弟と姉の冒険譚
「寒い!寒いったら!早く!」
「ちょっと待てって姉ちゃん。手がかじかんで小銭を入れられねえんだ」
口を閉じて集中し、自販機の小銭入れにお金を合わせようとする。
ーいつも決まって2人で帰る放課後。
俺は日直の仕事で帰るのが遅くなっていた。この冬の寒い中、玄関に立って待ってた姉ちゃん。
奢らないわけにはいかなかった。
だから、帰りに適当な自販機を見つけて今に至る。
「あっ」
油断したのか手から小銭がこぼれ落ち、側溝へと入る。
「「....」」
「悪い、これで金がなくなった」
俺は財布の中身を確認して言った。あれは大きな五百円玉だった。
「....拾うのよ」
「は!?」
姉ちゃんは側溝から目を逸らさなかった。
瞳がぎらついていて怖い。
「拾うよ!!」
「はい!」
あまりの姉ちゃんの迫力に俺は思わず返事を返してしまった。
すぐに行動に移る。姉ちゃんと思い側溝の蓋を上げて、横に置く。
意外と重いよな。
「弟、見つけた?」
姉ちゃんが屈みこみながら俺に聞いてくる。俺は側溝に目を凝らす。
暗い。もう6時だ。僅かな自販機の明かりでも側溝の底は見えなかった。側溝だけに。
それを察したのか姉ちゃんがスマホを出して底を照らしてくれた。
「あった」
スマホの光を反射して五百円玉が輝いている。
俺はそれに手を伸ばした。
「っ!?」
ふと、バランスを崩す。
「弟!?」
姉ちゃんが俺の腕を掴んだ。
大げさだな。片足が濡れるだけじゃん。すぐに地面だ。
そう思っていた俺を裏切るように足が空を切った。
「嘘だろ!?」
そう叫ぶも体は側溝へとどんどん落ちていく。姉ちゃんの手の温もりを感じながらも俺は思わず目を閉じた。
目を開ければ、そこは森だった。腕が重たいので見てみれば姉ちゃんが掴んでいた。
「姉ちゃん?」
姉ちゃんは気絶しているのか寝ているのか目は開かない。俺は静かに息を吸った。新鮮な空気が草の匂いに混じって肺を満たす。
....どこだ。
ここはどこなんだ。少なくとも俺達は普通に住宅街を歩いていた。森?そんなのが、俺の住んでいる地域にあるのか?いや、ない。っていうか、霧で奥までよく見えねえし。
「姉ちゃん」
「....弟。それは豆腐だ。粘土ではない」
俺の呼び掛けに姉ちゃんは寝言を返してくる。
っていうか何の夢見てるんだよ!俺何をやっているんだよ!
「姉ちゃん!」
「はいはい。紙飛行機はティッシュで作れないからね。そんなに必死に折っても折り目はつかないよ」
....だめだ。一体何の夢なんだ。
俺は姉ちゃんを起こすのを諦めて立ち上がった。問答無用で姉ちゃんの腕を剥がす。
「いった~」
そのお蔭でようやく姉ちゃんは目が覚めた。
「ちょっと何するの」
姉ちゃんは腕を擦りながら俺を睨んだ。
「姉ちゃんが起きてくれないんだろ」
俺は溜息を吐いた。俺の態度が気に入らないんだか姉ちゃんが俺を睨みながら拳を奮ってきた。俺はなんとか避けて拳の行き先を見送る。
パーン!
なんということだ。俺の後ろにあった木の幹が大砲をぶつけられたように弾けた。そして、その後もまた。....その後も。永遠に続くかのように木の破裂音が静かにこだました。
「....姉ちゃん?」
「....何?」
「今のは姉ちゃんが?」
姉ちゃんを見れば姉ちゃんは顔を青くして木の残骸を見ていた。
「き、気のせいよ」
いや、誤魔化せないだろ。
心の中で突っ込みながらも平静を装って姉ちゃんに続ける。
「試しにさ、あの木をもう1回殴ってみてよ」
「嫌だ!」
姉ちゃんは顔を顰めてそっぽを向いた。その時に俺の顔に姉ちゃんのポニーテールがびしりと当たって少し痛かったのはキニシナイ。こうなったら賭けをするしかない。
「姉ちゃん....。このままだと、ゴリラだよな」
「ふっざけんな!!」
姉ちゃんの拳を間一髪避ける。
ふぃー。死ぬかと思った。姉ちゃんの拳が別の木に当たる。
パーン!
