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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第2章-1 虎殺しな彼と堕天使な彼女

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第32話 事件のその後と、小春の呟き


「――ん、つーっ」


 俺は頭の痛みと共に目を覚ました。

 やたらと喉が渇いているし、胃もなんだか調子が悪い。

 西日がやたらと眩しく感じる。


「目が覚めたのね、お兄ちゃん!」

「あきくん、大丈夫? 具合悪いところない?」

「先輩、後始末は自分たちがちゃんとしときましたんで!」


 どうやら俺は保健室に運ばれていたようだった。 

 小春、美冬、夏実ちゃんが心配そうに覗き込んでくる。


「ん、大丈夫」


 怪我もかすり傷程度だし、全然問題無い。

 安心させる為に頭を撫で――ようとしたら、ビクリと身体を震わせ顔を赤くしたので止めた。


 ここじゃ嫌?

 抜け駆け禁止なので3人一緒に?

 ううん、何か釈然としないな?


 ともかく、加藤君たちはどうなったのだろうか?


 獅子先輩や中西君がどうにかしてくれたのかな?



「大橋さん、鞄もってき――ッ?!」

「東野さんありが……どうしたの?」

「はわ、はわわわ、筋肉しゃん……」

「筋肉?」


 筋肉? ……って、俺か! 手当てのために上着脱いでたし。


 やって来たのは、ふわふわの栗色の髪に眼鏡の小柄な女の子。

 制服とリボンの色から高等部1年だとわかる。

 小春のクラスメイトか?


 初対面の年下の女の子に、顔を赤らめながらチラチラ見られると、その、さすがに恥ずかしい。


 小春は家で見慣れてるだろうし、美冬も昔から馴染みすぎている。夏実ちゃんも部活で肌の露出は珍しくない。


 つまり、その反応は新鮮だった。

 ええっと、上着はどこだ……



「へぇ、あきくん、眼鏡っ子とか好みだったのかなぁ?」


「そ、そんなことないぞ?!」



 目が据わった美冬から、底冷えするような声と共にジャージの上着を渡される。


 あの、美冬さん?

 違うから。

 そういう問題じゃないから。

 な、泣かないで?!

 ほら、今の髪型も似合ってるよー?

 眼鏡無いほうが可愛いよー?

 え? 態度で示せ?

 あはは……小春が怖い目で見てるからまた今度でいいかなー?

 あれ、夏実ちゃんは……電話?


「今らいおん先輩から連絡があって、加藤先輩は病院に運ばれたそうです」


「え?!」


 消毒液代わりに特濃福祉をかけられてから記憶が無い。

 一体どういう惨劇が繰り広げられたのだろうか?

 猛獣娘達がやり過ぎちゃったりしてないよね?


 ジト目で小春、美冬、夏実ちゃんを睨むが――


「お兄ちゃん、凄かったの……きゃっ♪」

「あきくんのそういうところ、えっとね、うふふっ」

「いつも自分があんな風にされてると思うと……あはっ♪」


 ――なんだこの反応?


 え、俺?!


 いや、それよりも!


「病院って、大丈夫なのか?」


「大丈夫だと思うし、気にする必要なんて無いわ」

「う~ん、怪我は無いし、むしろ健康になってるかな~?」

「運ばれたのはメンタルクリニックですよ、先輩」


 へ? メンタルクリニック?


「あいつ、整形だったのよ。ソレが周囲にバレて精神崩壊ってやつ」

「なんか『見るなぁ! 俺を見るなぁ!』て言って暴れてたらしいよ~?」

「らいおん先輩達が取り押さえて車で病院に連れてったみたいです」


 車?


「らいおん先輩免許もってるっすから」


 ……深くは突っ込むまい。


「ま、ともかく。特に怪我がひどいとか無いなら問題ないか」


 深く考えると負けなのだ。

 最近ちょっと学んだ。





 結局、制服はかなり汚れてしまったので、ジャージに着替えた。


「あきくん、はい鞄」

「持ってきてくれたのか。ありがと」

「いいの。おかげでカメラ仕込……ううん、なんでもない」


 うん、美冬が何か不穏な事を口走った気がするけど、深く考えてはいけない。


「お、お兄ちゃん! よ、汚れた制服はわたしが持つわ!」

「汚いし匂うし、自分で持つよ」

「だがそれがいっ……か、家族なんだから遠慮しないでよ!」


 うん、なんかよく聞こえなかった事にしたし、深く考えてはいけない。


「…………」

「…………」

「……ああ、自分だけ無視されるとかゾクゾクきます……ッ!」

「なんでそうなる!」

「あふぅ♪」


 って、何も言わなくてもこうなるのかよ!


 思わずツッコミを入れてしまった。



 なんだか気疲れして、ぐったりしながら保健室を出た。







「「「「おつとめ、ご苦労様です!!」」」」






「うぉい?!」


 そこで出迎えたのは、中西君たち柔道部員と剣道部員の人達だった。

 全員が廊下で一列に並び、一糸乱れぬ調子で頭を下げる。


 これ知ってる。

 仁義がなかったりする戦いとかで見たことある。


 おつとめなんてしていないし、正直頭を下げられても困る。

 ほら、小春や美冬や夏実ちゃんも……困った顔とは無縁だな? え、なにその当然って顔は?


