3.五次元
2~3日に一回のペースで出そうかと思っております。
_名前を知らなければ話しにくそうですね。
誰かが言う。目の前に7人もぞろぞろいりゃ目で追っていけない。
「一気に覚えるのは大変だし、めんどくさいから、あとで何か機会がある時にでも俺に紹介してくれ。」
俺は大のめんどくさがりなのだ。
「では、あなたのことについてから話しますか。」
どうやら話しかけているのは長いライトグリーンな髪をなびかせた青年だったらしい。
_ミーハウ・ケル。約40億年前に5次元に現れた創造神である。そして5次元に存在する全存在を作り上げたとされている。
「待て待て。俺は3次元にいるんじゃないのかよ。」
説明がいきなりな上、内容が色々大きすぎてさらに困惑する。
「あなたの生きていた記憶だと4次元のお話になりますね。」
なんだかすごいうさんくさいお話だ。
「あなたの知っている世界では縦、横、奥行き、そして時間。この四つの方向を理解できる世界なのです。そして、この我々が存在する5次元は信じる存在を誰もが肉眼で見ることができるのです。」
青年はいちいち顔にかかる髪をたくし上げながら立て続けに説明を続ける。
「そしてミーハウ・ケルは、ここより低い次元を低次元の人の記憶にPOSSESSIONすることででほとんど生身の状態で干渉することができるのです。」
はえー。もしかして二次元いけるのかそれ。少し興味がわいた。
「その低次元人の記憶を司っているのがこの本の数々ですが、ミーハウ・ケルはあなたの記憶を寝相でぐちゃぐちゃにしてしまいました。」
大体現状を理解した、気がする。
「俺が変な超常現象に出会ったのはそれが原因か?これで辻褄が合うはずだが…。」
「おそらくその通りだと思われます。」
「じゃあなぜ俺の記憶がこのミー何とかって奴に移ったんだ?」
そういうと俺がまるでタブーに触れたように青年はいきなり顔を曇らせ、
「それは…わかりません。しかし、脳は同じはずですので何かしら思い出すこともあるかもしれません。」
と、答えた。なぜ表情が暗くなったのか、それはその場では理解できなかった。むしろ理解できる奴をエスパーと呼んで尊敬してやる。
「ちなみに私の名前は、アマテラス。どうぞお見知りおきを。」
_アマテラス。はるか昔、人々に大地を照らす守り神と呼ばれていた神。
4次元でも聞いたことのある名前だ。
「アマテラスって神の名前じゃないのか?」
驚きを隠せず思わず聞いた。
「私も神ですよ。私は5次元に住まう人々の安堵と秩序を見守っております。」
自慢のようにアマテラスは説明する。
「もしかして他の六人も、って他の方々はどこに行ったんだ」
気が付くと目の前の好青年以外いなくなっている。
「彼らも神としての役目があるのであなたの元気そうな顔を見てすぐに戻っていきましたよ。」
どこにいったんだ。そこを説明してくれ!そこを!しかし深追いするだけ覚えるのが大変だと思ったので、心にとどめておこう。やはり俺は面倒なことは嫌いなのだな。
「やはりみんな神なのか…そして俺も…。」
なんだかとてつもない責任をこの短時間で背負った気がするぞ…。どうすりゃいいんだ俺…。
「時間が来てしまいましたので質問タイムはここまで。私も見守らねばなりませんので、また後程。」
急にいなくなってしまった。
誰もいない。そもそもここがなんなのか聞かされていない。さらに俺が何をすればいいのかもわからない。どうしようもない。そんな時間が刻々と流れて…。
「なんでそんなに私のこと無視するんですかっ!そんなに私のこと嫌いなんですかぁ!?」
けたたましい叫びが後ろから聞こえる。
「なんで俺の後ろにいるんだよ。」
後ろを見上げるとピンクの人(略)が怒った顔をしてこちらを見ている。
「いくら呼び掛けても二人で仲良く私を無視していたではありませぬかぁ!!」
本当に影が薄いのだな。この人。それより名前を知らなければ、多人数になると話しにくくなってしまうので聞いてみる。
「名前はなんていうんだ?」
問うと彼女は笑顔で、
「私に名前はありませぬ。私はあなたの使い、いわゆる天使ちゃんですっ。」
と、誇らしげに答えた。別に誇らしげに言わなくてもいいんじゃないかと思ったが口にはださなかった。
「いちいち天使なんて呼びづらいな。」
「私に名前を付けてくださってもかまわないのですよ?」
名前か。影の薄い天使か。
「ウリエルでいんじゃねーか?」
「なんか適当に名前考えましたよね。それ」
適当に考えたのがばれ、視線を斜めにそらす。
「シーナっていうのはどうだ?」
やばい。もっと適当に言ってしまった。
「なんかかっこいい名前ですね!意味とかあるんですかっ?」
「頑張って仕事をすればそのうちわかるぞ!」
「わかりました!頑張りますね!!」
こいつ、チョロいな。そう思う俺に罪悪感を感じてしまった。そもそも仕事って何だろうな。
「よろしくな。シーナさん。」
「よろしくでございます!うれしくて興奮が収まりません!」
とてつもなく嬉しそうに跳ねている。一緒にあれが揺れているが目をそらさねば。
「そういえばここは5次元のどこなんだ?」
