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異世界でただ一人の幽霊と魔女  作者: 山海巧巳
第四章:エルフと魔王と魔導王国【帝歴716年】
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幽霊と英雄と二手に分かれて

 休憩に入りシュリットが淹れなおしたお茶を飲みながら一息着く。


 話を整理すると、まず敵対している現魔導王アンブール。

 神王国第二王女サラティエを通じて神王国へ侵攻した1年前の事件。

 その事件の裏で計画していた人物。


 魔導王アンブールはエンディミオン元陛下が魔導生物製造魔法で作った魔導生物(ホムンクルス)で、その魂は古の魔導王国建国時に封印された魔王の魂。

 魔王は不滅で魂は記憶と意志を持ったまま転生し、次の身体で再び魔王として誕生する。

 魔王が成長するまでの期間は平和なため、周期的に魔王が復活するというサイクルだったんだと思う。

 そのサイクルを止めたのが初代魔導王。

 初代の魔導王凄い人だったんだなぁ。そのまま建国しちゃうくらいだし。


 で、その魔王はアンブールの器を元に現代へ復活。

 その魅力とカリスマ性をもって仲間を増やし、他国の王女であるサラティエまで篭絡した。

 エンディミオン元陛下は穏便な政治をしていたらしいから、今の過激な政治に賛同する領主も多少は居るのだろう。

 逆に保守的な領主はエンディミオン元陛下の統治復活を目指している。

 これが反魔王連合の領主達。

 さっきシュリットが持ってきた地図を見るに魔都ゼアートに近い領主は比較的アンブール派に所属している。

 逆に遠い領地の領主は反魔王連合に所属しているようだ。


「さて、休息も取れただろう。話を再開しようか」


 ルサイスの一声で再びテーブルへ集まる。


「我々反魔王連合の目標は魔王アンブールの討伐とエンディミオン陛下の再即位、または正当なる後継者を擁立することだ」

「正当なる後継者?」

「あぁ、エンディミオン陛下には子供は出来ていなかった。だからそちらのシュナス殿のように、子供の面倒を見ることが多かったのだ。だが、エンディミオン陛下の妹君には子供が出来ている」

「なるほど、つまりその子供はエンディミオン陛下と血が繋がっている。言ってしまえば初代魔導王の血を受け継いでいる、と」

「そういうことだ」


 エンディミオン陛下が再即位を断った場合、または即位することが出来なかった場合の保険、か。


「その後継者となる子供は妹君、ジュノン様の孫にあたり、その居場所も我々は把握している。だが、領主の方で軍を動かせば魔王軍に気取られることになる。それでは後継者の身に危険が及ぶ。冒険者を雇おうにも魔導王国のどこに魔王軍の監視の目があるかも分からないし、その冒険者を信用できるかも怪しいのだ」

「だから、それを私たちに?」

「あぁ。だが、エンディミオン陛下の救出も同時に進めたい。こちらから兵を出すことは出来ないが味方の領主達を通じてバックアップは出来る。君たちに大変な負担を強いるのは分かっているが、頼む。後継者探しと陛下の救出の両方を受け持ってはくれないか?」


 後継者である子どもの確保と、エンディミオン陛下の救出。

 どちらも急ぐ必要はあるが人員を割けないって感じか。

 エンディミオン陛下の救出は隠密的な動きが必要だし、後継者探しは広範囲の探索も必要……


「分かりました。引き受けましょう」

「師匠?」


 私が返事をする前に師匠が答える。


「シャオ、私はね、エンディミオン陛下に会いたくてここまで来た。救出に関しては願ってもないこと。それに伴って反魔王連合の力を借りる以上、私たちも協力するべきところはするべきよ」

