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はーい、みなさんこんにちはー。新しいジャンル開拓中のモブ女ヒロイン玲奈だよー。
若干キャラ崩壊しかけてるけど、しょうがないよね?目前で美男美女の愛憎劇見せられてたら…。ちょっとおかしくなってもしょうがないよね?
よしっ!私は平常運転モード。
「せ、聖女様、ここでこんなことしててもお話は進みませんわ!王に謁見いたしましょう。」
クリスティーナは攻略者達からなんとか逃れ、床にのの字を書いて頭にキノコを生やしていた私に近づき、手を取った。
王に謁見するため侍女に指示を出すが、その間私の手をずっと握り攻略者達から距離を取っている…。
私はぬり壁ではない。だいたい絶世の美少女だかなんだか知らんが、ゲーム初っぱなから邪魔され私は少々ご立腹なのだ。やけっぱちなのだ。
これから恋に落ちるかもという攻略者達に無視され、さらには私の側に立ちびくびくしている彼女のせいで彼らに睨まれている。美形の怒気をはらんだ顔ってこわっ。もぅ、この時点で私のメンタルはだいぶ削れている。
それもこれもこの勘違い自称悪役令嬢のせいなのだ!私が彼女をかばう理由なんてなにもない!それどころか彼らに売ってもいいのだ!
握られた手を外そうと、捕まれていない左手を彼女の手に重ねると彼女はビクッと私を上目遣いに見つめる…
私は攻略対象者達を、目前にすえ、彼女を
「貴方達はなにをしているの?クリスティーナが怯えているじゃない!私が口を出すことではないかもしれないけど、女性を口説くなら相手の気持ちをキチンと考えなさい!」
かばったー、はい、美少女、かばいましたー。
こんなふるふるして上目遣いに見つめる美少女売るなんてできるわけない。
攻略対象者達は驚きの表情を浮かべ、クリスティーナは目がこぼれ落ちるかと思われるくらいは大きく開き、少し涙で潤んだ瞳を私に向けた。
「せ、聖女様…。」
私は彼女を安心させるため、わかってるよーと言う感じで頷くと彼女の両手を握り
「大丈夫、私に任せて?それに聖女様じゃなくて玲奈って呼んで?
もしくは『おねぇちゃん』でも…ううん、是非、『おねぇちゃん』って呼んで?」
あ、クリスティーナが全力で私の手を振りほどき反対側の壁に…
「冗談だよ?…ほら、怖くない…」
両手を広げ、クリスティーナにじりじり迫る私、逃げようと後ろ手にドアノブを探すクリスティーナ。私を退治しようと剣や杖に手を掛ける攻略者達。
一気にこの場は、ラストステージっぽくなる。もちろん魔王役は私。
緊張を破るかのように、ノックが聞こえ侍女から声がかかる
「クリスティーナ様、聖女様、謁見の間にお越し下さい。」
ちっと舌打ちをする私。
「この場は一旦、終わりにしましょう?」
私は颯爽と侍女の後ろについて行き、はっ!と気がついたかのように一歩遅れてクリスティーナが歩みよる。
「クリスティーナ、一緒に頑張りましょう?」
彼女はびっくりした顔を一瞬浮かべ、満面の笑みで
「はいっ」
と答えた。
大丈夫、先に封印なんとかしちゃうから。その後、おねぇちゃんと着せ替えごっこしようね?
ご注文繰り返します。クリスティーナとドレスと装飾品一式ですね?ご一緒に攻略対象者達いかがですか?
攻略対象者達は要りません。はい、日本までお持ち帰りで!