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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第三章:師匠と先生と大樹の秘密【帝歴716年】
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幽霊と構築と光の魔法

 出発を明日に控えて今日はサリファと宿屋で二人っきり。

 ルルとドリーは買いだしに出かけてもらっている。


「さて、サリファ。光魔法と精霊召喚魔法陣について教えて」

「は、はい! よろしくお願いします!」


 サリファと一緒に光魔法についての研究と精霊召喚魔法陣の改良をしようというわけだ。


「まずは光魔法の初歩の初歩、(ライト)を使ってほしいんだけど、できる?」

「それくらいなら問題ありません。"~~~~~~~~~……(ライト)"!」


 指先に白いマナが集中して小さな光の球が出来上がる。

 明るさとしては元の世界の拳くらいの白色電球と同じくらいかな?

 それにしてもほんと何言ってるのか分からないわ。


「えっと、その呪文をアルル文字か、魔法文字で書ける?」

「あー魔法文字で良ければ」


 とサリファが紙にサラサラと呪文を書いていく。

 ふむふむ、なるほど。魔法文字の意味から推測すると……


「アルル文字では"世界を照らせ、導け"かな? サリファ、これアルリオンの言葉で言ってみて」

「えっと……"世界を照らせ、導け (ライト)"!」


 今度は左手の先に光が灯った。

 うん、やっぱり魔法文字を経由すれば意味が理解できそうだ。


「よしよし、じゃあ次は精霊召喚魔法の魔法陣を描いて、隣に魔法文字で書いて見て」

「分かりました!」


 こうしてサリファが知っている呪文を魔法文字に書き起こして貰ったり、魔法陣の文字を魔法文字に直して魔法文字経由でアルル文字に起こすことでなんとか解読することができるようになった。


「オッケー、とりあえずは頭に入ったよ。じゃあ早速改良していこうか」

「はい! よろしくお願いします!」


 まずはサリファの使う精霊召喚魔法陣を魔法文字で複製して作る。

 これを元にサリファに魔法を唱えて貰って起動を確認。ここは問題なく起動できた。


 次に魔法文字の光属性の部分を闇属性に変更してみる。

 試しに私がマナを送りこんでみると起動は成功した。けれど視界同調は出来なかった。


 ここから考えられるのは二つ。

 視界同調はサリファの固有の能力の可能性。

 または、光属性の特性が感覚同調だと言う可能性。


 一つ目なら確認する方法は面倒だが、二つ目なら別の可能性から類推できる。

 召喚した黒い鳥に対して同調を試みる。

 視界の同調ができないなら他が出来るかどうかの試験だ。


「よーし、ちょっと飛んできてねー」


 黒い鳥に命令して外へ出してみる。同調の試みをしているとスーと繋がりが感じ取れた。

 黒く、細い糸のようなマナの繋がりが黒い鳥へと繋がっている。

 そしてガヤガヤと音が聞こえ始め風切り音と一緒に――


「よっ ってーよってっ ー! 美 しい串 きだよ!!」

「あんた、港 から運 た の魚だ! 魔法 運んできたから 鮮そのもの! 丘に居ながら港 のような魚が喰え よ! どう い!?」

「お花ひ つどうで かーきれ なお花です ー」


 ――ッ!


 マナの繋がりを強制的に断ち切る。

 今のは……


「だ、大丈夫ですかシャオリーさん!?」

「え、えぇ。大丈夫。ちょっと出力が強すぎたみたい」

「出力?」

「あー気にしないで。とりあえず、特性は分かったわ。他の属性は分からないけれど、やっぱり属性によって同調できる感覚が違うのね」

「というと、何か視えたんですか?」

「聴こえた、かしらね。闇属性の精霊とは聴覚で同調する。光属性の精霊とは視覚で同調する」

「そんな違いが……」

「貴方達の国ではきっと光属性以外で使うことはないでしょうからね。学問派閥があれば研究のために使っているかもしれないけれど、聖王国では闇属性はなかなか居ないらしいし」


