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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第2章-1 虎殺しな彼と堕天使な彼女

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第26話 2人の邂逅


 初めてのキスはひたすら硬くていちごミルクの味だった――



 誰だって、まだ見ぬファーストキスに思いを馳せたことがあるだろう?


 放課後の教室で告白と共に?

 付き合って初めてのデートの帰り際に?

 偶然2人っきりになった部室で相手から強引に?


 俺だって色々想像したことがある。

 相手はそう、2年前に好きだった彼女とだ。確か――


『俺の唇は白きミルク、君の唇は赤きいちご……この邂逅は必然、運命に身を委ねよ』

『そう……運命には逆らえないわ……』


 そして放課後の夕日が差し込む教室で2つの影が重なる――


 ――って、ないわー。


 なんで当時はそんなのが良いと思ってたんだろうね?

 胸がズキリと痛い。



 ともかく。


 小鳥遊(たかなし)秋葉(もみじ)


 少し小柄で華奢な身体、そして鮮やかな赤い髪。

 消え入りそうで儚げな雰囲気は、思わず守ってあげたくなってしまう。

 そのくせお茶目で、色々翻弄してくれるとっつきやすい性格。


 当時中二病真っ盛りで痛々しかった俺に、運命を感じさせちゃうくらい優しく接してくれた女の子だ。

 今思えば皆に優しいだけで、俺が勝手に勘違いして舞い上がっただけの恋だった。


 彼女のお気に入りで、人にもよく配っていたいちごミルクのキャンディは、思い出の味だ。


 その思い出の味が今、唇をツンと押し上げ、口の中に何か硬いものを押し入れられていて――



「んっ……」


「…………んんんんんっー?!」


 ――まてまてまて、今何が起こってる?!


 目を見開いてよく見てみれば、かつて惚れた女の子の顔……が、微妙に離れたところにあった。


 この硬い奴は……飴? いちごミルクの?

 っていうか、これキスじゃねぇっ!


 ポッキーゲームの飴版と言ったら良いだろうか?

 なんか千歳飴みたいに細長いな、これ!



「…………んふっ♪」


「小鳥遊、さん……」


 パキッと中ほどで飴が折る。

 その天使みたいに儚げで愛らしい女の子は、悪戯が成功したとばかりに、茶目っ気たっぷりにウィンク。


 いっやぁ、まいったね! すっかり騙されちゃったね!

 心臓もすんごくバクバクしてるし、卒倒しそうなくらいの動悸だよ!



「あいつ、例のハーレム野郎の……」

「1人でいるかと思えば、更に別の子に手を出してんのかよ」

「俺の憎しみは今、人を殺せる領域に達したと思う……ッ!」

「おい、誰か中西に知らせろ! いいか、絶対夏実様の耳に入れるなっ!」


 いっやぁ、まいったね! 周囲もすっかり騙されちゃってるね!

 もしこの事が三獣士(小春、美冬、夏実)の耳に入ったら……

 心臓のバクバクが加速しちゃって、気絶したいくらいの勢いだよっ?!



「んふっ、大橋君、ドキドキしてるね」


「そ、そりゃあね」


 今後の事を考えるとドキドキもするよね!


 小鳥遊(たかなし)秋葉(もみじ)は見る者全てを魅了しそうな天使の笑顔で、俺に微笑みかける。


 そんな所は、あの頃と変わっていない。


『我が魂の片割れよ、古の盟約により互いの片翼を1つにして共に羽ばたくことを許す!』


 なんて告白をした時とああああああ痛い痛い痛い痛い! 心が痛いっ!!


 …………と、ともかくだ!



 騙されんぞおおおおっ!!!!


 なにこれ、俺に気があるって事?

 やっぱりそのサラサラの髪とか儚げで消え入りそうな表情とか、それでいてお茶目なところとか可愛いなぁ、もう!


 でも、もう一度言う。



 騙されんぞおおおおおおおおおおっ!!!!!!



「あんなに可愛い子が周りにいるのに、案外女の子に慣れてないんだね」

「…………」

「そういうところがあの子達を惹きつけてるのかなぁ、なん――」

「どういうつもりだ?」

「――え?」



 可愛らしく上目遣いで俺を見てきていた彼女の瞳が困惑に揺れる。

 自分の予想が外れたと言わんばかりに、目が口ほどに物語っていた。


 そう、俺は一度彼女に振られているし、それ以来接触はなかった。

 こんな急激に距離を詰められる理由があるはずがない。


 だから――


「最近、急にかっこよくなったから……」

「……え?」

「あはは、ごめんね。秋葉(もみじ)、自分勝手で迷惑だったよね……」


 そう言って可愛らしく口元を手で隠し、恥じ入るように顔を伏せた。


 ――そんな仕草にドキリとした。

 微妙に逸らしたせいか、うなじの後れ毛がはらりとするのが見えた。


 ……


 え、えーと?

 最近俺が?

 いやいや、そんな馬鹿な。

 ある意味、逞しくはなってはいるかも? 


 や、やだ! やっぱり可愛いじゃない。

 もう一度騙されてもいいかなーなんて――


「だからね、秋葉(もみじ)は――」


「かっこいいところって、具体的にどこなんですかね?」


「「――ッ?!」」


 俺と小鳥遊(たかなし)秋葉(もみじ)の肩がビクリと跳ねた。

 ついでに俺の心臓も大きくビクリと跳ねている。



「自分にも具体的に教えて欲しいです」



 その顔はにこにこしていながらも、不機嫌という色を隠そうともしていなかった。

 周囲の視線や戸惑いなど知ったことではないと、俺たちを見据える。


 威風堂々と修羅道を征く、その姿はまさに餓狼。



「な、夏実ちゃんっ!」


「あはっ!」


「…………チッ」



 ま、周りがどう思ったか分からないが、俺はやましい事は何もしていない。


 だというのに、今日一番のドキドキは止まることがなかった。


面白い!

続きが気になる!

ストロングをゼロだ!

って感じていただけたら、ブクマや評価、感想で応援お願いしますっ。


今夜のお供は苦い思い出のビターレモンでっ!

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