強烈な破裂音を残して、木が木っ端微塵になる。俺はそれを冷めた目で見つめた。ふと、視線を戻せば姉ちゃんの肩が震えていた。
「弟....」
なんかやばい気がする。俺は少し後ずさった。
「引っ掛けたなぁ!」
姉ちゃんが地団駄を踏んだ。ドスドスドス。
姉ちゃんの足に合わせて、地面が....いや、惑星が揺れる。幸い、姉ちゃんが足を踏んだ地面は圧縮されたが、30センチ沈んだくらいだ。俺は振動で口を開けない。
「ね、ね、ね、姉ちゃんんんん....」
姉ちゃんがようやくそこで地団駄をやめた。
「なによ」
俺は満面の笑みで親指を立てた。
「きっとチートだね(キラッ)」
「ふざけるな!」
姉ちゃんが俺の肩を揺らす。おおっふ。ぐわんぐわんするっ。
「ま、ま、魔法とかはどぅぅなるのっさっ!」
なんとか頭が揺れる中、話す。
「あら、魔法....。面白そうね」
姉ちゃんがようやく手を離す。俺は力が抜けて地面に尻餅をついた。気持ち悪い....。
「炎よ!」
姉ちゃんがそう言って、人差し指を天に突き出し、木へと振った。赤い何かが、ミサイルのように飛んでいき、火が着火した。
ブオオオオオオオオ!
「「....」」
着火した火は火柱のように大きくなり、天へと竜巻を作った。っていうか、熱い。火の粉がこっちにも飛んでくる。姉ちゃんは口を開けてそれを見つめている。あまりの衝撃に俺は酔いが覚めた。
「姉ちゃん....」
「はい」
「自重しようか」
「はい、すみませんでした」
姉ちゃんがそう言って、静かに正座をした。俺の視界の端を火の粉が舞っている。
「とりあえず....消そうか?」
「弟。それはあんたがやってみてよ」
....姉ちゃんはそう言って力なく地面を見つめている。俺にどうしろと。
俺は仕方なく姉ちゃんの真似をして、
「水よ」
と言って、人差し指を振った。シャボン玉が現れてふわふわと火の方へと飛んでいく。なんか、可愛かった。
しかし、次の瞬間、炎に呑まれ、蒸発した。
姉ちゃんが可哀想なものを見る目で俺を見つめた。そして、ため息をつきながら、俺の肩に手を軽く乗せた。
「なんか、ごめんね」
酷く上から目線だった。
「水よ」
姉ちゃんがそう言って、手を振った。そうすると、ミサイルのように水が飛んでいき、火に着水した。
ブルジョワー!
凄まじい音を立て、水が天から降ってきた。雨じゃない。濁流だ。そして、俺達を巻き込んで....。
「手!」
姉ちゃんの声に手を伸ばす。俺達は水の流れに身を任せて、流された。
「....ここは?」
姉ちゃんに話しかけるが、姉ちゃんはまたしても気絶していた。いや、寝てるのか?
