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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第4章

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第116話 7.19祭り⑦ 家族の不和 ☆鬼束鏡子視点

今回は鬼束組の組長の娘、鬼束鏡子視点になります。

あと、なんとこの作品が連載始めて1周年です。これからもよろしくお願いしますね。


 あたしゃ鏡子。鬼束鏡子。


 最近第二次成長まだかなぁ、と涙目に待っている中学三年生。

 普段から牛乳や大豆製品を摂って、ばいんばいんに成長するのに備えている。

 うん、まだ大丈夫。中3でもまだまだ伸びるはず。胸も……


 おほん。


 ところでうちの家は、少々特殊で日陰な商売をしている。

 有り体に言えば極道だ。


 あぁ、極道だって言っても、後ろに手が回るようなこたぁしちゃいねぇ。

 ヤンチャしすぎて居場所がなくなった者たちに、色々仕事を回すのがあたいたちの役目だ。

 中には家を追い出されたバカもたくさんいる。


 そういった奴らはうちに住み込ませたりしてるんで、うちの家は結構な大きさだ。

 2000坪以上ある日本家屋の母屋をはじめ、いくつかの離れが建っておる。敷地内はちょっとした住宅街といってもいいかもしれない。普通に3階建ての集合住宅も建ってるし……


 まぁ傍から見れば大変な生活かもしれないが、慣れた。


 みんなオヤジの舎弟――義理の弟になるっつーんで、家族みたいな物だ。

 少々他の家より大家族なだけ、うん。そんな感じ。まぁ叔父さんがやたら多いけど。100人近く一緒に住んでるけど。


 そんな我が家だけど、今問題を抱えていた。


 叔父達の一部がおかしくなった。


 不審に思った他の叔父さんたちが、あたいに相談に来るくらいだ。


「お嬢! マサさんが最近変なんだ!」

「日曜の朝になったら必ず女児向けのアニメを全員正座で見させられるし!」

「ちょっと学のある奴ぁ、全員保育士資格を取らそうとするし!」

「おっぱいパブに誘ったら物凄い顔で睨まれた!!」


「お、おまえら、ちったぁ落ち着け!!」


 そのおかしくなった筆頭が柾谷。

 不死身のマサとも呼ばれる、我が家の若頭だ。


 なまじ発言力があり叔父達にも慕われていただけに、鬼束組は揺れている。


 最近は宍戸で大きな夏祭りがあるってんでその準備に追われていたりする。


 今も母屋の一室でオヤジとマサが話し合っている真っ最中だ。



「オヤジ殿……今度の宍戸の夏祭りのシノギ、是非ともそれらを揃えたく……っ!」


 荘厳ともいえる日本家屋の一室、そこで着流しを来た初老の男の前に、体格のいい男が土下座をしている。

 着流しの初老――オヤジはどこか困惑した表情で体格のいい男ことマサを見ていた。


「マサよ、オレぁもう半ば引退している身だ。細けぇこたぁ口は出すつもりはねぇけどよ……この夏祭りテキ屋の計画書何? 偏ってね? 最近『マサさんが変になっちゃったんですけどぉおお?!』て陳情もよく来るんだけど?」

