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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第2章-2 ゴールデンウィークと悩めるクマさん

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第33話 あたしの苦手な女の子 ☆押隈美冬視点

メインヒロインの1人、押隈美冬視点です。


今話から新章です。


 ジリリリリリリリッ!

 PiPiPiPiPiPiPiッ!


 目覚まし時計とスマホのアラームが、部屋にけたたましく響く。


 押隈美冬は朝が弱い。


「ん……ぉはよぅ、ぁきくん」


 6時25分、寝ぼけ眼の布団の中であきくんの家に向かって呟く。

 今日からGW、思う存分お寝坊さんも出来ちゃう日だ。


 だけどあきくんは休日でも風邪をひいてる時でも、必ずこの時間に起きちゃう。

 だからこの挨拶は欠かせない。


 このまま二度寝したいけれど、気合を入れてベッドから這い出した。

 今朝の内に色々準備しなきゃいけない事があるからね。


 鏡の前に映るのは、これでもかと眠そうな顔をしたボサボサ頭の女の子。

 そのあまりな姿に、大きなため息が出てしまった。


 今日はあきくんちでお泊り会だ。

 もし、こんなブスな顔を見られて幻滅されたらどうしよう?








 見られない様にするためには、どこかに閉じ込めるか身動きできない様にした方がいいよね?







 そんな事を考えながら準備を進める。


 嵩張らないように手錠と目隠しくらいで大丈夫かな?

 ポケ~としたままの頭で鞄に色々詰め込んでいく。


 それが終われば次は身だしなみだ。


 寝癖が絡まりあちこちで輪っかをつくり、まるで蜂の巣のような状態になっている髪を梳かす。

 癖っ毛なあたしの髪はなかなか頑固だ。

 小学校の時、男子にもじゃもじゃなんて言われて揶揄われたこともあるくらい。


 以前は無理矢理ひっつめておさげにしていたけど、思い切ってゆるふわな感じにパーマをかけてみた。


 どうかな?

 変じゃないかな?

 そういやあきくんから一言も、可愛いとか似合ってるとか聞いていない。


 ……


 なんだか急に不安になってきた。


 もしかしたら、あたしの知らないところで褒めてるかもしれない。

 そんな仄かな期待を込めて、先日あきくんの鞄に仕込んだものをチェックする。


 ノートPCに映し出されるのは、あきくんの部屋の机の脚。

 影になっていて画面はちょっと薄暗い。








 この部屋の全体が映し出されず一部だけしか見られないもどかしさが、あきくんの部屋に息を潜めて隠れているんじゃないかという臨場感を高めてくれて、興奮する。








 昨夜の様子を伺ってると、『ごめ、季節龍さんへの回復遅れた!』とか『そこで単ヒール差し込んでくれるとか綿毛ライオンさんマジエスパー!』、『妖精食ってMP温存からのバフだー!』等という独り言が聞こえてきた。


 どうもこの日は据え置き機でネトゲをしていたみたい。

 カタカタ音がしていたので会話はチャットかな?

 興奮して独り言なんて、あきくん可愛い。ふふっ♪


 あたしもちょっと興味があったけど、自分のトロくささに絶望して断念。


 そういえば最近、あきくんが男の子同士で遊んでいるところを見たことがない。

 あたしやはるちゃん、わんこちゃんで押しかけすぎてるのかな?


 あきくんの男の子の友達と言えば、小学生の頃、隣町ですごく仲の良い子が居た。

 元々別の小学校だったし、学年も違ったからそれっきりだ。

 思えば、あの子にあきくんを取られるって思って、強引に後ろを付いていったんだっけ……



 もっとじっくり見ていたかったけど、生憎と時間が足りない。

 断腸の思いでPCの電源を落とす。



 のろのろとパジャマを脱ごうとするけど、いつも胸のところで引っ掛けちゃう。

 こんなの邪魔だし、男の人の目線も集めるからあまり好きじゃない。

 胸を見ないで話してくれる男の子なんて、あきくんくらいだ。


 あまり胸に興味ないのかな?

