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朝起きると私はどこにいるのか、一瞬わからなくなった。いつも朝起きて見てた白い天井じゃない…馴染みのない木の天井…電気もついてない…。


あぁ、ここは異世界だった…。


窓から日が差し込み朝というにはちょっと遅い時間だと知る。


この世界、元はゲームなだけあって1日24時間の暦は日本と同じで今は4月。大体1年で封印を解き終わる設定だった。


後1年か…うぅん、クリスティーナが頑張ってたからそれよりは早く帰れるかも…。


私は手早く着替え、洗面器に入れられた水で顔を洗い軽く化粧をして一階の食堂に降りていく。


皆は朝食が済んでいるみたいで、コーヒーをすすっているモブリオンしかいなかった。


「おはようございます。すいません、寝坊しちゃって…。」


「おはようございます。大丈夫ですよ、慣れない旅をして昨日は魔獣の浄化まで行ったんですから。それより体調は?体におかしなところはありませんか?」


言いたい…言ってしまいたい…。


自分で騎乗してないとは言え、初めての馬旅…腿の付け根がめちゃくちゃ痛いのだ…。


でも、こんなことで泣き言もなー、何日かしたら慣れるかなー?


「大丈夫ですよ。それより他の皆は?」


モブリオンはふわりと笑った。


「それは良かったです。皆は朝の鍛練や買い出し、情報収集を行っていますよ。」


ほっこり。そんな顔されると暖かい気持ちになるなぁー。はっ!ダメ!不倫ダメ!絶対!


「お、嬢ちゃん起きたのか?」


茶色の紙袋を抱えたエースがちょっと古びた大きな木の扉を開け入ってきた。そして、紙袋をごそごそ何かを探し出すと私に放り投げてきた。


「体、キツいだろ?それ塗っときな。」


「あ、ありがとうございます…。」


パシッと両手で受け止めるとケースに入った、半透明の液体…何だろう?


「エースさん、これって…あれ?」


顔を上げるとエースはおらず、二階に昇る足音だけ聞こえて私の頭ははてなマークの嵐。するとモブリオンが後ろから覗きこんできて


「それ、ハッカ油ですね。筋肉痛なんかに効きますよ。」


ああ、湿布の液体バージョンなのかな?後で塗ろー。


ってか、やだ!エースってば私のこといろいろ気にかけて!もしかしてホの字じゃないの?私ったら罪つくりなお・ん・な!


すると二階から顔を出したエースが


「嬢ちゃん、後でいいから銀貨一枚な~。」


ぶれない人!はーい。といい子のお返事し、ごちそうさまと席をたち支払いをしようと二階のエースの部屋に行くと、上半身裸の変態が!


悲鳴をあげそうになるが、その背中の傷を見て思わず息を飲んだ。右肩から左脇腹にかけて一直線の刀傷が…。私の気配に気付いたエースは何時ものハツラツとした笑顔でなくちょっと疲れた笑顔を浮かべた。


「なんだ、堂々と覗きか?イロケがね~な。」


「す、すいません。お金を持って来たんですけど…その傷…」


白のシャツを乱暴に着て、ドカリとベッドに座る。その横を座れと促すかのように叩く。


私はおずおずと横に腰掛け、とつとつ語り出す彼の話を聞いた。


今から8年前の彼がまだ駆け出しの冒険者だった15、6のころ、同じくらいのレベルの人と四人でパーティーを組み様々な依頼をこなしていた。


ある程度成功報酬を貰い、新人冒険者の看板が外れそうなころ少し上のレベルの依頼が舞い込んできた。


エースは同じパーティーのラティスという魔導士に淡い思いを抱いていたのだが、かっこつけようと皆の反対をなんとか説得しその依頼を受けた。ある有名な盗賊団に狙われている豪商の護衛。


行程は終盤に差し掛かり盗賊団も現れず、順調そうに見えたその依頼も盗賊団を手引きする仲間の裏切りにより、激しい戦闘となる。


その際、大技を放とうと呪文を詠唱するラティスに斬りかかる元仲間から庇おうとしてついた傷だそうだ。


ラティスの魔法が決まり、軽い傷を追った者は出たものの、辛くも盗賊団から逃げ切ったが、心に傷をおった皆はひとり、二人と冒険者をやめてしまった。



それ以降パーティーは解散し、エースは贖罪のためソロで冒険者であり続ける決意をした。


その告白を聞いた私は、その驚愕の事実にうち震えていた…





8年前が15、6って今23、4?えっ?見えなーい。マジか!?私とあんまり変わんないじゃん。


異世界の人ってフケて見えるの~???


私がぐるぐる考えているのを見て、


「すまんな、平和な世界で暮らしていたお前さんにはこんな話ちょっとキツかったか?なんとなく話したくなってな、聞いてくれてありがとうよ。」


「あ、いぇ、戦闘とか盗賊団とか余り馴染みのないことなんで大変だったんだろうなって思うしかできないんですが…。」


チラリとエースを見ると、うん?と話を続けろと目線で合図される。


「エースさんは優しいなぁって…こんな人が仲間だったら私は安心しますけどねー。だって死ぬかもしれないのに自分の身を呈して人助けることなんてなかなかできないですよー。」


「そういや、さんざんあいつらには言われたな…『冒険者やめるのは俺たちが合わなかっただけで、お前が気負うことはない』って…。」


エースはふっと笑って、その顔に私はドキリとした。


「ありがとうな嬢ちゃん…いや、玲奈、8年かかったがちょっと心の整理が付きそうだ。」


うん、よくわかんないけど笑顔になって良かったです。

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