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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
回顧録! かんてらOverWorld/Zero編
341/363

12月6日 草原の国 背中に翼の生えた女の子に、空が飛べるのか訊いてみる。

 おそらく平成27年12月6日

 剣暦×○年11月6日


 草原の国グラスフィールド

 王都 僕の屋敷



 背中に翼の生えた女の子コイオリちゃん。

 御昼前に、ふと思った。

 ……この子、空飛んだりできないのだろうか?

 しかし、彼女の使う言葉がわからないのだが「君、飛べるん?」とどうやって訊いたらいいのだろうか?

 仕方ないので、手を、こう、上下にばたつかせてアピールしてみる。

 うまく伝わらず、コイオリちゃんはとりあえず僕の真似して手を上下にばたばたさせた。いや、背中のそっちをばたばたして欲しいのよ。


 その光景を目撃した豊後恵が、心底馬鹿を見る眼つきで「何してるの?」とか訊いて来る。

 彼女にコイオリちゃんが空を飛べるのか確かめたくてボディランゲージで説明していたことを教えると、心底馬鹿を見る眼つきで「馬鹿だな、そんなのでわかるわけないだろ」と僕を押しのけてコイオリちゃんの前に立つ。

 恵曰く「そんな手だけ振ったってわかるわけないだろう、もっと全身で空を飛ぶイメージを呼び起こさないと」とか言って、両腕を大きくはばたかせて、鳥のように滑空する真似をし出す。ああ、そんなものかと僕も真似る。

 僕達二人を見て、コイオリちゃんも後ろに並んで、三人で腕をばたばたさせながら並んで走る。

 

 駄目だ。全然伝わらない。

 もしかして、鳴き声がないから鳥だと伝わらないんじゃ、と相談していると、お昼ごはんができたので呼びに来たメイドのイオちゃんが、すごく不思議なものを見る眼で、扉の向こうから眺めているのに気付く。

 なんだか恥ずかしくなってきたら、イオちゃんが愚痴る。

「私は除け者……」

 イオちゃんも、やりたかったのだろうか……。



 ※※



 ブンゴ、また今夜も来たの?

 別にホビットの国の話はあれで終わりだよ。特別あの後は何も。

 まさか、草原の国に来た後のことも知りたいとか言う訳?

 ……別に何もないよ。

 ホビットの国で、ハパナ陛下とハピナ姫の親子げんかに巻き込まれて、二人のとび蹴りが僕に炸裂した後さ。仲直りしてくれたし、いい機会だからと人間の国を目指すことにしたってところまで話したよね。

 ジンさんに連れられて、草原の国を目指して旅をしたんだ。

 そうだなあ。ホビットの森が綺麗だったこと。地面がぬかるみまくってて何回も転んだこと。

 川を見つけては洗濯をしたけれど、風が気持ちよくて春先だったからかな、乾くまで上半身裸で歩いて風邪を引いたり、ホビットの行商人に地球の歌を教えてあげると1割引きしてくれるから、レパートリー歌いまくったこととか、ジンさんに上を向いて歩こうを歌うと、涙流して「いい歌だな」とか言い出したこととか。

 人間の国の国境警備基地ではジンさんが「お前をあくまで人間として押し通すのと、新種の獣頭人と誤魔化すの、どっちが入国しやすいだろうな」って軽口言ってくれるくらい仲良くなったこと、くらいかな。


 まあ、無駄に治安がいい草原の国だからね、ぶらぶら街道を歩いてたら、何日かしたら王都に着いたよ。

 ホビット王家からの魔女郵便が草国王に届いているはずだから、ジンさんが持ってる割札を見せたら、いいはずだったんだ。



 それがね、王都でジンさんとはぐれちゃったんだよ。

 いや、髭も生えっぱなしだし、髪も伸び放題だったからさ、床屋とかないかなーってうろうろ町並を眺めながら歩いていたら、ジンさんを見失って。

 いやー、参ったね。

 言葉は通じないし、常識も通じないし。


 仕方ないから、うろうろ歩いていたら、音楽辻を見つけたんだ。

 楽器持った面々が道端に並んで、めいめいに好きな音楽やって、道行く人からおひねり貰うってやつ。

 僕もそれやったんだよね。


 いや、ものすごい額のお金が集まった。


 いやー、音楽っていいものですね(ゲス顔)


 うん。でも本当によかったよ。言葉は通じなくても、歌は通じた。

 この世界は本当に豊かで平和だ。僕を受け入れてくれる余裕があるくらいに。

 

 とりあえず、道行く人に身振り手振りで髪を切ったり髭を剃ったりできるお店を訊いて回ったら、教えてくれたんだ。

 カツラ専門店を。

 仕方ないから、バロック調の金髪縦ロールの奴を一個購入したら、これが意外と高くて一文無しになってしまった。


 ちょっと、ブンゴ、そんなに爆笑するようなとこ?

 

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