11月13日 草原の国 ウルケさんの始末・2
おそらく平成27年11月13日
剣暦×○年10月13日
草原の国グラスフィールド
王都 僕の屋敷
昨日、ウルケさんからもらった手紙は四枚綴りだと思っていたのだが、読み返していると、紙がくっついてて5枚目があることに気付いた。
『追伸 私、魔女になることにしました』と書いてあった。
?!
そしてたった今、僕の家に魔女郵便が手紙を届けてくれたのだが……。
配達に来てくれた箒にまたがった魔女は、妙齢で喉に傷があって、なんともいたずらの好きそうな眼をした、僕の知っている人だった。
尼になったんじゃなかったの……? 出家生活の中で一体何に目覚めたのやら。
まったく、七王家の血を引く女性が、剣祖の加護を捨て魔女になるとは、世も末である。
こんなことを話して愚痴れるのは、元世界廃滅主義者くらいなものだろう。
恵にぼやくと、大爆笑していた。
「君に振られた腹いせじゃないの?」とか言うけれど、そもそもフッてない。本人同士の心情で言えば、僕が勝手に振られたのだ。
ただ、まあ。もしかしたらウルケさんに魔女は合っているのかもしれない。
彼女は、人の為に生きることに生きがいを感じているのだと思う。
最初は自分の夫のために領地を拡大した。次はゴダバ陛下のためにその身を盾にして守った。そして、国のために愛する夫を想いながら僕に体を差し出そうとした。
人智を超えた魔道具をもって、世界から一歩身を引いて公共のために空を舞う魔女という務めは、彼女の安寧なのやも。
そう言えば、草紋の国境でウルケさんと別れたあの時、空に魔女が飛んでいたのを眺めたっけ。
皆、自分の生き方を見つけているのだ。
僕も、見つけなければならない。
完全に臍を曲げ、ごはんを作ってくれなくなったイオちゃんの機嫌を直す方法を。