 反応はしてるしそうじゃないとは思うけど……男の子って難しい。



 選んだ下着はオフホワイトのレースとリボンの可愛らしいもの。

 選んだ服は夏を先取りした清楚な感じのノースリーブのワンピース。

 太ももが露になるくらい丈が短くて恥ずかしいけど、あきくんに見せるためにグッと我慢。

 ニットのカーディガンを羽織ったのは、部屋に上がって脱いだ時に二の腕にドキッとさせる作戦だ。


 どうかな? 気に入ってもらえるかな?








 一昨日あきくんが読んでいた紳士漫画『ふともも生クリーム☆でこれーしょん』(※R18かもしれません)のヒロインに似たものを選んだし大丈夫なはず。








 時間をかけて自然な感じでメイクをし、鏡の前でくるりと回る。

 うん、そんなに悪くはないかな? 変じゃないよね?


 頭の中で、何人か意識する女の子と比べてしまう。



 はるちゃん。あたしの幼馴染。

 スラリとしてメリハリのついたプロポーションにくっきりとした目鼻立ち、それでいて透明感もある正統派な美少女だ。

 あたしもあんな綺麗に生まれたかった。


 わんこちゃん。あきくんの部活の後輩。

 小柄で可愛らしい顔に不釣合いなほどの胸。そのほかは部活の為か引き締まっており、弾けんばかりの元気な印象の女の子だ。

 あたしもあんな可愛く生まれたかった。



 そして、小鳥遊(たかなし)秋葉(もみじ)


 その名前を想像するだけで心が冷えていくのがわかる。

 あたしの心情に呼応して、窓ガラスもピシピシと鳴き声を上げる。


 一度はあきくんの心を奪っていった雌狐。


 そして色々と黒い噂が絶えない女。


 少し幼い顔立ちに、折れてしまいそうな華奢な身体。

 儚げで消え入りそうな雰囲気は男子ならずとも守ってしまいたくなるというのは判る。


 はるちゃんやわんこちゃんがお話し(・・・)したと言うのは聞いた。

 あたしもその場にいたかった。

 でも、その場に居なくてホッとしているあたしもいる。



 また、あの女があきくんを連れてったらどうしよう?


 追いかけても追いかけても、見向きもされなくなる恐怖。


 もしあの時の様な事が起こったら……





「美冬ー? 上からやたら冷たい空気が流れてきてるけどクーラー付けてるのー?」

「え? ううん、付けてないけど?」

「そう? おかしいわね……異常気象かしら?」



 何でだろう? 最近お母さんがよく冷えるって言うんだよね。

 そういえば、最近ベランダや窓に霜が下りてるのも見る。

 異常気象なのかなぁ?


 そんな事を考えながら荷物を持って1階に降りた。



「あら、今日もまたオシャレしちゃって……あき君?」

「そ、そんなんじゃないって!」

「彼氏ひとつで、野暮ったい娘がこうまで変わるものね」

「つ、付き合ってなんかないから!」


 あたしは2番目(愛人)希望だし!


 それなら振られるとかっていうのないよね?





