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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
草原の国へ帰ろう!ドワーフの国旅行編
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8月7日 草原の国  七夕のことを思い出す 地球人は神の使い あと脱獄

 おそらく平成26年8月7日

 剣暦××年7月7日


 草原の国と剣の国の国境

 星詠みの平原



 今日は7月7日。七夕である。

 でも、僕のいた地球と異界ラドゥバレトフの時間の進みが一緒ならば、そして、僕の日数カウントが間違えていなければ、日本では今頃8月になっているのだろう。


 僕が17才。まだ、父ちゃんも母ちゃんもばあちゃんも生きていたあの年。

 7月は忙しくて、笹もスイカも用意できなくて、旧暦の七夕ということで、8月に、庭に山で伐ってきた笹をつるした。子供は僕だけだったし、願い事を書く年でもないので、短冊の用意はしなかった。

 ただ、星の祭を家族で祝う。



 もし、あの時願い事をつるすとしたら、なんと書いただろうか。


 まあ、きっと『大学合格』だろうなあ。





 今日も朝からホビットパンを食べて、することもないので、独房の中で寝そべる。

 暑苦しくて、上半身裸で床に寝そべっていると、普段は房になんて下りてこないお偉いさんらしい人がやってきて、思わず目があった。


 看守長が女性なんて聞いていない。


 思いっきりわめいて、仲良くなった看守のエレンさんになんかぎゃーすか言ってた。

 看守長がいなくなった後、苦笑いしながらなんか言ってたけれど、僕はまだこの国の言葉をうまく聞き取れない(読み書きはちょっとできるんだけれど)

 

 会話できるくらい頑張らないと。


 皆が日本語でしゃべってくれたら便利なのになあ。


 こちらの世界にはこの世界の言語がある。

 地球の言語で会話できる人は、あまりいない。

 ジンさんやレンちゃんのような『案内人』は、あくまでラドゥバレトフ世界の剣祖文明圏の人間同士の通訳であって、僕のような異世界人はそもそも営業対象外なのである。

 それでも、数十年に一度やってくる地球人を、彼らは『剣祖の使い』と呼んだり、『天魔』と信仰したりする。そして彼らの話す言葉を『神語』として覚え習得する者たちが少なからずいるのである。


 僕の異世界人生の中で最高の幸運は、『案内人』であり、数十年前に『日本人』を案内したことがあるため、日本語を『神語』として習得したムーゲン・メロディア族のジンさんに会えたことだろう。



 ジンさんがお喋りの相手をしてくれるおかげで、僕の正気は保たれているのだと、いつも思う。感謝。



 そういえば、今日独房の壁越しにジンさんと会話をしている時に、教えてもらったのだが、剣暦の7月15日はお祭りの日なのだという。

 

 その祭の名を無理やり日本語に訳すと、『死霊祭』とでも呼ぶような祭りになる。

 詳しく説明を訊くと、つまりハロウィンとかお盆のことだった。

 そうか、どちらも剣祖共通言語に該当する言葉がないんだな。


 そのおどろおどろしい響きの祭りの夜には、皆でごちそうを食べるのがならわしらしい。

 それならば、ぜひその日までには、このおつかいにも決着をつけて、草原の国の王都で、ジンさんと、迷惑かけたタマちゃんと、ついでに、そうだな、レンちゃんと、そしてもちろん、姫様と。


 皆で。



 あ、そうそう。今日脱獄した。

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