 とはいえ長い歴史の中で見つかっていないとは思えない。

 一般に周知していないだけであるところには研究成果があるかもしれないわね。


「聴覚は鳥と相性が悪いわね……風を切る音も凄くて音が飛び飛び」

「なるほど。お疲れ様です」

「ありがと。でも特性は見えたし、光属性の特徴である視覚を伸ばすとして、貴方はどういう魔法が欲しい?」

「え、そうですね……私、鳥くらいしか出せないんですが、もっと他にも出せたらなぁって思うんですよ。あと複数出せたらいいなって思いますね。見る精霊を選べたらとか」

「ふむふむ、なるほど」


 あぁ、こうしていると思い出すなぁ。

 相手の要望を聞いて書面に落していく作業。仕事してるみたいだ。

 まぁこれに関しては好きでやってるし、相手が知り合いっていうだけで全然違うんだけど。


 要望をまとめると精霊を形作る生物の種類を増やす。選択できるようにする。複数召喚できるようにする。視界同調を選択できるようにする。くらいか。


「……確かルルに渡した奴のテストに使った試作品があったな」


 持ってきていた荷物の奥の方を漁ってみると下の方に入っていた。


「あったあった。これこれ」

「シャオリーさん、それは?」

「これはね。魔陣書。私が作った本だよ。腰のエクリプスやルルも持ってるものなんだけど、簡単に言えば精霊に手伝って貰って魔法陣を簡単に出力するための本」

「精霊に?」

「そ。貴方の要望を叶えるならこれを使った方がいいからね。これを貴方用にカスタマイズして上げるわ」

「い、いいんですか? 貴重なものじゃ……」

「いいわよ。別に。試作品だし。それに、貴方の戦力強化はパーティーとしてもメリットがあるし、私の魔法研究の役に立つからね」

「あ、ありがとうございます!」


 頭を下げてがっしりと手を握ってくる。

 そこまで感謝されるとは……ちょっと本気でやらないとね。


「じゃあ調整しつつ試してみるからまた今夜、来て。それまで自由にしてていいから」

「え、じゃあ隣で見てていいですか?」

「……作業中は貴方に構ってあげれないわよ?」

「いいんです! 見てたいんです!」

「まぁ、いいけど」


 見られているとはいえ、そこまで気にはならない。

 森に居た頃からドリーやルルが覗きに来てたし。


 さて、動物か……鳥以外だと猫とか犬とかそれっぽい奴がいいわね。

 街中ならそれでもいいけど外だったらもっと別の、魔獣とかでもいいか。

 確かエクリプス・ヘリオスの中に魔獣や動物をコピーしておいたヤツがあったはず。

 これを複製して……鳥以外にも猫、犬、鼠……魔獣からフォレストウルフ、ミストモンキー、ロードダック……あ、おまけでアレも付けて上げよう。

 種類はこんなものか。

 魔法陣の方は呪文で動物を指定するように修正して、属性は光固定だろうからここを省略して自動化。

 手ごろな精霊は……ん?


 近くで待っているサリファを見ると小さな光精霊がまとわりついていた。

 これは……闇精霊を召喚して命令する。

 光精霊に近づいて行き、しばらくふよふよとしていると、やがて光精霊を連れて帰ってきた。

 交渉は上手く行った見たいだね。

 多分この光精霊はサリファにずっとくっついていたんだろう。

 光精霊も闇精霊も自然に湧くことはほとんどない。

 誰かが魔法で使役して、そのままになったものがほとんどだ。

 サリファが聖王国から連れて来たか、途中で生まれたのかは分からないが、サリファと相性が良さそうというのは分かる。


 この光精霊に約束をして、魔陣書の制御をお願いする。

 これで核は出来た。

 後は複数召喚か……ループ処理を入れれば出すだけなら出来るけど、それじゃダメだよなぁ。


 そういえば、あのマナの繋がり、ラインがあったな。

 あれが同調の証なら繋ぎ直す、またはオンとオフを切り変えられたら……出来そうだな。


 よし、ここも呪文で制御して、召喚する精霊もナンバリングするようにして……

 こっちの命令系はもうちょっと簡略化できるな。というか同じ処理流すのは止めようよ作った人……


 ◆


「よっし! 出来た!!!」


 気が付けば夕暮れ、窓から夕陽が射しこんでいる。

 振り返るとサリファがベッドで寝ていた。それに奥のベッドでルルとドリーも肩を寄せ合って寝ている。いつの間に帰ってきたのか。


「……しょうがない。これを試すのは起きてからにしようか。ふわぁ……私も眠いや」


 最後に出来上がった魔陣書の表紙に名前を書き入れる。


「よし、これから貴方の名前は"ポラリス"よ。光の魔法だからね、夜空で一番輝いている星の名前。この世界じゃ見れない星だけれどね」


 出来あがった魔陣書、ポラリスを寝ているサリファの手に乗せて、空いている隣へ倒れ込む。


 その後、ご飯の支度が出来たとルルとドリーに起こされるまで熟睡した。







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