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エターナリア  作者: たつみ暁
番外編『それぞれの想い』
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番外編8『彼女への手紙』

 秘めたる思慕を、指先に込めて。


「こんにちは、お久しぶりです。

 レジェント王とエリサ姫の結婚式でお会いして以来の連絡となりますが、お元気ですか。

 そちらは、紅葉が美しい頃だと思われます。

 オルトバルスはダイアムよりも日々の気温変化が激しいので、風邪などひかれぬよう、お気をつけてお過ごしください。


 私は、少し寝不足気味な以外はいたって元気です。社長に就任してから、忙しいながらも充実した日々を送っております。


 ガゼルでは、今年も収穫祭が行われました。

 世界各地から、様々な人や物だけでなく、アストラルの皆さんも集まってくださいました。

 去年は開催を見送られた狩猟会も、街の人達からの熱い要望があって、復活と相成りました。

 人間とアストラルが入り乱れて、フタツノブタの角を奪い合う狩猟会は、大盛り上がり。大怪我をするひともひとりも無く、大盛況の内に祭は終わりました。


 そうそう、エーデルハイト大陸の再興は着々と進んでおります。

 我がカバラ社の社員に加え、ランバートンの魔道士やヴァリアラの騎士団、各地からのアストラルが集い、現地の住民の協力も得て、クルーテッダスが滅んで以降百数十年放っておかれた、正確な地図の作成に始まり、点在する遺跡の調査、現存する集落の発展、新規集落の開拓などを行っています。

 やるべき事は沢山ありますし、衝突も度々起こりますが、誰もが互いに問題を解決しようと歩み寄り、「やりがいのある仕事だ」と笑顔を見せてくれるのが、何よりの支えです。


 人間への蔑視が残るアストラル、自分達とは異なる能力を持つアストラルを敬遠する人間。

 両者の間にはまだまだ、越えねばならない壁がそびえていますが、カバラ社、ランバートンやヴァリアラ、アストラルの皆さんと話し合いを重ね、協力しあえば、いつかは、真に共存できる日がきっと来ると信じています。

 その架け橋として、人間とアストラル、双方の血を引くセレン君がいてくれたら、とても心強かったのですが……。

 今は、彼が無事に帰って来る事を、心から」


 願っております。


 そう入力しようとして、アスター・トスティはキーボードを叩く指を止めた。

 折しも時計は夜半を指す時刻。カバラ社社長室の大きな窓から見渡せるガゼルの街も、そろそろ本格的な眠りにつく頃で、灯りはまばらだ。

 黒縁から縁なしに変えた眼鏡を通して目に入る、端末の文字の羅列を見渡して、自嘲ひとつ、洩らす。

 彼が帰って来ればいいなんて、心にも無い事を、と。

 本当は、自分が彼女の心の傷を癒して、彼女が彼を待つ事を諦め、彼の事を忘れて、自分の前で笑ってくれるようになればいいと、嫉妬を抱いているのを、自覚しているのだ。

 恋心はいつ頃からだったろうか。

 初めて会った時は、しょっちゅう振り回してくれる当時の社長について行くのに精一杯で、まともに顔を見もしなかった。

 改めて向かい合った時には、この小柄な身体でよく危険な旅をしていられるものだと感心した。

 そして、神剣をその細い手に握り、世界の運命をその小さい肩に背負いながら、絶望的な戦いに立ち向かう底知れぬ勇気に触れる頃には、完全に惹かれていた。

 だが、これは公平フェアじゃないではないか、とアスターは端末の前で、組んだ手の上に顎を乗せて考える。

 わざといない相手の名前を出して、心配しているふりをして、気を惹こうだなんて。

「いい歳をして、大人気なさすぎるぞ、アスター」

 モニターに映り込む自分に向けて唇の端を持ち上げてみせれば、モニターの中の彼も苦笑を返す。

 まわりくどい手は無しだ。もっと、自分の言葉で、ストレートに行こうじゃないか。玉砕上等。

 言いたい事は、直接会えた時に全て面と向かって喋ればいい。

 アスターは再び両手をキーボードにかけ、今までの文章を全削除すると、ザス支社送信、個人名義宛のメールを再び書き始めるのだった。


「前略 カラン・ミティア様。


 久しぶりにお会いしてお話などしたいのですが、あなたのご予定はいかがでしょうか?」

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