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ある朝ツン過ぎる妹が急にデレ始めたので、幼馴染と後輩に相談したら(※物理的に)修羅場になったんだけど!?  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第4章

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第108話 文武両道 ☆鎌瀬高主将視点


「乱取り稽古いくぞー!」

「「「「うーっす!!」」」」


 汗臭い柔道部に、野太い男達の声が響く。

 皆は気勢を上げて、それぞれの相手に全力でぶつかっていく。


 ここまではよくある柔道の練習だといえる。

 だが最近、俺達は新しい練習法を試していた。


「よし、次! 5人1組のチームを作って総当たりだ!」

「「「「うぉぉぉぉおおおおぉぉぉおぉん!!!!」」」


 複数対複数の実践想定訓練。


 今でこそ柔道は1対1の競技になっているが、その源流をたどれば平安時代に発生した相撲、組討を母体として、戦国時代に体系付けられていったものだ。

 すなわち、合戦の場で使われ発展していった戦闘技術だ。


 つまりは多対多でこそ、その神髄に迫れる。

 俺達は夏実様の群れで、その事を学んだ。



 おっと、俺は主将。


 名門鎌瀬高柔道部の主将だ。


 勘解由小路(かでのこうじ)って名前があるんだが、長い上に読みづらいってんで主将と呼ばれてる。

 だから、主将でいい。


 俺達はかつて、愚かにも夏実様に勝負を挑んだ。

 "獣"なんてクスリに手を出したにもかかわらず、鎧袖一触だった。


 あの時、確かに真の強者という者を見た。

 その小さな身体にも関わらず、重量級の全国大会入賞者達が手も足も出ず、あまつさえ全員かかっても腕一本でいなされてしまった。


『弱くて話にならないっす……準備運動にもならないとか……はぁ』


 あの時のゴミを見るような目、この場にいるものは誰一人忘れられないだろう。


 俺達は確かに自信があった。更にはクスリの力も借りていた。

 だというのに、惨敗だった。

 夏実様だけでなく、宍校の柔道部員に誰一人勝つことも出来なかった。入ってまだ2ヶ月の中学生にも、だ!


 自信は粉々に砕け、つまらないと嘲笑され――そして、新たな扉を開いた。


 幸いにしてくだらないプライドを粉砕されていたから、それを受け入れるのは容易かった。


 夏実様のフットスタンプ……尊い。



「よーし、そろそろ休憩だ! 各自、息を整えろ!」

「「「「うーっす!!」」」」


 練習方法だけでない。

 俺達は休息方法も群れから学んだ……それがこれ、ブルマーだ。


「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ」

「俺は被ってちょっとだけ睡眠を……」

「ちょっと更衣室で履き替えて気持ち切り替えるわ」


 それぞれ部員たちが、嗅いだり被ったり穿いたりしてリフレッシュに努めている。

 最初は変態的な行動にどうかと思ったが、色々と新しい扉を開けると、これはこれで有りになってきていた。


 ちなみに俺は被る派だ。それも口元まですっぽりと。

 被ることによって視線を覆いリラックスさせ、ナイロン生地越しに吸う空気が五臓六腑に染み渡っていく。

 まるで生まれ変わり疲労がポーンと飛んで行っていくようだ。

 このブルマーを味わうと他のクスリなんて目に入らない。そんな中毒性があった。


 あぁ、このまま意識を手放しそうになるほどになるけれど、程々にして続きは家にしなきゃ――


「主将! 緊急連絡網が!」

「っ! な、なんだって?!」


 緊急連絡網――それは群れで夏実様の意志を素早く伝えるために構築されたものだ。

 その名にある通り、緊急事態でしか使われない。前回は"獣"の生産工場を撲滅するときに使われたくらいだが……


「7月22日の夏祭りの日に合わせて、祭り(・・)が行われると……っ!」

「「「「んなっ?!?!?!?」」」」


 祭り……意味深な言葉だ。

 そして、群れの者ならこの意味がどういうことかわかる。


 最近、様々なよからぬ組織やグループがこの宍戸の地に集まってきている。

 それらを一掃するための祭り……それを7月22日に行おうというわけだ。


 ふふっ。


 血が滾る。


 目標が出来れば練習にも身が入るというモノ。


 俺達は群れの中ではいわゆる外様だ。しかも一度過去に夏実様と敵対し、あまつさえ"獣"という薬にまで手を出している。

 はっきりいって、肩身は狭い。


 しかし、だ。個人の戦闘能力でいえば……宍校柔道部剣道部個人の平均脅威度が745匹に対し、我が鎌瀬高は734匹。

 平均でこそ僅差で負けているが、剛拳心友会342匹、龍元御庭番衆424匹と比べると一線を画している。


 それだけじゃない。

 群れの真骨頂は力を合わせると、その力を爆発的に跳ね上がる。

 今の俺達なら、宍校柔道部とも互角、いやそれ以上に渡り合える自信があった。


 そうだ……拳姫四天王には至れなくても、今度新設される拳姫親衛隊を十分に狙えるスペックを持っていると自負していた。


 外様の俺達でも、拳姫親衛隊になれる――今後増えていくと思われる後続たちの為にも、是非ともなりたい、いやならなければならない……ッ!!


 この祭りは絶好のアピールポイントになるだろう。

 期末テストも近いが、勉強なんてしている暇はない……っ!


「よおし、お前ら聞いたか?! 合宿だ! 祭りの日まで強化合宿だ!!」

「「「「ぉおおおぉおおおあぁぁああぁああぁあっ!!!」」」」


「ま、待ってください!! 他にも連絡事項があって……っ!」

「ん? 何だ?」


「『学生の本分は勉強っす。赤点取る人は祭り参加不可っす』と、夏実様が……ッ!!」

「「「「っ!?!?!?!?!?!?!?」」」」


 衝撃が走った。


 ハッキリって、俺達は頭がよくない。

 ただでさえうちの部もスポーツ推薦で来ている奴も多い。

 成績は推して知るべし、だ。


 いやしかし、それは宍校のやつらも……


「ち、ちなみに宍校柔道部の面々は、全員全国模試上位だそうです……っ!」

「「「「な、なんだって?!?!?!?」」」」


 今まで以上の衝撃が走った。

 そして、己が身を恥じた。


 あいつら、俺達以上の脅威度の数字をたたき出しながら、模試でも数字を叩き出していたって?!


 夏実様は文武両道を推奨していたのは知っている。

 宍校の奴らは、それをただ実践していたというだけだ。


 ……


 あぁ、認めよう。

 俺は宍校の奴らに嫉妬していた。

 夏実様と一緒に居られることに。


 だからせめて強さでもと肉薄していたのだが……くそっ!!


 足りない……俺達には努力が足りない……そう言われているかのようだった。


「き、強化合宿だ!! 宍校の奴らに負けていられねぇ!!! 全員平均点以上取るんだああ!!!」

「「「「うぉおおおぉおおぉおおぉんっ!!!」」」」


 これが切っ掛けで、鎌瀬高柔道部員達が試験の前になると二宮金次郎像のような格好でグラウンドで教科書を持ちながら走り回る光景が名物となるのであった。


もう一つの連載の方もよろしくです

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