「姉ちゃん?」
「誰がこの書類やったと思ってるのよ!ムキー!生徒会、滅びろ!」
「....姉ちゃん?」
「今の私なら、奴らを殺れる。さあ、生徒会。鬼ごっこの時間よ!」
このやりとり、飽きたぞ。っていうか姉ちゃんは生徒会によっぽどの恨みがあるようだ。確かに、姉ちゃん、押し付けられてたよな。書類の山を。
「姉ちゃん!」
そこで、俺の腕が掴まれる。
「つっかまえた!」
そこで姉ちゃんが起きた。
「ちっ、弟か....。生徒会め。どこ消えやがった」
「姉ちゃん。言葉遣いが」
「あっごめんね。所でここは?」
「森の外じゃない?」
俺達2人はびしょびしょになって、森の外に出ていた。少し、目を凝らせば、人工の建物がいくつか見える。
「あれ、なんか転がってる」
姉ちゃんがそう言って指を指したのはライオンみたいななにかだった。
「....キメラ?」
「よくわからないからさ、持ってこう。こういうのは金になるっていうじゃん」
そう言って、姉ちゃんはキメラの足を一本掴み、引き摺り始める。少女が巨大なライオンを引きずるなんてなんかおかしい....。
だんだんと建物が視界へと入ってくる。
「思ったんだけどさ、どうやって帰るの?」
姉ちゃんが急に話を振ってきた。
「どうって....それは探すしかないんじゃないのか?方法を」
「くっ、たかが五百円に欲張ったのが悔やまれる。お家に帰りたい」
そんな風に言える時点で呑気だよな、姉ちゃんは。
「ほんとだな。五百円を拾わなきゃここには来てないよ」
「私が先に帰ってたら、弟だけこっちに来ていたんじゃない?で、このパワーは弟のものだった」
何気に姉ちゃんはこの力が嫌らしい。まあ、確かに張り手されたら、視界から消えるよな。もしかして一周して戻ってくるかもな。
「止まれ!そこの者!」
姉ちゃんと話していれば、声が聞こえた。
「門番さんかね」
姉ちゃんはノー天気にそう言って止まった。気づけばもう目の前は門だった。
「失礼、どこから来た?」
門番はそう言って俺達をジロジロと見た。
「見たことない服だが....」
そこで俺達は制服のままだと初めて気づいた俺。この門番の服装を見る限り中世ヨーロッパの服装が主流なのではないだろうか。俺達は、紺色のブレザーを着ている。姉ちゃんに至ってはミニスカだ。
「私たちはあっちの方から来ました!」
姉ちゃんがそう言って歩いてきた道を指す。
「あっち....なんか火柱が上がったり、濁流が降ってたりして、地鳴りがしたんだが、何か知らないか?」
「「知りません」」
俺達はしれっと嘘をついた。この門番....鋭いな。
「そうか。手持ちのそれは何だ?」
門番が姉ちゃんの持つキメラ?を指す。
「これ?落ちてた」
姉ちゃんが門番にキメラを差し出した。門番がびっくりして口をパクパクさせた。
「それは、キンググリアントキメラではないか!守りの森の主だぞ!」
ん?なにそれ....。
姉ちゃんも同様なのか首をかしげている。
「売れないんですか?」
「売ってくれるのか?」
門番は前のめりで聞いてくる。
「どうぞ....」
「っと言われても、そういう買取はギルドでやってくれ。とりあえず、中に入れ」
....あれ?あっさり過ぎないか?
「いいんですか?」
俺はそう思って聞いた。
「この主を狩ったんだ。英雄だ」
いやいや、死んでただけだって。心の中で突っ込みながら、俺達は門を通った。
「あっすいません。ギルドはどこですか?」
「赤い屋根、看板はばってん印の大きな建物だ」
姉ちゃんの声かけに門番は律儀に答えてくれた。俺達は会釈して背を向けた。
街は中世ヨーロッパっぽかった。石で積んだ建物や、広場のようなところの中心に噴水。教会っぽいのもあった。服装も中世ヨーロッパだ。すれ違う人が時々こっちを見つめている気がするが服が目立っているからだろう。たまに、顔が赤い少女とかいるが、風邪なのだろうか?
「おっ、あったよ。ここだね」
姉ちゃんが目ざとくギルドを見つけた。門番の通りに赤い屋根、ばってん印の大きな建物であった。
俺達は扉を開けて中へ入る。
すると視線が一気に集まってきた。
「見られてるね〜」
姉ちゃんは呑気にそう言って歩き始める。ギルドの中は割と清潔であり、役所みたいだ。目の前にカウンターがあり、脇には小さいテーブルがいくつかあり、人がちらほら座ってこっちを見ている。腰に剣があり、鎧を着ているような人もいるから、冒険者みたいな人だろうか。
「えっと、お客様?そちらのは…」
慌ててカウンターから女の人が飛び出してきた。ボブヘアーにメガネ。ブレザーのようなものを着ていて、耳がとんがっている。
…ん?とんがっている?
俺は思わずまじまじと耳を見てしまった。姉ちゃんも同じ反応のようだ。女の人もそれに気づいたのか、顔を赤くした。
「見ての通りエルフです」
お、おお。やっぱりそうなのか。女の人は俺をちらりと見てさらに顔を赤くした。なんだよ。男に見られるのが恥ずかしいのか?