「ははっ、異な事をオヤジ殿。金魚すくい、射的、輪投げ、型抜きにピンボール……どれも子供が好きそうなものばっかでさぁ!」

「粉もんの方が利益率よくね? てかゲーム関係多くね? それと景品がやたらと女児向けに偏ってね? 趣味? ねぇマサこんな趣味あったの?」

「子供こそ国の、社会の宝。子供達に喜ぶことこそ、任侠の道と言えまさぁ! そのためのラインナップのどこがいけないのかさっぱりでさぁ!」


 さも良い事を言ってるかのようなマサだが、サンプルとして持ってきた景品が問題だった。

 人形コスメ、魔法少女用ステッキ、プラスチックジュエリー手作りセット等々……清々しいくらい女児向けばかりものだった。

 オヤジが偏ってると言うのもわかる。


「って、女児向けの何処かダメなんだよおおおお、景品に釣られて可愛い女児が一杯来てくれるかもしんないでしょおおおおお?!?!?!?」

「マサお前何言ってんのおおおおおぉおおぉお?!?!?!?!」

「もういい! オヤジのバカ! わしがこれが正義だっていうのを証明してくるもん!」

「ちょ、言葉遣いまで?! マサ?! ねぇマサぁあぁあぁぁぁ?!」


 不死身のマサと言えば、名前を聞いただけで近隣のヤクザも震え上がる武闘派だ。

 その一方、堂々とした戦いぶりは惚れ惚れするほどのもので、警察にもファンが出るくらいの、男が惚れる男。


 だというのに、この変わりよう。

 オヤジじゃなくても戸惑う。


 それもこれも、宍戸にカチコミに行ってからだ。


 可愛さをアピールしているのだろうか、ぷりぷりと強面の頬を膨らませながら出口に向かうさまは、正直不気味だった。


「アニキ!」

「マサさん!」

「どうしてそんな風に!」


「うるせぇっ!」


 どうして変わったかはわからない。


 だけど問題なのは、マサの変わりように戸惑う家族が多い事だった。


「マサッ!」

「お嬢……」


 あたいは鬼束組を纏めるオヤジの娘、家族の和を乱す行為は見逃せない。


 叔父達に言われたこともあって、マサの前に立つ。

 だけど、マサはあたいにフッと、極道にあるまじき笑顔を投げかけるのだった。


「オレは変わってしまったかもしんねぇ……だけどお嬢は、そのまま変わらずにいてくだせぇ……」

「マサ……」


 って、おい! マサお前、今どこを見て言った?!

 微笑ましい顔をして去っていくなー!


「お嬢、耳に入れたいことが」

「何ッ?!」


 それは、うちの叔父達が集めた情報による仮定だった。


 マサが宍戸にカチコミして変わったのは周知の事実だ。


 その宍戸だが、狼の群れだとかいう集団が、陰ながら支配しているという。


 あの銀塩を潰したのもそこだとか。

 銀塩と言えばその規模や戦闘能力から、ここいらでもおいそれと手が出せなかった集団だ。

 しかもその狼の群れの頭が、銀塩の中核を一人で潰したという。


「おい、そりゃーまじなのか?」

「へい、お嬢。しかもその頭、まだ高校生だとか」

「ほぅ……?」

「だけどそれまでも、破った相手を次々と許し取り込む度量があるとか」

「つまり、マサもそいつにヤラれて軍門に下ったと」

「そ、それは……」


 あたいはそれを聞いて興味が湧いた。


 マサを下し、心酔させる男ってやつに。

 てこたぁ、あれだ。男が惚れる男が、惚れてしまう男、しかも高校生ってことだ。


 もしそいつが鬼束組に来てくれれば、うちは安泰じゃーなーのか?

 高校生ってこたぁ、あたいとも歳が近い。

 何なら一人娘のあたいの婿に迎えても良い。


「その面ぁ、拝まねぇとなぁ!」


 俄然、狼の群れの頭をはる男が気になった。

 あたいとあまり歳が変わらないというのに、あのマサを心酔させる男……


 正直、期待値が高くなっているというのは否めない。


「お嬢、化粧はまだ早いん――」

「うるしゃあ!!」

「ちょ、ちょっと馴染みの店の女将に連絡してきまさぁ!」


 そうして迎えた宍戸夏祭りの当日。


「あ、あれが?」

「……そうです」


 一見すると優男だった。

 どこにでも良そうな普通の高校生だ。

 あまり強そうに思えない……


 顔は……ちょっとなよなよしいかもだけど、でもうちにいる叔父達とは違って優し気というか、ちょっと好みというか……いやいやいやいや……っ!


