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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第三章:師匠と先生と大樹の秘密【帝歴716年】
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幽霊と議論と魔女のお茶会

 マーリンの話を聞き終わり、それぞれ一旦休憩をすることにした。

 ドリーは少し落ち込み気味だったので、一人待ちぼうけをしているサリファを迎えに行ってもらうことにした。

 マーリンに確認したら家の裏側に馬車が通れるくらいの道があるそうで、そちらへ誘導するようにドリーに頼んだ。

 ドリーは笑顔を見せて外へ出て行った。

 長いつき合いじゃなくても、あの子が無理をしているのは誰でも分かるだろう。

 言葉を話せない分、表情でコミュニケーションを取っていた彼女はすぐに顔に出る。


 マーリンの話を聞いたときのドリーの表情。

 そしてマーリンの、ウンディーネの話を聞いた時に彼女があの森で一人きりだった理由を察した。

 でも、それを彼女が語ってくれるまでは触れるべきではないとも思う。

 彼女が一人きりで何を考えていたのか。何があって師匠と共にいることになったのか。


「ルル、ドリーが話すまでは」

「分かっています。先生。詮索しない。いつも通りに、ですよね」

「ありがとう。よろしく」


「さて、彼女が戻ってくるまで少し時間があるね。どうしようか? 交流会でもするかい?」

「交流会?」

「あれ? したことはないかい? 魔法使いや魔女が集まって魔法についての議論をするんだよ。まぁ、本来は数十人規模で集まってそれぞれの研究成果を発表するんだけどね」


 なるほど。交流会。そのまんまの意味なんだ。


「二人、いや、三人か。交流会というよりお茶会の方が合ってるかもね」


 それを聞いてマーリンは手を口元に当ててくすりと笑った。


「いいね。魔女のお茶会だ。それっぽい」


 そしてマーリンは再びキッチンへ向かった。


「新しいお茶を出そう。今度のは香りがいい私のお気に入りだ」

「ありがとう、楽しみだわ」


 マーリンに対して、私は親しみを感じるようになっていた。

 同じ、かは分からないけれど、転生、第二の人生という点で彼女にシンパシーを感じたのかもしれない。

 思えば、彼女になら話してもいいかもと思ったのも、どこかそういう雰囲気を感じとっったからかも。


 マーリンとルル、そして私が再びテーブルについて、お茶とお茶菓子が用意された。


「さて、準備は整ったし、シャオリー、と今更だけど呼び捨てでかまわないかい?」

「えぇ。大丈夫よ。マーリン」

「ありがとう。そっちの……」

「ルルティナです。ルルって呼ばれているのでルルでいいですよ」

「分かったよ、ルル。じゃあ二人とも。魔女のお茶会を、始めようか」


 ルルと私はどこか緊張したように肩を強ばらせていた。

 それをみたマーリンは嘆息し、笑みを浮かべてお茶をすする。


「そこまで緊張しなくていいよ。これはお茶会だ。雑談しながら語ろうじゃないか」

「……そうね。ごめんなさい」

「いいさ。じゃあ私から話そうか。そうだね、精霊魔法、もとい精霊についてだけど、私の研究については話したわよね? 精霊と言葉でコミュニケーションをする。最終的には精霊族とやりとりしたいけれどね」

「それは、実用化できているの?」


 マーリンは困ったような笑みを浮かべて左手を挙げる。

 すると奥からふわりとやってきたのは見覚えのあるフードの精霊。


「アクエリアス、ご挨拶」


 ペコリと頭を下げて挨拶をする。


「さっきは言葉を話していたみたいだけれど?」

「一応、話せないこともないんだけど……でも言葉としてはどうかしらね?」

「?」

「アクエリアス、喋って」


「……ダ……ァ……レ?」


「! そう、これよ。確かに言葉を喋っている」

「いいえ、これは確かに"声を発している"けど"言葉"じゃないわ」

「どういうこと?」

「私は『誰?』という言葉を話させようとした。でもこれはそういう音を発しているだけ。意味を理解しているわけじゃないの」

「精霊って、人の言葉が分かると思っていたんだけど?」

「それはちょっと違うわね。精霊族はともかく、精霊は言葉を理解しているわけじゃないの。精霊は"言葉に含まれるマナから情報を抜き取って、命令を理解"しているの」

「マナから、情報を、理解……」


 精霊は言葉の意味を理解しているのではない……そうか、精霊にお願いする時は呪文を唱える時と同じようにマナを乗せてお願いしていた。つまりそれが、会話が出来ていると感じていた理由か。

 呪文を唱える時は言葉にマナを乗せることで、魔法を発動している。

 それは大気中の魔素がマナに呼応して反応を起こしているからだが、精霊も同じなのか。


「それは、盲点だったわ。精霊も魔法の発動と同じ、ということね」

「話が早い。その通りだよ。でも精霊だって言葉を持っているんだ。ウンディーネだった時、私は確かに水の精霊と言葉でやりとりしていたんだからね。念話だけれど」

「なるほど。それを再現するのが貴方の研究目標なのね」

「あぁ。だからこれはまだ未完成なんだ。声帯のように音を発する器官は精霊に作ることができたんだけれどね。今は一度保存した音を再度発しているだけのものなんだ」


 つまりレコーダーとスピーカーというわけか。

 音を保存して、それを発するだけ。

 確かにそれじゃあ言葉を話しているとは言えないか。


「どこかでブレイクスルーしないと先には進めないわけね」

「そういうこと。何か考えはあるかい?」


そう問われて、少し考える。

こう、喉元までは何か案が出掛かっているのだが……


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