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波平さんの頭皮を心配して心を彼方に飛ばしていましたが、ニュー攻略者は後1人残っていました。
冒険者エース様!黒の無造作ヘアを後ろで一本に結び、薄く生えた無精髭がいい意味でくたびれた感じを醸し出す30歳前後のナイスミドル。
さぁ、地獄にもたらされた救いの糸よ!私をヘブンに連れてって!
「あぁ、よろしく!しかし…」
えっ!何々?この世界来て初めての熱いし・せ・ん…そんなとこ見られたら、ドキがムネムネしちゃう!私と一緒にヘブンにゴーするの?やだ、私ったら会ったばかりで(汗)おバカさん!
「クリスティーナのお嬢ちゃんと比べたら、月とすっぽんだなぁ!特に胸の辺りなんかもうちっと肉つけないとまな板に干し葡萄か!いや、顔はそこそこ可愛いいぜ?クリスティーナのお嬢ちゃんと比べたら有名絵画と子供の落書きくらいの開きがあるがな!はははっ!」
…王宮人事の電話番号聞くの忘れてたな。あ、オージンジオージンジでいいか。スマホの電波あるかなー?
私ったら本当にお・バ・カさん、わかってたじゃない?地獄にたらされる糸は途中でぷっつんしちゃう蜘蛛の糸だって…。そうでしょ?あんな…ブーツ脱いだら、蒸れた納豆みたいな匂いがしそうな男に期待するなんて…、ホント玲奈のおバカさん!
でも、私は何かと比較される高スペック、軽くチートなクリスティーナを恨んだりなんかしない。恨むなんて底辺の女がする事でしょ?ヒロインはそんなことしない!すべての恋愛エンドがライバルに潰されそうになっても私はまだ這い上がれる!
だって…
クリスティーナとの友情エンド残ってるよね?
少し身震いして、左右を確認したクリスティーナだが、気を取り直し手を叩く。
「さぁ皆様、挨拶も終わりましたし、封印を少しでも早く解くため出発いたしましょう?不詳クリスティーナこの時のために色々調査や準備を行ってきたので、すぐ出発しても問題ありませんわ。玲奈様も大丈夫そうですし。」
そんな心配そうな顔しなくても大丈夫だよ、友情エンド残ってなくても帰るためそこそこ頑張るよ…原作には貴女との友情エンドなかったけど…でも、あるって信じた方がモチベーションが変わるじゃん?
準備も整っているみたいで、出発する事になったが、事態を揺るがすほどの大問題が発生した。そう、これはゲームではない、現実だ。私はいたく痛感する事になった。
馬になんか乗れません。
ゲームだったらスイッチ1つで目的地じゃーん。あー、挫折感半端ないー。やる気が削がれたー。明日からはやる気出すからさー。今日まで準備期間にしようよー。
軽くチート女は無論、王宮に勤める彼らは馬に乗れるか否かも重要な資格になるらしい。
だいたい魔導師いるなら、パパッと目的地まで飛んで行けないのー?って聞いてみると今は悪の力が強く条件的に厳しいとのこと。
皆は馬に荷物をくくりつけ、着々と準備を進めているが、私はというと厩舎の前で膝を抱えた格好で、ウダウダイジイジしていると、足臭セクハラ男が大きな青毛の馬上から私を見下し
「なんだ嬢ちゃん、馬にも乗れねーのか。しょうがないなぁ。ホレッ。」
と手を掴み、引っ張り上げ私を自分の前に座らせてくれた。
高い!怖い!後ろのセクハラ男が近い!
「ん?体が固いな?大丈夫、俺の腕は一流だ。心配するな怖くないから。」
「は、はぁ。いや、怖いんですけど…そうじゃなくて…」
顔が赤くなってるのバレなくて良かった…うぅ。男の人がこんなに密着するの中学生の頃、別の女と間違えられ抱きつかれたあの日以来なんです。クラス一番のお調子者の鈴木くん…妹と間違えた!って言ってだけど…ホントは彼女と間違えた!だろ?女子の情報網ナメるな!私のトキメキ返せっ!
えっ?お一人様歴は年齢イコールですが、何か?
「じゃあ照れてんのか?それこそ大丈夫だ。俺の好みは出るとこでて、引っ込むとこはキュッとしたクリスティーナの嬢ちゃんみたいな女だからな!安心しな!」
足臭セクハラオヤジはアハハと笑った。それを聞いた私は、顔が菩薩になりましたとさ…。
よーし、判った。喧嘩を売られているな、買ってやる!私の封印されし暗黒の右腕がウズいていやがる!ちくしょう!だが、右腕の封印解いたらこの世界簡単に滅亡しちゃうから、今日は止めといてやる。うん。
その様子を微笑ましそうに見ていたモブリオンは
「では、聖女様はエース様にお任せするということで大丈夫ですか?」
「あぁ、俺のは軍用馬だからな。嬢ちゃん1人乗ったぐらいじゃ速さは変わらねぇ。だが、嬢ちゃんの荷物を分けて持って貰いてぇな。」
「分かりました。では荷物は私が…」
うぅ、お荷物ですいません。モブリオンさん、それに…ま、まぁ。あんたにも一応感謝してあげるわよ。
「あ、ありがとうございます。モブリオンさん、エースさん。」
と素直にお礼を言ったが
「お礼なら、体での方がいいな!あ、もうちっと胸が成長しないと貰いがいがないな!」
そしてまたまたアハハって笑っていた。前言撤回。やっぱり右腕の封印を解いてやる!