「優れた群れのリーダーに敬意を払うのは当然ですよ、先輩?」


 群れ? 皆、部活の仲間だよね?

 何で夏実ちゃんが色々と指示を出してるのかな?


 あはは……親分って何?

 それと、その目は何かな?


 中西君たちはどこか崇敬し、あがめるかのような瞳をしていた。

 一方、先ほど敵対していた柔道部員や剣道部員はどこかすっきりとした健康そうな顔で、兄貴! と慕ってきそうな瞳をしていた。



 ……



 一体どうしてこうなった?!


「大橋さん、何かあったら何時でも何でも言ってくだせぇ!」

「はは、あははは、とりあえず大人しく解散して欲しいかな」

「おい、お前ら! 大橋さんが目障りだとよ! さっさと()ね!!」

「そういう意味で言ってないよ?!」



 天を仰ぎ目に入った夕日は、どこか滲みぼやけていた。




 後に夏実様至高忠犬派と、無想ゴッドハンド転生派という2大派閥が出来るが、それはまた別のお話。





 大橋秋斗16歳。

 素直で可愛い妹有り。

 ゆるふわで2番さん(愛人)志望の幼馴染有り。

 責任とか微塵も取りたくない後輩(ペット)有り。

 されど童貞、彼女無し。

 傘下に降った柔道部と剣道部有り。――NEW!


 これはそんな彼と望まぬハーレムと青春と苦難の物語である。




  ◇  ◇  ◇  ◇




 夕焼けを背に家路を歩く。


 お兄ちゃんの隣はこのわたし。

 もう片方の隣はふゅーちゃんで、目の前にわんこ。


 うふふっ。


 わたしはとても機嫌が良かった。


 かちょー、だっけ? お兄ちゃんを馬鹿にしてきたやつ。

 剣道部のエースだか虎殺しだか知らないけど、いけ好かない奴だった。


 圧勝、いや蹂躙。


 その時の皆の顔!


 あれがわたしのお兄ちゃんなんだぞって、自慢して回りたい気分だった。


 それだけじゃない。

 お兄ちゃんの血が滲んだ制服。


 かすり傷程度だけど、お兄ちゃんが傷ついたのは悲しい。でも……きっとわたしはイケナイ子だと思う。


 手荷物のは紙袋に入ったお兄ちゃんの制服。

 そこから立ち上ってくるのは、鉄の匂いがかすかに混じった生臭い匂い。


 その香りにどこまでもドキドキとさせられていた。


 普段の汗とかとは違う極上の香り。

 どうして同じお酒でも、1本数万円以上もするものを買う人がいるのか、わかった気がした。


 顔を埋めたい。

 できればその部分を舐めたい。むしゃぶりつきたい。

 でも、こんなところでそんな事したら変な子と思われてしまうし、我慢しなきゃ。


 問題は制服だけじゃない。

 隣のお兄ちゃんが、消毒液混じりの汗の匂いをふんだんに撒き散らしているのだ。

 普段の汗の香りと、消毒液という非日常的な香りが合わさってわたしの鼻腔をダイレクトに刺激する。

 これだけでご飯3杯はいける。


 どんどん自分の理性が削り取られていってるのがわかる。


 その中で、さっきのかちょーを一蹴した雄姿を思い出すと――


「小春?」


「……ッ?!」


 気付けば、お兄ちゃんの肩にコテンと頭を押し付けていた。

 一体今わたしは何をしようとしたのだろう?

 とても気持ちが高ぶり過ぎて、理性が一瞬飛んでいたというのだけはわかる。


 わたし()にだけこんな気持ちにさせて、お兄ちゃんはズルいと思う。


「お兄ちゃんのバカ……」


「あーごめん、今度から危険な真似はしないよ」


 そういう意味じゃないんだけど、その……そんな目で見つめられたらわたし――




「あきくん、初日のお昼過ぎ集合でいいよね?」


「ッ!?」

「ああ、まぁいいんじゃないか?」

「自分、こういうの初めてだから楽しみっす!」


 絶妙なタイミングでふゅーちゃんが割って入ってきた。


 やっぱりこの子油断ならない。


「小春、何か変だぞ? 大丈夫か?」


「え、えぇ。で、何の話だっけ?」

「はるちゃんやあきくんの家でGWの課題をしようって話だよ~」

「自分、お泊りなんて初めてです!」



 むぅ。


 わたしが兄香力にやられている間に、いつの間にかうちへのお泊りが決定していた。


「うふっ」


 ……ふゅーちゃんがわたしを見て笑った。

 きっとあの子の誘導だ。


 やっぱり、あの子は油断ならない。



 油断がならないと言えば、小鳥遊(たかなし)秋葉(もみじ)


 一度お話(・・)したものの、あの女は……



「小春?」


「ううん、今行く!」






 もうすぐ5月、ゴールデンウィーク(新たな修羅場)が近づいてきていた。


これにて2-1章終了です。


面白い!

続きが気になる!

ストロングをゼロだ!

って感じていただけたら、ブクマや評価、感想で応援お願いしますっ。


今夜は連休最終日だし、体を労り休肝日でっ!

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