幽霊と再戦と雷神鳥
間が空いてしまいましたが、5月から更新再開します。
転移を使って地脈から浮かび上がった時のような浮遊感と共に視界が暗転し、戻った時には雷雨の空へと放り出されていた。
地脈の中だというあの精霊殿へ行ってからこっちの時間の流れでまだ十数秒程のはずだが、さて、雷神鳥はどこへ行ったかな……
バチッ
頭の後ろで電気が弾ける音がした。反射的に頭を下げて急降下する。
直後、頭上を一筋の雷撃が通り過ぎる。
落下しながら振り向き、さっきまで私が浮かんでいた場所の後方を見やる。
雷神鳥は身体からバチバチと放電させて、既に臨戦態勢だった。
「まったく、血気盛んにも程があるってば……」
さっきは雷撃を防御しようとしてジリ貧になった。
この身体にもあの電気は有効なようだし、当たるわけにはいかない。
それに今度は目的もあるし、防御に回るのはあまりいい考えじゃない。
雷神鳥のスピードもこちらより上、遠くへ飛んでもすぐに追いつかれる。
なら、近くならば?
「ほら、こっちだよ、雷神鳥!」
ジグザグ、ふらふらと不規則な動きで雷神鳥の周囲を旋回する。
時折放電した雷撃が飛んでくるが、数本ならば回避はできる。
距離を取れば一気に詰め寄られるため、敢えて至近距離に寄ることでそれを避ける。
イライラしてきたのか放電の間隔も短くなり、動きも荒々しくなってきた。
そろそろかな?
周囲を飛び回りながら指定されたポイント上空まで雷神鳥を誘導する。
少しずつポイントをずらしながら飛ぶことで気づかれないように。
「……もう少し……もう少し……」
予定していたポイントの上まで誘導すると、真下から緑のマナの奔流が噴き出した。
『奏でるは息吹 吹き荒ぶは嵐——』
奔流は緑の風となって渦を巻く。
『悠久を共に過ごす 我が同胞へ捧ぐ——』
渦は雷神鳥を覆うように本数を増やし、包み込む。
『戒めの鎖となりて我が同胞を捕らえよ——』
風の渦が鎖となって、雷神鳥に絡みついた。
『ストーム・ケージ』
最後の呪文を紡ぎ、完成した呪文。ストーム・ケージ。
風の守護精霊である彼女が使える最大級の拘束呪文だそうだ。
あの場所から動くことのできない彼女は雷神鳥の位置を把握できない。
だから彼女の真上に雷神鳥を誘導することで、彼女の魔法の発動を手助けした。
『今です。お願いします。彼を、助けてください……』
「……任せて」
動きの止まった今がチャンス。
魔陣書、エクリプス・ヘリオスとスフィアを展開し、魔法を展開する。
指定するのはさっき作ったばかりの新魔法。
「……"座標固定……包囲……砲門開錠……四属性……装填……空気水泡……弾岩……爆砕砲……小転移"……連結……繰返……360"……」
発動前の微調整を終え、改めて雷神鳥を見る。
その身体は未だに風の鎖で動きを封じられているが、ミシミシと風の鎖にひびが入るのが見える。
ストームケージももうすぐ効果が切れる。
雷神鳥の周囲を包むかのように魔法陣が展開していく。
緑と、赤と、黄、そして黒の4色。四属性の魔法。
魔法陣の合計は360個。それらが繋ぎ合わさり、雷神鳥を包み込む球体のように展開する。
今回の目標はシンプルに、大量の風のマナを体内に送り込まなければならない。
パラパラとエクリプス・ヘリオスのページを捲り、新魔法の最後の一節を唱える。
「"コール……爆風泡弾"」
全ての魔法陣にマナを一気に送り込む。
それぞれの魔法陣から4色の燐光が輝き、赤と緑の光の筋が雷神鳥目掛けて飛び掛かる。そしてそれは雷の身体の中へ吸い込まれるように消えていった。
それは弾丸。
弾岩を爆砕砲で発射している。
弾岩は中が空洞の弾の形をした岩を飛ばす魔法だ。
空洞にはさまざまなものを入れ込むことができるようにしてある。
今回仕込んだのは2つ。
空気水泡と小転移。
空気水泡は周囲に空気の膜を作成して、空気の泡を作る魔法。
本来は障害物や攪乱、水中での呼吸用に使う魔法で、弾丸の中に仕込めばその中の空気しか使えないから小さな泡しか作れない。
そこで組わせるのがもう一つの魔法。
小転移。
空気水泡発動前に小転移で外から大量の空気を一気に転移させる。
するとどうなるか?
雷神鳥の身体、人で言う脇の部分が大きな音を立てて破裂した。
その1回を始まりの合図に連続で身体の部分部分が破裂していく。
羽が、足が、身体が、嘴が、次々と破裂しながらその電気が空気の中へ溶けていく。
答えは巨大な風の泡が出来る。
風の魔法で作った泡はそれ自体がマナを帯びている。
1回きりであればすぐに弾けた身体を雷神鳥は修復するだろう。
だけどそれが300以上あれば?
修復など間に合わずに体内のマナが電気と共に霧散するはず。
その読みはあっていたようだ。
全ての泡が弾け、そこに居たのは小さな鳥。小さいとはいえ人の頭ほどはあるが。
そしてそのまま真っ逆さまに地面へ落下していく。
「あ、あぶなッ!?」
しかし、ぶつかる前にその姿はフッと消えてしまった。
あの感じ、彼女が転移させたのかな?
ここはあそこの真上。それが出来てもおかしくはない。
「じゃ、私ももう一度あの場所へ……ん?」
周囲を漂う魔素、いや、これは散ったマナ?
どす黒い嫌な感じを漂わせるマナが西の方へ漂うように流れ始める。
「これが、暗黒マナ? なんか嫌な予感がする」
開きっぱなしだったエクリプス・ヘリオスのページを捲って、一つの魔法を発言する。
「"コール……空気水泡"」
空気水泡で暗黒マナの周囲の空気ごと確保する。
そして風の精霊にお願いして中の空気だけを外へ逃がし、圧縮。
暗黒マナを閉じ込めた泡を作る。
「これは後で調査した方がいいわね」
そして泡を持ったまま、もう一度あの場所、風の精霊殿へと転移した。