「周りにいる女共……」

「……恐ろしいっすね、お嬢」


 だけど、周囲に侍らす女が尋常じゃない気を発していた。


 虎? 熊? 狼????


 正直、叔父達が束になっても敵いそうにないような女が、彼を傅いていた。


 ……


 そういうことか。


 あいつはきっと天然の女ったらしだ。

 強い女を侍らし、そいつらを手足の様に動かして、集団のトップに上り詰めたに違いない。


 くそ! 何が男が惚れる男が惚れた男だ!


 ほら、見てみろ!

 この宍戸夏祭り会場に着いた途端、その女たちを各地にときはなってんしゃあ!


「大橋、と言ったな? 貴様がそうか……」

「えっ?!」


 なんだか裏切られた気がして、そやつの前に身を曝け出した。

 気合を入れて浴衣を選んだのが馬鹿みたいに思える。


「しらばっくれんじゃにゃー! ぬしゃーがうちのマサを……不死身のマサを骨抜きにしたのはわかってんじゃー!」

「えぇ?」

「ひ、ひぃっ!」


 一人残っていた女が怯えた声をだす。


 そいつからは、散っていった女ほどの脅威を感じぃしゃあせん。

 てこたぁ、そいつがおみゃーの本命か。


 ……


 わかった、こいつぁ屑だな。

 女を誑かし動かし甘い蜜だけ吸う、女衒の様な屑だ!


 くそっ!


「おみゃーこっちこい! 騙されとる」

「きゃっ!」


 せめて、こやつの本命の目を覚まさせて――


「おい、お前……根古川に何をしてる……?」

「……え?!」

「中西先輩?!」

「中西君っ?!」


 残った女の子を、叔父達とこちらに引き込もうとした時、物凄い形相であたいの手を掴んで止めるものが居た。


 親(ヤクザ的な意味で)の敵を見る目よりも恐ろしい眼光でこちらを睨んでくる。

 叔父達もそれに驚きすくみ上って、地面にヘタレるくらいだ。


 ぶっちゃけあたいも腰を抜かして倒れたい……だが――


「答えろ!」

「えっ、やっ、あっ……」


 その男は、群れの頭とは比較にならないほどの闘気を放ちながら、あたいを威嚇してきた。

 正直ちょっとチビってる。


 こいつは只者じゃない。

 人を人と思わず、良心の呵責もなく暴力をふるえる目をしている。

 どれだけ心が摩耗したか、裏社会のやくざ者の目を見てきたあたいにはわかる……ッ!


 ……なんてこったぁ、若いけど、こやつどんだけの修羅場を見てきたんだ……

 マサやオヤジが10人いても敵うかどうか……


 はっ! まさかこいつが狼の群れの頭か?!


「中西君やめるんだ、その子怯えているだろう?!」

「……チッ」

 

 だけど、そいつの手を事も無げにつかんだのは、女っタラシの奴の方だった。

 まるで上位者の様に諭している……本気か?! 命がないのか?


「ひ、ひいっ!」

「あ、や、腰が……」

「な、なんだこのガキども……手が震え……」


 2人の間に、剣呑空気が流れる。

 それに耐えきれず、叔父達も腰を抜かしている。


 頂上決戦……そんな言葉脳裏を過ぎる。だけど――


「中西君、その恰好……?」

「……ここ一番の一張羅だ」


 中西君だっけ? どうしてブルマーに法被とか笑えない恰好しているの?!


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― 新着の感想 ―
[良い点] お嬢………強く……強く生きて下さいッ! メリークリスマス!
[良い点]  中西くん・・・ [気になる点] なぜそこで… [一言] これはきっと作者が悪いw(いい意味で)
[良い点] 一周年おめでとうございます! 作品を知ったのはネット大賞以降ですが楽しませていただいております! [一言] 誤字に突っ込むのはナンセンスだと分かっていますがスルーできませんでした >男が…
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