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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第三章:師匠と先生と大樹の秘密【帝歴716年】
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森人と今世とエルフの話

 さて、話を再開しよう。

 私がウンディーネとしての一生を終えて、意識は暗い闇のような場所に落下するように落ちていったんだ。そして、次に目が覚めたのは誰かの腕の中だった。

 まぁ、それが今生の母親だったわけなんだけどね。

 ウンディーネに母親という感覚は余りないんだ。一緒の時期に産まれた精霊族同士で家族って繋がりを持ってはいるけれどね。

 目覚めてすぐはウンディーネだった時の記憶が何故か残っていて状況に着いていけず慌てたよ。

 それでつい、生物としての本能なんだろうなぁ。言葉を喋ろうとしたんだ。

 赤ん坊でまだほとんど何を喋っているのか分からない言葉だったろうけれど、私は確かに、言葉を発したんだ。

 分かるかい? 精霊族だった時は声なんてものは発したことがなかった私の衝撃が?

 新鮮な驚きだったよ。

 その時初めて私は泣き声以外の言葉を発したんだろうね。

 母親は驚いて、そしてその後柔和な笑みを浮かべて


「~~、~~。~~~~、~~~~~?」


 とよく分からない言葉で誰かに話しかけていた。

 後から言葉を学んで思い返せばあれは


「ねぇ、リュー。今この子、喋ったわよ?」


 そう喋っていたんだと思う。あぁ、リューって言うのは私の父親の名前だよ。リュート。母親はレレーン。

 当時の私は母親が語りかけていた方向に首を傾けようと思ったけれど、身体はそこまで発達していなくて、母親の顔しか見れていなかったけれど、きっとその先には父親が居たんだろうな。


 そんな形で第二の生を受けた私はまず周囲を観察した。

 そしてここがエルフと呼ばれる亜人の国で、自分はエルフに生まれ変わったのだと知ったよ。

 エルフについてはウンディーネ時代にも聞いたことがあったからね。耳が長くて金の髪が多いと聞いていたからピンと来たよ。


 エルフという種族は100歳で成人扱いになるんだ。

 人族の成人が15歳くらいだったかな? あぁ、ルルちゃんありがとう。うん、間違ってなかったね。

 身体の成長は人族と同じように進むから見た目15歳くらいから100歳まではほとんど見た目が変わらないんだよ。


 エルフに生まれたことで私は風と地の魔法適正を得た。

 そして、記憶が残っていることに関係するのか、水に対しても高い適正を持っていた。

 だからエルフの中でも名前が知れ渡るのは時間の問題だったね。

 3属性を使えるエルフは歴代でも数人しか居ないと言われているから。

 分かるだろう? 貴方も魔女ならば。

 エルフの国にも魔法ギルドがあってね。私もそこに入らされていたんだ。

 毎日魔法の研究、研究、研究。


 でも私は魔法の研究に協力的ではなかった。

 物心着いた頃から私にはある目的があった。

 ウンディーネの仲間、家族を見つけること。

 当時の私はまだ、自分はウンディーネなんだと思っていたのさ。

 なんせ、エルフとしては数十年しか生きていないが、ウンディーネとして数百年を生きてきたんだからね。

 周りのエルフが仲間とは思えなかったんだ。


 とはいえ、あれから300年以上は経っている。

 当時の襲った者は既に死んでいるだろうから復讐は意味がない。

 だから私は今も氷の中に閉じ込められているだろう仲間達の場所を探していたんだ。


 まぁ、過程について話してもしょうがないから結果だけを言うとね。

 手遅れだったんだ。


 見つけたんだ。仲間達を、家族を。

 今から40年前かな。

 当時80歳だった私はまだ成人前で本来エルフの国を出ることが許されていなかった。

 国を出ることができるのは成人した100歳を超えたエルフのみ。


 でも仲間の情報を得た私は居てもたってもいられず、国を飛び出したんだ。

 そして、武王国へ向かった。ウンディーネの氷の像を見た、っていう商人から話を聞いてね。

 氷の像となったウンディーネは溶けない氷として南の熱帯地域が多い武王国の貴族の屋敷にあったのよ。

 その貴族の家にこっそり忍び込んで、私は家族と、仲間と再会した。

 水に風の魔法を使えば音を立てずに忍び込むのは難しくないからね。

 武王国は魔法よりも力、武力が強いと言う国だから魔法に対する防衛も低かったし。


 でもね、再会したその氷の像には、本来のマナは残っていなかったんだ。

 それはただ、親しかった友人の、大切な家族の、見知った仲間達の形をしただけの氷の像。

 後付けでマナを供給することで溶けないよう維持しているだけだった。

 氷の像という器だけになったウンディーネは、当時はまだ氷に閉じ込められたようだった姿が、マナが尽きて体が水に還元されたんだろうね。そのまま凍って、まるで最初からそうだったかのように、透き通るような氷の像になっていたんだよ。


 そこで私は気づいたんだ。ようやくね。

 今の私はエルフだ。ウンディーネじゃない。

 ウンディーネの私は死んでしまっている。

 今更家族や仲間に会ってどうするつもりだったのか。

 そして既にどこにも仲間も、家族も居ないと知った時、気づいたんだ。

 この世界にいる私はウンディーネでもない。でもエルフであるとも思えない。

 そんな歪な存在になってしまったかのように、感じたんだ。


 いいかい? 転生ってのはただ記憶を持っただけの別人に過ぎないんだ。

 私はそう思っている。名もないウンディーネだった記憶を持つ、マーリンというエルフ。

 それが私だ。


 少し脱線したね。

 その後は呆然としたまま私は国に戻ろうとしたんだ。けれどね、まぁ、国の国境に戻った私に待ち受けていたのは追放処分が下されていた、という事実だった。

 まぁ、掟を破ったんだ。仕方ない。

 エルフの国には戻れない。じゃあこれからどうしようか?


 そこで各地を放浪したんだ。

 目的を見失ってしまったからね。

 まぁ色々な出会いがあったよ。別れもあった。

 そこで色々あって私は思い出したのさ。


 赤ん坊の時、初めて声を出した時の感動を。

 そうだ、精霊だって、言葉を話せれば他種族と交流できる。

 そうすれば、私たちのような悲劇を避けるよう、交渉だってできるかもしれない、と。


 だから私は研究を始めたんだ。

 私にしかできないと思ったから。

 精霊族とエルフ、二つの種族を知る私だからこそ。


 そして何年か旅をしてこの森にたどり着いた。

 ここはマナが豊富で、地脈の力も強い。

 研究にも向いていたし、何よりここには精霊族は居なかったからね。

 精霊族に会っても、今の私では会話することができない。

 それはどこか、寂しいと思ったんだ。


 というわけで私は今ここで精霊に言葉を話させる研究をしている。

 いずれは精霊族との会話を目的にね。


 私の話はこれで終わり。

 長々と話してしまって申し訳ないね。

 お茶も冷めてしまった。

 また新しいお茶を淹れるよ。


 そしたら今度は互いの魔法について、話そうか。ふふ、今日は久々に人と話して気分がいいみたい。


次回は「タイトル未定」

2/24日、22時台の更新予定です。

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