「あっそうだ。あの、これ」
姉ちゃんが思い出したようにキンググリアントキメラを差し出す。すると、周囲がざわついた。
「なっ、キンググリアントキメラ!?」
女の人も叫んだ。
「これをどこで…」
「「落ちてた」」
俺と姉ちゃんは異口同音に言った。
「落ち…」
女の人は恐る恐るキング…めんどくさいからライオンキメラを受け取った。
が、重かったらしい。頑張って引っ張るも虚しく1ミリも動かなかった。姉ちゃん…馬鹿力だな。
「変なこと思ってないよね?弟」
「いえ、全く」
姉ちゃん、恐ろし。
結局、ライオンキメラは近くにいた冒険者5人がかりでなんとか運べた。
「えっと、どのランクの冒険者ですか?」
気を取り直して女の人にカウンターへと連れられ聞かれる。
「いえ、冒険者じゃないです」
姉ちゃんの言葉に口をポカンと女の人は開けた。
「えっと…」
「冒険者になりたいんですけど」
姉ちゃんが不安げに俺を見たので俺はそう言った。女の人は顔をまた赤くした。
男性恐怖症か?そんなんで受付なんて務まるのかよ。俺が若干苛立った気持ちでいると女の人が口を開いた。
「では、名前と出身を教えてください」
「「!?」」
俺たちは顔を見合わせた。アイコンタクトでお互い会話する。そして、頷く。
「私はアネです。出身は辺境ですので、地名とか知りません」
「同じくオトウトです」
「えっと、アネさんとオトウトさん、ですね?出身は辺境っと。了解しました。では、ここに手を当ててください」
女の人はカウンターの下から白い四角い物体を取り出した。小箱みたいで、真ん中あたりに円が描かれている。嘘発見器とかじゃないよな?
姉ちゃんは恐る恐る手を当てた。すると、円が輝き始め、箱からカードが出てきた。女の人はそれを確認してから姉ちゃんに渡す。
「おおお…」
姉ちゃんは感心したように声を出した。俺はそれを横目で見ながら手を小箱に当てる。またもや円が輝き、カードが出てきた。女の人はそれを確認し、俺に渡そうとする。俺はそれを受け取ろうと手を伸ばすと寸前で引っ込められた。
「あの…」
真っ赤な顔で上目遣いで俺を見てくる。次の瞬間俺は固まった。
「そちらの方は彼女ですか?」
「はい?」
思わず声を上げたのは姉ちゃんだ。何言ってんだこいつという目で女の人を見ている。
「違う」
姉ちゃんが低い声でそう言った。その声から怒気を察したのか慌てて女の人は俺の方を見た。
「えっと、そのひ、一目惚れです!付き合ってください!」
あまりの声の大きさに周囲がざわついた。
なんだ、これ。公開処刑とか?
言っておくが、俺は今まで告白の類を一切受けたことがない。恋愛なんて初心者マークが付いている。そんな俺が公の場で姉の隣で告白を受ける。嬉しいよりも恥ずかしさが強いのはしょうがないはずだ。
「えっと、その…」
俺はどもる。なんて言えばいいのかわからない。お互いよく知らないのでとか?
