げていた。
妹の権利ってなんだよ。
そして時折、会話に筋肉という単語が混じっている。
……まぁ小春の友達だしな。
うん、それなりに逞しい子なのだろう。
それよりも。
「玄関先じゃなんだし、上がったら?」
◇ ◇ ◇ ◇
せっかくのGW、目いっぱい楽しむ為にも早めに課題を済まそうというのが今回の趣旨だ。
それはいい。俺も賛成だ。いつも結構後回しにして慌てるし。
「…………」
「…………」
「……んっ」
「……ふぅ」
リビングの大きなローテーブルの上でペンを走らせる音と、時計の針を刻む音だけが響いていた。
俺の右が小春で、左が美冬だ。正面に東野さん、そしてなぜか夏実ちゃんは隅っこ。
「ペットがご主人様と同じテーブルで課題をするとか、躾がなってないと思われますけど?」
そして夏実ちゃんは、頑なに座布団無しで正座することに拘った。
俺には女子中学生の思考がよくわからなかった。
はは、歳かな? ち、違うといいな。
部屋が暑いのか小春はやたらと肩がむき出しのオフショルダーの胸元を危うげにパタパタさせ、美冬は脇の甘いノースリーブでやたらと伸びをする。
当然ながら2人の豊かな部分が強調されるし、目にも毒だ。
はしたないぞ、2人とも。
ほら、見てる方が恥ずかしいのか、東野さんが真っ赤じゃないか。
同性から見てもエロい……んかねぇ?
ううむ。
さすがに俺相手にとはいえ見られるのもアレだろう。
それより、スカートから見える太ももの方が、その……
学校じゃない分、無防備過ぎませんかね?!
か、課題に集中しなきゃ。
しかし、2人の胸部アピールは止まることがなかった。
そう、最初は太ももだったのだ。
今日の小春と美冬のスカート丈は短い。
見てる方がハラハラしてしまうくらい短い。
普段の制服のプリーツスカートも短い。
丈で言えばそれとあまり変わらないだろう。
しかし!! しかしである!!!!
小春の薄手のふわりとしたフレアスカートはいつ軽やかにめくれ上がるかドキドキしてしまい、目を逸らしてしまう。
美冬のワンピースは胸下で絞り上げられたリボンから、まるでハイウェストのスカートがひらひらしているかのように見えてしまい、その危うさから目を逸らしてしまった。
視線をずらしても太もも露な夏実ちゃんは意識してしまうので、不躾と思いながらもジーンズ姿の東野さんの足をみてしまった。
あはは。
悪いと思ってるんだ。
だから東野さん、そんな涙目で睨まないで?
そんなこともあって、太ももより見慣れた胸元の方に視線を意識したのだ。
「…………」
うんうん、見慣れたおっぱいだ。
相変わらず皆おっきいねぇ。
今更特にこれといった感情も抱かず、安心するまでもある。
「んっ、お兄ちゃん気になる?」
「ふぅ、あきくん見えた?」
俺に話しかけてきているくせに、何故か小春と美冬はそれぞれお互いを意識していた。
睨み合うかのよう気を飛ばしあい、その余波で東野さんの肩がビクリと跳ねる。
今日は課題を片付けるんだから、大人しくして欲しい(切実感)。
胸はともかく、鼠径部のガードがですね?
「かもな。東野さん赤くなってるぞ」
「むぅ」
「んぅ」
気になる部分はあるけれど、東野さんをダシに逃げてみた。
しかし、小春と美冬はどういうつもりだ?
互いを意識しながら胸をアピールとか……2人とも人並み以上に大きいだろう?
テーブルの上に乗っちゃうのは、凄いと思うけど。
……その捲れ具合でパンツ見えないとか……紐か?!
いかんいかん、相手は妹と幼馴染だ。
紳士、そう……紳士に。
「…………(びくびく)」
ほら、東野さんを見てみろよ。
たまに、ビクンと身を震わせることがあるけれど、すごい集中力じゃないか。
それだけじゃなくてほら、たまにふわふわの髪をかきあげる仕草とか後れ毛とかが色っぽ……あ、またビクンって震えた。
寒いのか? でも汗かいてるし……やっぱ暑いのか?
あと夏実ちゃん? 足が痛いなら崩して座ろうね? 座布団もあるよ?
まぁ本当に暑かったら誰か言うだろう。
よし、俺も課題に集中しよう!
東野さんが、どこか訴えるような目をしてるけど……んー、気のせいかな?
長くなったので2つに分けました。
面白い!
続きが気になる!
ストロングにゼロだ!
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今夜のお供は完熟桃ダブルでっ!