「師匠がそういうなら、私は問題はありません」


 コクッ

 ドリーも頷く。


「私も大丈夫です」

「あたしも問題ないですよ!」

「私はまぁ、雇われなんで。シュナスが行くっていうなら行くさ」


 ルル、サリファ、アーネと続けて答えてくれた。


「ありがとう……皆さん」


 ルサイスが頭を下げる。


「頭を上げてください。私たちの目的でもあるんですから」

「すまない……」


 ルサイスは顔を上げて全員の顔を見て頷く。


「協力してくれるのはありがたい。だが、それに踏まえて伝えねばならないことがある」

「何?」

「今の魔王軍には四英雄が全て向こう側に就いている」

「四英雄?」

「魔導王国の軍隊の中でも最も優れた戦士に与えられる称号よ」


 首をかしげる私に師匠が答えをくれた。


「あぁ、時代によって移り変わるが現代の四英雄は全員アンブールの配下になっている」

「四英雄に選ばれる戦士たちが全員?」

「そうだ。"紅蓮のゴルドバーグ"、"蒼弓のリューレイナ"、"雷獣のデトロイト"、"氷結のハーゲン"。それが今の英雄たちの名前だ」


 紅蓮、蒼弓、雷獣、氷結……異名持ちか……


「それぞれの特徴は分かりますか? 今言うということは、立ちふさがる可能性があるということですよね?」

「すまない。彼らの力はこの辺境であるエルスレインには届いていないんだ。せいぜい領主会議で魔都に集まった時に顔を見た程度だ」

「そうですか……」


 異名からして紅蓮は火、蒼弓は弓使い、雷獣は雷で獣……召喚術かな? そして氷結は氷、水属性か。

 蒼弓も水系かな。とりあえず魔法使い、または魔法を使う戦士として見た方がいいか。


「分かりました。その四英雄には気を付けるべきですね」

「あぁ、気を付けてくれ。ところで頼んでおいてなんだが2ヶ所同時に向かって欲しいのだが、分担はどうする?」

「そういえば2ヶ所に向かうんでしたね。エンディミオン陛下救出チームと後継者捜索チーム」

「私はエンディミオン様の元へ行くわ。元々そのために来たんだもの。引き受けると言った手前申し訳ないんだけど」


 まず師匠が手を上げる。

 師匠はエンディミオン様の方へ、当然かな。


「シュナスが行くなら私もそっちかな」

「あ、アーネ。待って。貴方には後継者を探す方に回って欲しいの」

「ん? それはどうしてだいシャオ?」

「後継者探しに置いて色々な街へ入ることになると思う。そう考えるとアーネの金ランクの冒険者というのは便利だと思うの。それにエンディミオン様を救出しに行くのは隠密行動も必須になるわ。だったらそっちは私こそが適任」


 アーネは師匠と一緒に行こうとしていたが引きとめる。

 アーネの攻撃力は隠密救出任務より捜索チームの方が合っている。


「なるほどね。だそうだシュナス。弟子がそう言っているけど?」

「私も同じことを考えていたわ。それに護衛ならシャオが入れば問題ないわよ」

「分かった。私は後継者捜索チームに入ろう」


「あたしはどうしたらいい?」

「サリファは後継者捜索チームに入って欲しい。貴方のアイン達は向いているから」

「分かったよ!」


 サリファは自分でも向いていると思っていたのだろう。

 笑顔で頷いた。


「先生、私は?」

「ルルにも後継者捜索チームに入って欲しい。私と師匠で魔法使いがこっちに集中するからね。バランスを見るとルルにはそっちに入って欲しい。頼める?」

「分かりました。先生の言うことも最もですから。こちらのことはお任せください」

「うん、頼んだ」


 これで後継者捜索チームはアーネ、ルル、サリファが向かうことになった。

 となると残るは……


「ドリー、貴方はこっちに来てもらえる? どの道魔法陣を展開しながら移動するから私に付いてきてもらうしかないのだけど」


 コクコク


 ドリーは首を縦に振って肯定する。


「ありがとう、ドリー」


 これでエンディミオン陛下救出チームも決まった。


「ルサイス様、チーム分けが出来ました」

「うむ。それではたの――」

「ちょっと待って!」


 突然声を上げたのは今まで話を聞いていただけのリーエンだった。


「どうしたリーエン。急に大声を出して」


 ルサイスも眼をあけて驚いている。

 私達も急に叫んだリーエンをジッと見つめていたが、そんな中リーエンが口を開いた。


「お兄様! 私も、彼女達に同行させてください!」


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