「それ、ちょっと待った〜!」
空気を読まない姉ちゃんが今は嬉しかった。
「弟と付き合うなら私を倒してからにしなさい。私を倒したものが弟と付き合うのよ!」
姉ちゃんがそう高らかに宣言した。
いやいや待て待て。どうしてそうなった。姉ちゃん!そこは、断るとか何か言ってくれよ。…でも、それはナイスアイデアではないか?今の姉ちゃんはチートだ。その姉ちゃんをやっつけるなんて神ぐらいにしかできないんじゃないのか?まして、この女の人だなんて。
姉ちゃんの強さを知らない女の人はカウンターから身を乗り出し、腰からナイフを抜いて言った。
「いいですよ。やりましょう」
その前に俺のギルドカードをくれ。
場は変わってギルドの訓練場。カウンターの後ろの扉からここへ通じるらしい。結構広い間取りでこれなら姉ちゃんも安心なはずである。そして、溢れるギャラリー。祭り事のようにみんな賭けをしている。
「よし、始めましょう」
「ちょっと待った!」
姉ちゃんの声に違う女の人の声が割り込む。見れば、斧を背負う女の人である。頭に兜を乗せ、金色の髪が背まで伸びている。
「その勝負、私も混ぜてもらおうか」
「へっ?」
姉ちゃんが俺の気持ちを代弁するように素っ頓狂な声を上げる。
「まあ、別にいいけど…」
姉ちゃんがそう言えば、嬉しそうに俺に女の人はウインクした。
「一目見たときから私のダーリンだと思ったの」
…嬉しいような、おかしいような複雑な気持ちだ。
「待って!私もよ!」
「私も混ぜなさいよ!」
なぜか次々と手を挙げ、バトルに参加しようとする女の人達。
なぜだ…。なにか祭りと勘違いしてないか?姉ちゃんと戦いたくて…とか。
「私達もあなたには目をつけてたんだから」
俺に答えるように1人の女の子が言った。
嘘だろ…。街で何かのドッキリでもしているのか。
「モテモテだな、兄ちゃん」
隣の男の人がニコニコしながら俺の肩を叩いた。それから思い出したように袋を俺に渡してきた。
「ほい。キメラの買い取り量だ。50万」
袋を受け取るとずっしりとして時折ジャラリと音が鳴る。
「ありがとうございます」
俺はお礼を言って、袋を抱える。既に姉ちゃんVS女の人達という戦いが始まっている。わらわらという女の人達。姉ちゃんが前髪をかきながらめんどくさい!と叫んでいる。
「もうさ、一発でいいよね」
俺に向かってそう言って、指を掲げた。
「衝撃波!」
地面へ声とともに指を向ければドゴッという音がして地面の土が吹き飛んだ。
きゃー!という女の人達の声が聞こえる。
「弟、行きましょう」
姉ちゃんがそう言って、いつの間にか手に入れていた俺のギルドカードを俺に渡した。俺は姉ちゃんの後を付いてギルドを後にする。
しばらくして、街の大通りに着いた。なぜか、女子に囲まれる。
「あの、好きです!」
「付き合ってください!」
などの声が聞こえるが、姉ちゃんに引っ張られスルーする。俺たちは急ぎ足で街を出た。
はあ…。さすがに疲れた。
門番に挨拶して街を出て、5分ほど歩き、草原で俺たちは座り込んだ。
「恐らくだけど」
姉ちゃんがそう言って俺を見た。
「弟は魅了かなんかの類を持ってるんじゃない?私の…強さみたいに」
姉ちゃんの言葉に俺はゾッとした。
まさか…。異様に告白されたのは何かチートな力の一つなのか?
そして一つの可能性に思い至る。
それは…街に入るたびに女の人達に絡まれるということだ。俺は姉ちゃんしか女子免疫ない。つまり、死亡フラグだ。
「弟はイケメンだからしょうがないね」
姉ちゃんはカラカラと笑った。イケメンは嬉しいかもだけど、俺にとっては死活問題だ。女子にコミュ症が発動するんだから。俺がその意味を持って姉ちゃんを睨むと姉ちゃんは微笑んだ。
「安心しなよ。私が守ってやるからさ」
…どうしよう。姉ちゃんがイケメンだ。
「まずは、帰る方法を考えていこう。簡単なのは魔王討伐かね〜」
「そうだな」
とりあえず俺は笑顔で答える。姉ちゃんは驚いたような顔をしたけどすぐ様笑った。
「よし、行くか!」
姉ちゃんの声で俺は立ち上がる。
「どう行くの?」
「決まってる。勘でしょ」
「…不安だ」
「ひとまず、どっか洞窟とか探してみるか」
「結局街に入らなきゃいけないんだろ」
「よし、どっか適当に歩いて街とか見つけたら、私がマントでも買ってきて上げる」
「それが無難だね」
俺たちは歩き始める。これは俺たちが無事に魔王を倒していくまでの冒険の話だ。
読んでいただきありがとうございます。
こういう面白い系を1度書いてみたかったので書けてよかったです!
感想はできれば丸く書いてくださると嬉しいです。もらえるかわかりませんが(笑)
ちなみにティッシュで紙ヒコーキを作ろうとしたことはあります。できませんでした。