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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
死霊祭が終わった!草原の国自宅での日々編
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8月26日 追記 夜中風呂に入る

 ※※



 夜中、虫の鳴き声で目が覚めた。


 今、何時?


 確か、さっきまで馬鹿みたいに宴会してて、そのまま眠ってしまったのだろうか。

 

 周りを見渡すと、ここは僕の家の大広間で、そこに大の字になって眠っていた。


 体を起こせば、そこらへんに酒瓶と料理の皿が転がっているのが……、転がってない。


 酔いつぶれたジンさんやホビット達はそこらへんに落ちてるのに、宴会の跡がない。

 

 夢でも見てたのかな?


 いや、しかし酒と汗の臭いで服が臭い。


 無性に風呂に入りたくなるが、悲しいかなこの異世界には電気給湯器なんてものはないので、水から沸かさにゃならない。


 いや、水風呂でいっか。とりあえず、汗を流そう。


 立ち上がり、風呂場を目指す。


 目指しながら、風呂場に灯りがついているのに気付く。



 え? なんで?



 ゆっくり近づいていくと、水がちゃぷちゃぷ言う音と、灯りに照らされる湯気と、石鹸の匂いがする。


 ……夢じゃないよね。まさか、幽霊がお風呂に入るとも思えないし。


 鼻歌が聞こえる。


 幽霊は鼻歌なんて歌わないよね。


 ……誰?


「誰?」


 怖くなって思わず声をかけると、浴室から「きゃっ」とか女の子みたいな音がした後

「旦那さん?!」


 よく知ってる声がした。


「なんだ、イオちゃんか」


 ……なんでイオちゃんこんな夜更けに風呂入ってるんだろう?


「旦那さん! ごめんなさい! すぐ出ます!」


 生まれたままの姿で浴室から飛び出しそうだったので


『いいよ 風呂入る よい』


 僕の方が出ていくことにした。



 イオちゃんだって風呂に入りたくなる時くらいあるよね。と言うか、風呂掃除からお湯沸かしまで全部イオちゃんがしてくれてるし、自分で好きな時に入る権利くらいあるでしょう。



 浴室に背を向けて、大広間で酔いつぶれていた場所にもう一度寝転がろうと思っていたら、後ろから声がする。

「旦那さん お風呂入りたい やったら 入って」

 バスタオル一枚巻いたイオちゃんが廊下に立ってた。

 いや、何してんの。

「沸かす もう一回」

 いや、いいよ。どんだけ滅私奉公の精神なのよ。

 そして、今気付いたのだけれど

『イオちゃん 風邪をひく 服を着る よい』

 もしかして、この子一人で片づけしていたんじゃないだろうか。


 パジャマに着替えたイオちゃんに話を訊くと、やっぱり、皆酔いつぶれた後、一人で宴会の片づけをして、終わったところで汗を流すために風呂に入っていたらしい。

 この世界では珍しい湯船にお湯をためて入浴する方式のバスルームはイオちゃんもお気に入りのようで、何より。

 すると、主人に黙って勝手に風呂を使ったことを謝りだす。

 そんなこと謝らなくていいのに。

 

 これからも好きな時に入ってくれたらいいと説明して、寝てもらうことにした。


 まだ、湯は残っているので、僕も湯船につかることに。


 地球にいた時も風呂は好きだったけれど、ありがたいことにこちらの世界でも自由に風呂に入る身分に落ち着いた。ありがたやありがたや。

 体を洗って、湯船に入ると、すごい量の水があふれた。

 すごい、水って本当にさっぷーんって音がするんだ。


 ああ、生き返る。

 ジンさんはなんでか知らないけれど風呂に入るのを嫌う。前に旅している時に温泉を見つけた時も絶対に入らなかった。

 この世界に来てから、風呂を3つほど作ったことがあるが、どこでも大人気だったのに、変なの。

 しかし、生き返る。


 そして、生き返りついでに思う。

 イオちゃんを働かせすぎたな。

 あの子、期待をかければかけるだけ頑張ってくれる。

 僕の無茶にもとことん付き合ってくれる。いくら雇っていると言っても考えなければならない。

 うーん、もっとメイド雇うか?


「旦那さん 着替え 置きます」

 浴室の扉一枚隔てた向こうで、イオちゃんが今日最後の仕事をしてくれた。

『ありがとう イオちゃん 寝てください』

 そうして扉越しにおやすみを言いあった五秒後

「旦那さん 背中 流さんでええ?」

 とか言いながら浴室に入ってこようとするイオちゃんに「早く寝なさい」と言ったところで、今日の行程はすべて終わる。


  

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