9月9日 現在の状況
おそらく平成26年9月9日
剣暦××年8月9日
オークの国王都よい西に200の距離 ヘンゼル渓谷
①オークの国方面 (僕 ユキくん)
ユキくんと二人で、彼女が隠れているという渓谷を探しに行く。
別に潜んでなくて、季節外れなためか他に客のいないキャンプ場で、一人薪を集めていたリーヨンちゃんを見つけた。
5か月ぶりくらいに姿を確認しあうと、大分喜んでもらって、テントに案内されて歓待を受ける。
ユキくんが薪を拾いに林の中に入っていく。
テントで、リーヨンちゃんと2人。
会えたのはいいけれど、何の会話もできない。そもそも、リーヨンちゃんは剣語が喋れないので、僕と会話なんてできない。
ユキくんを待てばいい。なのに、自己嫌悪に陥っていたせいか、愚痴を延々と呟いてしまった。聞かせてしまった。言葉もわからないだろうに、リーヨンちゃんはうんうんと頷いて、聞いてくれた。
ああ、恥ずかしい。
僕の方こそ皆に守られて生きていることを思い出した。
ユキくんの持ってきた薪でプチキャンプファイヤーをして、遅くなったので、この日はユキくん共々テントに泊めてもらう。
ユキくんなんか「野宿はよくするけれど、誰かとキャンプなんて初めてなのです」と、感情の分かりにくい貌で興奮していた。
案の定、犬が苦手なリーヨンちゃんは涙目だった。
夕飯を食べて、しばらくして、リーヨンちゃんは『明日帰る。そして、兄 (国王アイスバイン陛下)と会う』、と言ってくれた。
ユキくんはそれを伝え、先方に準備をしてもらうために、先に王都に戻ることにした。「せっかくのキャンプができなくて残念なのです」とか言って、夕暮れと夜の境界を、駆けていった。
脚、速いな。
ユキくんがいなくなった後、こうして日記を書いている。
隣でリーヨンちゃんがにこにこしている。
……なんで、リーヨンちゃんは、家出してまで会いたくないと言っていた家族と、会うと言ってくれたのだろうか。
落ち込む僕に気を遣って、決心したと言うのなら、それは、僕はイオちゃんに軽蔑されても仕方ない、のかな。
②センチペド方面
特に情報なし
③姫様方面
特に情報なし