第34話 お泊り会①
レビュー頂きました! 室士郎様からです!
素敵なレビュー、ありがとうございました!
GWの初日の午前中、自分の部屋でネトゲをしていた。
そう、まるで現実逃避をするかのように。
美冬と夏実ちゃんがお泊りに来ることになったからだ。
正直、小春の相手だけで日々の精神力は削られまくっている。
最近冷やりとした事といえば、俺の秘蔵する紳士コレクションのラインナップが勝手に増えていた件だ。
厳重に秘匿していたはずなのに何故……
ちなみに増えたのは全て妹ものだった。
一体俺は、どういう試練を課されているのだろうか?
心の平穏のためにも犯人は捜すまい。
「ごめん、季節龍さんに綿毛らいおんさん。しばらくあんまイン出来ないかも」
『そうか、オータム君が来られないのは寂しいね』
『はっ、なんだー? 彼女でも出来たかー?(・∀・)ニヤニヤ』
「うっせ!」
季節龍さんと綿毛らいおんさんとはこのゲームで数年来の付き合いになる。
いわゆる固定PTってやつだ。
顔を合わせたり声も聞いたこともないけれど、中二病真っ盛りのキッズな俺を見放さず付き合ってくれた。
……まぁ面白がられていただけかもしれないけど。
だけど、今では年の離れたいい兄貴って感じの――
『オータム君も気を付けなよ? うちの高校でも男女の交際関係でGW明けの呼び出しが決定している生徒とかいるし』
「……え?!」
『えぇえっ?!∑( ̄Д ̄;)』
『な、なんだい?!』
俺と綿毛らいおんさんの発言が重なってしまった。
「季節龍さん、高校生だったんだ……」
『てっきり自分と同じ成人済みとばかり……(゜ー゜;A』
『えっ?! 老けて見られてた?! オータム君の1つ上なだけだよ?!』
へ、へぇ……てことは高校3年生なのか。
凄く落ち着いてるし、てっきりもっと年上かと……
『ちょ、ちょっとショック……これでもだね――』
――コンコン。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
控えめに俺の部屋の扉を叩き、小さな声で小春が問いかけてきた。
「ごめ、急用で落ちる」
『あ、オータ……まぁいい、お疲れ様』
『おっつー、またねー!(@^^)/~~』
別に見られて困るわけじゃないけれど、急いでゲームを終了させる。
なんとなく、普段と違う自分を演じているゲームが恥ずかしいだけだ。
「小春か? いいぞ」
いつもなら強引に入ってくるのに……ていうか、毎度ながらどうやって鍵を開けて入ってくるのだろうか?
「おじゃま、します……」
どこか恥ずかし気に部屋に入ってくる小春に、思わず息を呑んでしまった。
肩をむき出しにした可愛らしい柄のトップスに、ふわりと広がり太ももが露な淡い色のフレアスカート。
普段あまり見ることのないところが大胆にさらけ出され、見てはいけない部分を見ているようで、変な気持ちになってくる。
どちらかと言えば普段大人びた雰囲気があるにも拘わらず、甘めの可愛らしいコーデでもじもじする小春に、そのギャップでドキドキしてしまった。
おいおい、小春は妹だぞ!
自分にそう、言い聞かせる。
普段は制服姿かラフな部屋着しか見ていないから、その衝撃も一入だ。
……あれ、もしかして小春って結構可愛い?
「あ、あの、何か言って……」
小春は蚊の消え入りそうな声で抗議をし、恥ずかしいのか目を逸らす。
想定外の事態に俺は「あ、いや」とか「その」とか適当な言葉を漏らすしか出来ないでいた。
「…………」
「…………」
2人の間でなんとも言えない、ぎこちない空気が醸成される。
不安と期待と入り混じった瞳が、切なそうに俺に訴えてきた。
いつもは胸を張って堂々としている小春が、己に自信なく心を揺らす姿は、どう見ても俺の知ってる妹の姿と合致しない。
だからそれは、どう見ても知らない女の子の姿だった。
緊張のあまり、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
……
いやいやいや。
まてまてまて。
俺は今、一体何を考えた?!
ちょっと倫理的にやばいこと考えなかったか?!
「んっ」
そんな俺の心の内を知ってか知らずか、ポスンと、俺の目の前にやってきては女の子座りをする。
頬をどこまでも真っ赤に染め上げながら、憂いを帯びた瞳を揺らし、まるで祈るかのように見つめて――
「……わたし、可愛くない?」
――そんな事をのたまった。
悲痛な顔で哀願するかのように呟くその姿は憐憫を誘い、思わずその憂いを払ってあげたくなる。
「か、可愛い」
だから、妹だとか虎だとか倫理がどうだとか何も考えてなかった。
ただ、思ったままの気持ちが口を出た。
「…………嬉しい」
不安と言う蕾から、笑顔という大輪の花を綻ばせた。
それがあまりに綺麗で魅入ってしまう。
そっと重ねられた手が、俺の身体まで縛って身動きさせなくする。
やはり、それは人喰い虎だった。
わずかに残った冷静な部分が、これ以上はやばい警鐘を鳴らす。
しかし獲物に襲い掛かるしなやかな肉食獣さながらに、ねだるかのような顔を、これでもかと近付けてきて――
「お兄ちゃん……」
――あ、喰われる。
『ピンポーン』
「…………」
「…………」
無機質なインターホンの音が、俺達の間を駆け抜けていった。
どこか甘ったるくなっていた空気が霧散していくのがわかる。
「来た、みたいだな」
「…………」
あっぶねぇえぇええっ!!!
今何するところだった?! 何考えてた?!
相手は小春だぞ?! 実の妹だぞ?!
って、小春さん?
来ましたよ?
手を離してくれません?
「あとちょっとだけ、あとちょっとだけでいいから!」
「何をだ?!」
あとちょっとで色々とトドメを刺すところでしたよね?!
ここに居たらやばい。
俺は本能に従い、急いで玄関へと逃げていった。
「いらっしゃ――」
「…………」
多分俺は、ギャップに弱いんだろう。
今までの美冬の私服といえば、いつもの印象そのままの地味でもっさりした感じのものばかりだった。
目の前の美冬は明るくゆるふわな顔に反して、初夏を先取りしたかのような爽やかで清楚な感じだった。
肌の露出も今までよりも多く、目にも眩しくやり場に困る。
そして何より――
「美冬?」
「…………」
目尻に浮かぶ涙の跡が、どうしても俺の心を捕らえて離さなかった。
新手の美冬ハッグかよ……そんな事を思ってしまった。
面白い!
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今夜のお供はドライでっ!