一番重要なことを忘れる前に聞けた自分に敬礼。そもそも宇宙とかいう空間を示す概念はあるのだろうか。
「ここは天領域です。みーちゃんがこの星に一番最初に作り上げたもので、人間さんからいうといわゆるプライベートと呼ばれるようなところですねっ。」
「星?ここは星なのか?」
思わず星という概念があることに驚いてしまった。どうやら宇宙らしいな。
「そうですっ。みーちゃんの誕生と同じくらいの時代に生まれた星で記憶を失う前のミーちゃんがこよなく愛していた地球と呼んでいた星です。」
「地球、なのか。」
「もし地球の姿が見たいのなら見せてあげますよっ。」
シーナは俺に物を教えることが楽しいのか知らないがテンションがとても高い。
「じ、じゃあみせてもらおっかな?」
テンションについてはいけないが情報を聞き出せるのでよかろう。シーナは胸ポケットのようなところからなにかを取り出した。
「じゃあこの石をもってテラスに飛びたいっ!って思いながらぶっ壊しちゃってくださいです!」
「お、おう。」
さきほどシーナがいなくなる時に割っていた水晶のような石だ。なぜ石なのか。
「そもそもテラスってどこだ。」
「テラスはテラスですよはやくぅ!」
ほんと会った時から思っているがうざったるく思えて来るなこの天使。まぁテラスにいきたいと思えばいいのだろう。先ほどシーナがやったように石を思いっきり叩いてみる。
「固っ!?」
びくともしない。キズ一つない上、簡単に割れそうにない。その上全力で叩いたため、手がとても痛い。痛すぎて涙が出そうだ。
「あっはははうひゅひひひひひw」
シーナがものすごくだらしない変な笑い声をシーナはあげている。まるでつぼの浅いお笑い番組を見ているおっさんのような笑い方だ。
「なんで笑うんだよ!」
「みーちゃんは筋力がないからそんなことしても壊れませんよw」
そう言いながらシーナはとても重そうなハンマーのようなものをいきなり召喚?し、
「これを使ってくださいませ!」
と、差し出してきた。馬鹿にするためにこんな茶番をしてたのか。本当に面倒のかかる天使だ。重そうなハンマーを手にしてみたが見た目に反し、とても軽い。軽いというか重さを感じない。原理を知ろうとしたところで無駄なようだった。
「そのハンマーはみーちゃんが作ってくださった重力に干渉されないハンマーなのです。無機物に触れた時のみ重力に干渉されますのでご注意ねがいますっ。」
小さい子に遊園地のアトラクションの乗り方を教えるお姉さんのような言い方に少し不機嫌になる。が、あまり子供のような反応をするとシーナの性格だとさらにいじってくるだろう。ここは我慢だ。
「なんというか複雑な性能を持っているんだな…。」
石を机に置いて、力の出せる限り思いっきり叩き、割った。すると、突然視界が暗くなりだんだんぼんやりと明るくなってきた。見えてくる光景に言葉を失ってしまった。
_天領域ははるか天空にあり、見下ろすと地図でよく見る地球があるのだ。ここはユーラシア大陸の上かな。後ろから不意に声が聞こえた。
「眺めはどうです?」
「地球だ…。」
思ったことをそのまま口に出す。
「次元は違えど存在する星に変わりはないのですよっ」
質問する前に言われてしまった。全く知らない世界に飛ばされるよりは少しでもなじみのある存在がある方が心が落ち着く。なんというか…そう家族。地球は俺の家族だ!何かおかしいが気にしない。
俺の記憶のあの本についてはどうなったんだろう。聞いてみる。
「そういえば俺の記憶がぐちゃぐちゃになっていたことにかなりの衝撃を受けていたように見えたが、もうその件については大丈夫なのか?」
「何のことですかっ?」
シーナは何の話をされているかわからないようだった。
「俺が寝ながらPOSSESSIONしてるとかなんとかって話だ」
そういうとシーナは全く気にしていないような顔をしながら、
「それがどうかしたんですかぁ?」
と、答えた。明らかにおかしい。あそこまで絶望した顔を見せたはずなのにとても明るい。いや、人の心理を決めつけるわけではないが。
あそこまで辛そうな顔をしているのを見れば誰だって辛いというのは理解できる。なぜ今まで表情が一変していることにきづかなかったのだ。一瞬にして身体の体温が冷えていくのを感じた。
「シーナ。俺はなぜ記憶を失ったんだ?」
俺自身が記憶をなくしたわけではないが、わかりやすいように聞く。するとシーナは突然アマテラスが顔を曇らせた時と同じような表情をし、
「私には…わかりませんよ…?」
とだけ答える。
「ミーハウになぜ宇佐美の記憶が上書きされたんだよ!?」
俺はとても焦っている。
…俺がシーナと出会ってすぐの時は様子からして俺の現状を理解しているようだった。
しかし今は違う。どう考えても何か隠している、または記憶を改ざんされているのか?思い込みだったらなぜあそこまで悲しい表情を見せたのかわからなくなってしまう。
「…天領域をもっと案内してくれないか?頭を冷やしたい。」
そういうと、シーナはこくっと頷き、黄色の石を取り出した。
もうちょっと文を読みやすく、表現を豊かにしたい。書き終わって思う今日この頃でございます。