6月26日 紋の国 ドワーフ石切り村で、玉座複製を依頼
おそらく平成27年6月26日
剣暦×○年5月26日
紋の国オーバーフラッグ
ドワーフが暮らす村
紋の国オーバーフラッグは人間の国である。
ドワーフは普通いない。
草原の国グラスフィールドくらいガバガバ入国管理だったら異人がいてもおかしくないが、そこらへんが徹底されているこの国で、ドワーフが暮らす集落なんて、おかしい。
けれど、少し前にドワーフの国バーンスタインと取り決めが行われ、この石切り場の周辺でだけ、定住してもよくなったらしい。
というのも、ここら辺で採れる石は鉄並に堅くて、人間の手先では加工が難しいんだってさ。
だから、好きに採掘、加工、販売してもいいけど、利益をいくらか国に回すという仕組みができあがった。
できあがったのはいいが、販売とか金勘定とかはドワーフ達はまったくの素人連中だったらしく、加工して以降の話は、国から派遣された官吏がやってるんだとか。
加工するのが、大好きな種族だからなあ。
村に到着した後、そこの役所みたいなところに言って話をする。
石細工問屋を装うと、役人さんはへーこらしながらドワーフの親方のところに連れてってくれた。役人というより、商人ぽかった。
ドワーフの親方は、もう、見るからにドワーフと言った感じで、ごつくて髭でねめつけるようにこっちを見上げて、ごつくて髭で、声が無駄にでかかった。
どうやら、案内人のゴリラさんは何度か来たことがあるのか、ハイタッチで迎えられていた。流れに合わせて、僕とウルケさんも親方とハイタッチしたら、なんか気に入ってくれた。
通訳を通して【こういうもんを作って欲しい】と玉座の寸法説明すると【何に使うのかわからんつまんねえデザインの椅子だなオイ、これくらい明日の朝までに掘ったらあな】という快諾。素晴らしい。
しかし、ここでドワーフの悪癖が出てしまう。
そう、彼らは、そう。勝負が好きなのだ。どっちが強いとか、こっちの方がいいとか言うのだ、好きなのだ。
【この椅子、デザインが悪すぎるぜ。俺がもっとセンスあるもんにしてやる】とか言い出す。いや、まったく同じものが欲しいのよ。
【そうか? 絶対俺の設計図の方がいいって!】
親方に【ドワーフの全く同じものを作る精妙な腕前をぜひ見せて欲しい】とか言って説得して、説得しまくったらなんとか納得してくれた。最後まで【わかった。この通りに作る。ただせめて背もたれに薔薇の意匠をほどこそうぜ、なっ?!】とか言うのには辟易した。
疲れた。今、ドワーフ村の商談客用の宿舎で日記を書いている。
ジンさんとゴリラさんとドゥーブラさんは何故か別の部屋で、僕とウルケさんが相部屋である。おかしくないだろうか?
隙あらば、距離を縮めてくるウルケさんに、流石に違和感を感じ始めてきた。
今頃、王都では祝宴の夜だろうか……。