第28話 気をつけろ!!
ハイファンタジーで連載中の煽り虫様かられびゅーいただきました!
ありがとうございますっ!
※31.1.10.PM21:30頃 エピソード追加
お昼休み、俺達4人は校舎の裏手に弁当やパンを持って集まっていた。
わいわいとそれらを広げて昼食を摂っている。
「自分、今日はカツサンド買えたんすよ!」
購買一番人気のそれを買えた夏実ちゃんはご機嫌だった。
満面の笑みで嬉しさを表現するその様は、やっと獲物にありつけた飢えた狼のよう。
……あれ、なんか例えがおかしいな?
そ、そんなほっこり顔を横目に俺達は弁当を広げていく。
深く考えすぎてはいけない。俺も最近学んできた。
校舎の裏手で北側にあるのだが、陽当たりは良く、いくつかベンチも置いてある。
そこでは園芸部が植えた季節の花々が目を、兎や鶏小屋は生き物の喧騒が耳を楽しませてくれる。
当然ながらお昼休みには憩いの場になる人気のスポットだ。
……普段ならば。
「人少ないな?」
「う~ん、何でだろうね~?」
「貸切みたいでいいじゃん」
俺達以外、その場に誰一人と居なかった。
花もやたらと萎れているのが多いし、兎や鶏は息を潜めて静まりかえっているのもなんだか不気味な感じだ(※4.19事件の余波です)。
……まぁ、人がいない理由は分からなくもない。
誰だって女の子3人を(客観的に見て)侍らしているのを見たら、何だこいつと思って距離を取るだろう。
しかも全員が胸に目立つものをお持ちの方々だ。それはもう目立つ。
容姿はどうなんだろう? 可愛い部類に入る、とは思うのだが――
小春は実妹だし、そんな目でみたらヤバイだろう。
美冬は幼馴染だし、昔から見慣れ過ぎちゃってる。
夏実ちゃんは近所や親戚の年の離れた小さい子って感じ。
――だから、なんだかイマイチそういう対象に見られないんだよね。
「ごめんなさい、あきくん……」
「え、あ、美冬?」
気付けば、何故か美冬に謝られていた。
考え事に没頭していたので、話の流れがわからない。
「小鳥遊さんへの制さ……お話に、あたしだけ参加していなくて」
しゅん、といじらしくまつ毛を伏せて瞳を滲ませる。
明るく華やかな顔でそんな表情をされると、その哀憐さは一際強調される。
なんだか俺が悪い事をした気にさえなってくる。
……って今、制裁って言いかけませんでしたか、美冬さん?
「あきくん、あの女には後ほどあたしからも折か……監き……拉ち……その、じっくりと言っておくから、見捨てないで……?」
そういって美冬は切なげにため息を零してしな垂れかかり、無駄に色気を振りまいて俺の太ももに手を置いてくる。
ともすれば男子として喜ぶべき状況にあるにも拘らず、言ってることが物騒過ぎるわ、よく手入れされたネイルが太ももに刺さるわ、目の焦点が合っていないわで、お腹の奥がキュッとした。
見捨てるとかそれ以前に、(何かしでかさない様に)目を離しちゃいけないと感じるのは俺だけだろうか?
「気にしないでいいよ、別に何でも――」
「「「ッッ!!」」」
「――ないし……」
え?
何でもないよと手を振ろうとしたら、美冬だけでなく、小春や夏実ちゃんもビクリと反応した。
それぞれが敬慕と鬼胎の念を瞳に込められている。
「お、お兄ちゃん、外でそれはちょっと……」
「あ、あきくん、さすがに自重を覚えたほうが良いと思うの……」
「せ、先輩の命令だって言うなら自分はその、覚悟決めます……」
あ、はい。
なでなでですか? なでなでですね?
一体貴女たちの中でどういう位置づけなんですかね、なでなで?!
もしかして福祉を飲んで記憶がないとき、俺の手が何かやらかしてるんじゃ……
……
…………
何をどうやったら小春、美冬、夏実が猛獣の如く豹変するんだ?
どう考えても全くわからないのだが!
うぅむ、答えは飲む福祉の闇の中か。
あ、俺今上手い事言ってね?(※現実逃避です)
ともかく、3人に対して強く出られる部分があるのは幸いだ。
いざとなったら反撃……あ、いや、うん。その後が怖い。やっぱなしで。
「うげ、から揚げに既にレモンが掛かってる」
「はるちゃん、から揚げにレモン苦手なの?」
「そうじゃないけど、作った時点で掛けてるから異様に酸っぱいのよ」
「自分的にはそれもありと思うんすけどねー、それ」
そんな俺の考えは知ったことかと、三獣士は既にお昼に取り掛かっていた。
女3人寄れば姦しい。
はぁ~~~~~。
結局考えたところで、今が変わるわけじゃないか。
女の子だからね? もうちょっとお淑やかな……そう、やっぱり久々に会った小鳥遊さんは可愛かったなぁ。
儚げで透明感のある笑顔、抱きしめると折れてしまいそうな華奢な身体、そのくせ楽しく翻弄してくれる気安い性格。
『大橋くん、それ何て文字を書いてるの?』
『フッ、知らぬのか? これはルーン文字だ。かつてヴァイキングたちも使い、占いにも使われる力ある文字……我が魂の片翼よ、早く前世の記憶を取り戻すがいい……っ!』
『そうなんだ、大橋くんすごいね! 博識なんだ!』
『フッ、フフッ……フハハハハハハッ!!』
そう、たとえ痛々しくてもちゃんと付き合っ……あれ、どうしてだろう……胸が痛い……
と、ともかく! 既に振られた相手だけど、少し想うくら――
「お兄ちゃん?」
「あきくん?」
「先輩?」
「ッ!? な、なに?」
まるで猛獣の牙や爪のような視線が3つ、俺の心臓を射貫いた。
思考を読んでなんかいないよね?