 ニヤニヤするお母さんを無視して家を出る。


 時刻は10時半。

 目指すは『カク安やまーや』。


 お父さんも飲む福祉を買う時に利用している、発酵飲料や輸入食品、飲料等を扱っているお店だ。

 あたしはまっさんと呼ばれてた店員さんに、少しだけ逡巡し、母の日のプレゼントにどれがいいですかと聞いてみた。

 お勧めされたのは竹の鶴が書かれたもの。スモーキーなところがいいらしい。


 少々値が張ったけど、親しき仲にも礼儀あり。

 お泊りするなら手土産くらい用意しないとね。



 時間に余裕があったので、駅前のショッピングモールまで足を伸ばした。


 最近目下の悩みは服だ。


 以前の自分は、正直言ってモサかった。

 今の自分もちょっとモサいんじゃないかって思ってるし、2番目で良いとはいえ、はるちゃんやわんこちゃんと並んでも見劣りしない程度にはしたい。


 つまるところ、地味な服しか持ってないのだ。


 今日の服だって、あたし的にかなりの冒険をしている。

 これまで制服のスカートだって、膝が隠れるほどのものしか穿いていなかった。


 あきくんコレクションの中では、清楚なお姉さん系のラインナップが豊富だ。

 参考資料に選ばれることも多い。


 あ、あたしだって、あきくんより1ヶ月お姉さんだし? お姉さん系って言えるかもしれないし?


 で、でもでもこの服とか背中思いっきり見えてるけどブラとかどうするんだろう?

 えええっ?! これなんか胸元だけすごいくり抜いてるけど大丈夫?!


 うぅぅ、やっぱりあたしにはまだ早かったかなぁ……



「お客様、どういうのをお探しですか?」


「ふぇえっ?!」



 見るからに綺麗な感じの店員さんに話しかけられて固まってしまった。

 店員さんはこれが似合いますよと次から次へと手渡してくる。

 あたしはただ、あわあわしながら受け取るだけ。


 ……変われたと思ったけど、あたしは全然変わっていなかった。

 積極的になれたと思っていたけど、あきくんの前だけ。

 結局は、あたしはあきくんが居ないとダメな子なんだ。


 そんな自分が情けなくなって涙が――




「うん、うん。そう、欲しいの見つけたの。それでね――」




 思わず受け取った服を持って、試着室に逃げるように飛び込んだ。


 小鳥遊秋葉。


 あきくんを惑わした雌狐。

 あの女の声が聞こえた。



「――それでね……そう、そう……うん、わかった。仕方ないよね」



 1人? 誰と話してるの?

 その甘えるかのような声は、鈴を転がしたかのように可愛らしい。

 思わず嫉妬してしまうくらいに。



「じゃあまたね、大好きだよ――――――――ってんなわけあるかよ、バーカ。あーあほらし」



 通話を切った瞬間、小鳥遊秋葉の声のトーンが下がった。


 ……


 きっと、あきくんもああいう風に騙されたんだろう。


 胸に言い様の無い痛みが走った。


 悔しかった。


 あたしが欲しかったものを放り投げて、大切なものを傷つけて。


 どんどん心の奥底の何かが冷えていくのがわかる。

 気付けば手が青白くなるまで握り締め、目から熱いものが垂れていた。





「お客様、大丈夫ですか?」


「ふぇっ?!」


「すいません、空調が故障したようでして、急に寒くなったようでして……」



 その声に、ふと我に返る。

 ぎゅっと握り締めすぎた服は、結構な皺が出来ちゃっていた。



「あ、あの、これ全部ください!」


「へ? は、はい?」



 うぅ、予想外の出費でお小遣いが……やっぱりあたしは1人じゃダメダメだよ、あきくぅん……


 ところでここでも急に寒くなるって?

 やっぱり今年って異常気象なのかなぁ?







 この日、ショッピングモールの一画で謎の空調異常になったことがニュースになったとかならなかったとか。


※季節龍は盾持ち騎士なタンク、綿毛らいおんは回復も使える赤い色な火力魔術師、主人公秋斗はバリアやバフが得意なヒーラーな設定です。



面白い!

続きが気になる!

ストロングもゼロだ!

って感じていただけたら、ブクマや評価、感想で応援お願いしますっ。


今夜はお供はシークァーサーでっ!

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― 新着の感想 ―
南の島の者です いつも楽しく読ませてもらっています。 ありがとうございます! 本編へのコメントじゃぁなくて申し訳ないですが、 シークァーサーではなく、 シークヮーサーが正解です^^ シー ←酸っ…
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