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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
外伝:人と世界とを繋ぐ物語 part1
45/123

【外伝】最北の町の薬屋の看板娘【帝歴713年】

 新しい友達が出来た。

 名前はヴィ・シャオリー。あだ名はシャオ。

 いつも薬を卸してくれる深霧の魔女様の弟子。

 私よりも小さくて子供みたいな身長で、私よりも10も歳が違う、そんな友達。

 魔女様とはおばあちゃんが知り合いで、私も小さいころから知っている。

 そんな魔女様に小さい頃言ったことがある。


「ねぇ魔女様、私も魔法が使ってみたい。弟子にしてよ?」

「そうねぇ、それは難しいかもしれないわねぇ」

「どうして?」

「魔法を使うにはね、生まれ持った資質、マナに祝福されていなければならないから」

「祝福?」

「難しい話はまたいつか、ね? 貴方は残念だけど祝福が足りないみたい」


 後からまた聞いた話、祝福っていうのはマナの変換効率と蓄積量の最大値のことだそうだ。

 蓄積量っていうのはマナを体内に保有できるキャパシティ。

 これは人によって個人差があり、私は人より蓄積量が少ない。

 変換効率は魔法を使う際に必要なマナの消費量。

 1つの魔法を使うのに例えば普通は2必要な魔法は変換効率20%なら10必要になる。

 50%なら4必要になる。私は人並みの20%。つまり効率は平凡、容量は小さい。

 そんな状態じゃ魔法も満足に使えない。だから祝福が足りないそうだ。


 だからそんな魔女様が弟子にするくらいだから、余程祝福された人なんだろうなと思った。

 事実、シャオは祝福はとてつもなかったわけだけど。

 シャオの蓄積量は常人の5倍の容量を持っていて、変換効率も100%とロスなし。

 デタラメもいい程よね。そりゃ魔女様も弟子を取るわけよね。


「こんにちは~ミリー。今日も新しい薬を持って来たわよ」


 噂話をしていればチリンチリンとベルを鳴らしながら本人がやってきた。


「いらっしゃいシャオー。今日もありがと。何飲む?」

「じゃあミズイロ茶で。この前淹れてくれたアレ、美味しかったから」

「御目が高い。最近の私の一押しよ? おばあちゃんも好んで飲むんだから」

「ありがと。いつもの場所に卸しておくね」

「こっちも淹れておくよ。終わったら奥に来て」


 店の奥は居住スペースになっている。

 奥に入ってすぐにあるテーブルは休憩用で、ここならお客さんが来た時には鈴の音で気が付ける。

 ミズイロ茶は最近聖王国側から来た商人から仕入れた茶葉で風味と香りが良く、独特の苦味があるけれどそれがいいと評判の茶葉だ。

 この前の卸しの時にシャオに出したらずいぶんと気にいったようで、本人曰く、


「故郷の味に少し似てる」


 だそうだ。


「お待たせ~卸しておいたよ。今回は師匠6、私が4かな」

「へぇ、ずいぶんとシャオの分が増えたじゃない? 薬作りには慣れたの?」

「ちょっとずつね。でも師匠みたいに均一に同じ効果が出せなくて。何本も卸せないポーションが出来て行くのよ。自分用に持ってるけどさ」


 そう言ってシャオが出したのは商品用の瓶じゃない種類別々の瓶に入ったポーション。


「それが自分用? 効果が全然なの?」

「うぅん、逆。効果が強すぎたりね。前は弱すぎたりでまばらすぎるのよ。師匠は凄いわ。均一に効果が同じポーションを精製するんだから」

「そうねーおばあちゃんが仕込んだって言ってたけど、あれほどの効果と均一さ、品質の高さはお祖母ちゃんでも真似できないって言ってたし、神王国一の薬師と言ってもいいと思うわね」

「やっぱり?」


 そう、うちの薬屋が繁盛しているのも半分程は魔女様の薬のおかげだ。

 しばらく前までは。


 実は最近、シャオの作ったポーションを買いに来る人が増えて来た。

 筆頭は門番をしている衛兵さんだけど。

 衛兵さんを中心に魔法ギルドの職員の方だったり、シャオ製のポーションを求めてやってくる。

 数が少ないから余り卸せないけれど、数が増えて来たのなら需要に追い付けそうだ。


 このことはまだシャオには伝えていない。

 本人はまだ勉強中だっていうし、おばあちゃんも


「今あの子は作ることが楽しい、上達するのが楽しいって思っている時期だ。そんな時に伝えても余計な情報だよ。あの子は放っておいても上達する。だったら放置して腕が上がるとこまで見守ってやりな」


 っていうもんだから、ね。


 隣で御茶をすすって笑顔の友人を見て、この子は今が幸せなんだろうなと、そう思った。


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