全く無いと言い切れないのがちょっと怖い。
「ゴールデンウィーク、もうすぐでしょ? 何か予定ないのかなぁって」
「あたしも今のところ特に予定なくて」
「自分は寮なので、実家に帰るくらいしか」
「ゴールデンウィーク、ねぇ」
いつの間にか話題が変わっていた。
女子特有の千変万化な会話についていくのは男子には難しい。
当然ながら、俺も特に予定はない。
もしかして、俺に何かしろっていう催促?
去年は何してたっけ?
適当にゴロ寝とゲームして、無為に時間を潰した記憶しかない。
あと最終日に課題に追われて、美冬に泣きついたくらい。
今の俺がGWにしたい事といえば――
「どこか遠くに行きたいな……」
そう……猛獣のいないどこか遠い場所で、ゆっくり温泉とか浸かりながらお風呂上りにフルーツ牛乳を飲むんだ。
湯上りには散策しながら新緑の若々しい木々に元気を分けてもらい、健気に咲く晩春の花々に癒される。
あれ、なんか心が枯れて――
「どこか遠くって……日帰りで?」
「今からだと予約とか厳しいんじゃないかなぁ?」
「高校生と中学生じゃ泊まりは厳しいですよね?」
待て待て待て!
「行かない、行かないから! ほら、準備とか全然だろう?!」
小春? 海より山がいい? 出来れば温泉? はは、考えることは兄妹一緒だなぁ。
美冬? 星がよく見える田舎がいい? 部屋にあった望遠鏡を持って行きたいと。
夏実ちゃん? 実家が山奥の田舎で、温泉もあって川遊びも? 急に押しかけたら迷惑に――
……
俺は頑張った。
出来うる限り抵抗した。
そして、出掛けるのは夏に引き伸ばすことに成功した。
ふふっ。
執行猶予ってこういう事を――
「おい、お前いい加減にしろ!」
「ん?」
振り向けば、随分男前なミイラ男がそこにいた。
鼻の部分に大きなガーゼ、それを固定するかのようバッテン印に包帯が巻かれている。
なるほど、それなら目も見えやすいし、口にモノも……って前歯も折れてるな。
見ている方も痛々しいが……誰?
随分怒り心頭の様だけど、生憎俺には覚えが無い。
「誰か知ってる?」
「知らないし、お兄ちゃんに男の知り合いがいると思われたくないし」
「あたし、あきくん以外の男の子とおしゃべりなんてしないし」
「福祉力5……チッ、ゴミですね」
小春に美冬さん? 煽らないで?
あと夏実ちゃん、福祉力って何?
「~~~~~っ! 馬鹿にしやがって!」
「別に馬鹿にしてるつもりは無いんだが……そんなに顔を赤くして血圧大丈夫か? 鼻から血が出ちゃうぞ?」
「くぅ~~~、このぉっ!!」
言ってから、しまったと思った。
ミイラ男は地団駄を踏んでいる。
あれ、これ煽っちゃったかな?
その怒気はそんなに怒ってる風には……いやまて最近そのへんの感覚がズレ始めてる疑いがあるんだった。
「い、いいから、小春さんを解放しろ! お前みたいな奴に、彼女を幸せに出来るはずがない!」
「お、おい! 言葉に気をつけろ!」
じゃないとほら!
「ねぇ、わたしの聞き間違いかな? 今お兄ちゃんを馬鹿にしなかった?」
「あたしね、さっき見せ場が無かったからちょっとばかり抑えが利かないの」
「先輩? 今度は止めないでくださいよ?」
『コケーッコッコッココココッココケーッ! コケ! コココケッー!!』
ガタガタガタガタガタガタッ!
バサササササササササササッ!
『カァーカァカァカァーッカッ……カァーーーーーッ!!!!』
一気に冷やされた空気と発せられた猛る怒気が天へと押し上げられ、どういう理屈か雷雲を呼び寄せる。
天変地異の前触れと錯覚したのか、動物達は運動会さながらの騒ぎを見せた。
植物はすっかり力を失い、花を散らしはじめる。
「い、いい気迫じゃないか……全国大会決勝の相手以上だってことは認めてやる……っ!」
ア、ハイ。
それ、俺の気迫じゃないんですけどね?
天を仰いだ俺の頬を、水滴が流れていった。
面白い!
続きが気になる!
ストロングもゼロだ!
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今夜のお供は完熟梅ダブルでっ!











