第23話 ヾ(・ω・*)なでなで
レビュー頂きました!アクション[文芸]にて連載中のエド様からですっ!
レビューと言うか歌詞というか……思わず“世紀末恋愛覇者“を想像してしまう、この作品らしい内容です。
ありがとうございますっ!
何もない空間に白と黒が交差する世界。
そこに一人の女の子がいた。
クリっとしたアーモンド形の瞳。
すっきりと通った鼻筋に少し幼げな相貌。
手入れの行き届いた長い髪。
すらりとした伸びた背に中学の制服の上からでもわかる、大きく実った二つの果実。
今より少し幼い小春だった。
まるで何かに挑むかの様な意志の強い眼差しに、威風堂々と胸を張ったその姿はしかし、どこか泣き出しそうに見えた。
そういえばあの時――
『小春?』
問いかけてみるも、睨むかのように見返してくるだけ。
そのくせ瞳は何かを訴えかけている。
夢だというのに、それが無性に胸が痛かった。
…………
夢?
ああ、これ夢なのか。
小春と言えば――
……
「……小春?」
「……んっ」
瞼を開ければ、目の前に小春がいた。
俺の知る15歳の小春だ。
絹の様にサラサラの長い髪が、俺の肌をくすぐっている。
あの日、夏実ちゃんに投げ飛ばされて強制的に福祉を飲まされてから数日が経っていた。
案の定というか、小春は再び布団の中へ襲来してくるようになっていたのだ。
そう、これは襲来だ。
俺の兄としての矜持や男としての大切な何かがごりごり削られている。
色々倫理的にも問題あるし、やめてほしいんだけど……言って聞くような相手じゃないしな……
そんな小春はといえば、俺の肩口(※人体急所)に額を乗せて、まるで猫の様に甘えていた。
あの小春さん? そこ抑えられるとガチで腕が動かないんですが?
それ以前に布団に潜り込んで来て欲しくないんですが?
そもそも何で――
「……お兄ちゃん」
「……え?」
胸が跳ねた。
さっきの夢も関係しているかもしれない。
それに昨日は俺の知らないところで何かあったのだろうか?
帰ってきてから様子も少し変だったし。
動揺――そう、これは動揺だ。
かつての疎遠だった時でも、今でも妙に懐いている時でも、何がどうであれ絶対動揺する。
妹の涙ぐんだ瞳。
小春は妹なんだ。
これに動揺しない兄なんていない。
「悔しい……わたしね、すごく悔しかったの……ッ!」
「小春……?」
まるで慟哭の様に声を絞り出し、その行き場のない感情を左手に込めて、俺の右半身の肋骨の下あたりを叩く(※レバーブロウ)。
「あいつね、わたしの大事なものを! 大切なものを! 悪く言ったの!」
ドス、ドスと。
小春の足がまるで駄々をこねたり地団駄を踏むかのように、俺の脛(※人体急所)やアキレス腱(※人体急所)を殴打する。
うん、うん。
何があったか分からないけど、気持ちは分かった。
わかったから程々にしてくれないかな?
俺の胸も物理的に痛いし、右手も動かないわ足も地味に痛いんだけど?
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
……まぁ、自分でも甘いと思う。
小春との今のこの関係が良いとは思っていない。
でも、年下の女の子が目の前で悔しいって言いながら涙を流しているんだ。
心が揺れないわけがないだろう?
だから、俺は慰めるように――
自由に動く左手で、小春の頭を優しく撫でた。
優しく、髪を梳くように――
「お兄ちゃん、おにぃ……ふぇっ?! え?! え?! えあぁあああああんっ!!」
――撫でたら、まるで痙攣するかのように小刻みに身体を震わせた。
……
…………え?
俺なんか変なところ触っちゃった?
突然の出来事に俺の胸はドキドキしっぱなしだ。
「小春……?」
少し心配になりながら、俺の右腕の関節を極めがらピクピク身体を跳ねさせる小春の顔を覗き込む。
薄っすらと頬を上気させ、まるで喉元や尻尾の付け根を撫でられた猫の様に、うっとりと幸せそうな瞳で見詰め返してきた。
右手に感じる小春の熱はアツい。
「も、もっとぉ……もっとシてぇ……おにいちゃぁん」
「こ、こうか?」
「はわっ……あっあっあっ……ふにゃあん……っ!」
ひと撫でするたびに、まるで悲鳴のような嬌声を上げ身を震わせる。
それに合わせて、俺の右腕もどんどん極まっていく。
……これ、色々と大丈夫なのか?
あと俺の右腕も。
関節が悲鳴上げてるんですが……
◇ ◇ ◇ ◇
まるで腰砕け。
小春はそんな様子で朝食の席に着いた。
顔を真っ赤にしながら、出されたトーストやヨーグルトに手を付けるものの、その進みは遅い。
「小春、食欲がないの? 風邪?」
「ううん、違うのお母さん。そのね、お兄ちゃんがね……」
蚊の鳴くような、消え入りそうな声でそんな事を言う。
「秋斗、あんた小春に何したの? 女の子なんだし、小春には優しくしてあげなきゃ駄目じゃない!」
「いや、俺は別に……」
そんな責めるような目で見られても……
頭撫でただけだよな?
「お、お兄ちゃんは悪くないの!」
「小春?」
「あ、頭なでなでしてくれたの……嬉しかったの……」
小春は秘めた思いを告白するかのように、勇気を振り絞って胸の内を打ち明けた。
最後の方の語尾なんてほとんど消え入りそうなほど小さい。
顔はどこまでも真っ赤で、頭から湯気が出そうな勢いだ。
そしていじらしく俺の方をチラチラ見てくる。
「そう、よかったわね。仲がいい事は良い事だわ!」
「うん!」
花がほころぶ様な笑顔を見せる小春に、眩しく尊い様なものを慈しむ母親。
……あれ?
親としてそれでいいの?
恐ろしい事に我が家にはツッコミが不在だった。
「ごちそうさま」
深く考えるとドツボに嵌りそうなので、その考えを打ち切るようにコーヒーでトーストを流し込んで席を立つ。
「ま、待って! んっんっんっ……ごちそうさま!」
小春も慌ててミルクたっぷりのコーヒーだけ飲み干して、後を追いかけてきた。
ぱたぱたと長い髪と大きな胸を揺らし、顔はどこか幸せそうに緩んでる。
…………
まぁ色々言いたいこともあるけれど。
そんな顔されたら、こっちの警戒も薄れてしまうわけで。
だから、この問いかけはちょっとした気まぐれだったんだと思う。
「小春、悔しいことって……昨日何かあったのか?」
「うん……だけど、もういいの。えへっ」
「そうか」
それはたとえ相手が妹だとしても、見惚れるような笑顔だった。
…………
やばいやばい!
一瞬、小春の事を可愛いなんて思ってしまったぞ!
あぶねー!
また動揺と言うか動悸がぶり返してきてやがる!
「……なでなでしてくれたから、どうでもよくなっちゃった」
「何か言った?」
「ううん、なんでもない!」
後になって思う。
動揺している場合なんかじゃない。
この時、昨日何があったのか聞いておけばよかったと。
面白い!
続きが気になる!
ストロングにゼロだ!
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今夜のお供はトリプルレモンでっ!











