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私は何も信念を持って、お一人様街道を邁進していたのではない。ただただタイミングが悪かったとしか言いようかない。
初恋は中学生3年生の頃、友人に無理矢理連れていかれたサッカーの練習試合で人より多く動き、コートの中誰よりも輝いていたキャプテンの木村くん。人より少し遅かった初恋は、どうすることもできずただ幼なじみの由美に相談して終わった。
由美は私に、玲奈は残念美人だねっ!と言っていた。そんな由美は高校卒業と同時に当時付き合ってた彼氏と結婚し、今では二児の母だ。彼女は私の面倒をよく見てくれていたので、そんな彼女の旦那や子供達幸せ者だろう。
面倒を見てくれていたと言えば、相談を受けて何も行動しないことに焦れて、私に代わり木村くんにいっぱいアピールしてくれた。
よく二人で楽しそうに話してるなぁとは思ったけど、雪の降る寒い寒い日、二人が手を繋いでいるところにバッタリ会って由美は泣きながら『ごめんなさい!ダメって玲奈がいるから好きになるの止めようとしたけど…諦めきれなかった!』と言われ、木村くんには『由美は悪くない…俺が悪いんだ!溝口にアピールしてみたけど全然気づいてくれなくて、側で応援してくれた由美に惹かれて…。』って、何で告白してないのに私振られたんだろう?
ん?由美の結婚報告のハガキに、中学から付き合ってた人って書いてたな?返信しようと名字を確認したら、木村って書いてたな…?
あ、そうか!ゲームのヒロイン補正だ!私が誰とも付き合えなかったのは。だいたいヒロインって純真無垢ってのが相場だもんね!私が悪いんじゃない、世界の強制力が悪いんだ!
そこっ!私が泣いてないのに泣くんじゃない!
「…あいたっ。」
「集中してないと馬から落ちるぞ。何、考えごとしてんだよ?もーすぐ着くぜ。ここで足りないもの買い足すぞ。」
ぐるぐるしてた私の頭をパコンと軽く叩き、顎でクイッと城下町を差した。
いや、違うんです。さっきから当たるんです。初めての異性との密着…私…知らなかった…。こんな気持ちになるなんて…。
頭にチクチクひげが刺さるよー。余計なこと考えてないと無駄にドキドキしちゃうよー。すぐ後ろに男の人って慣れてないんだよー。
相手は私のこと、NHKの『お母さんと一生いっしょ!』のお便りコーナー投稿作品レベルにしか見てないのに。
なんか悔しい…。後でエースさんのブーツの紐堅結びにしてやろ。
「おら、着いたぜ。」
わぁー。私はその景色を見てとても感動した。異世界ぱねぇ。王宮はテレビでよく見掛けたベルバラ宮殿に近かったし、スチルでも見たことかあったのでそこまで違和感はなかったけど、城下町は多種多様な人種が雑多に集まり活気に満ちたものだった。
地面は石畳のなぜかオレンジ色で、建物は煉瓦を積み重ねた二階建てが多く、メイン道路は車2台くらい通れる広さで軒先には数々の露店や屋台があった。あ、あの鳥の丸焼き旨そう…。何の鳥だろ?頭に角が生えてるけど…?後で誰かに奢らせよう。
馬は一旦宿屋に預け私達は、街に繰り出す。さっきまでの反動か私は刷り込まれたヒヨコのごとくエースさんにピヨピヨ着いていこうとしたが、クリスティーナに腕を捕まれた。
「玲奈様は私とご一緒しましょう?」
私の護衛達はクリスティーナならば城下町内では安全だろうと蜘蛛の子を散らすように去って行き、旧攻略対象者達は着いてきたがったが、クリスティーナの
「まぁ、レディのお買い物、しかも旅に必要なものですわよ?無粋なことはなさらないで。」
と一蹴され、すごすご去っていった。
「ウフフ、この時を待っていましたの…。」
クリスティーナの目が妖しく光る。百合ルート再び!?お手柔らかにお願いします…。
初投稿、見切り発車…落とし所がわからない。
平日は投稿が1話になるかもしれません…すいません。