6月24日 晴れて自由の身(仮) 玉座の偽物にちょうどいい石材を探しに行くことに
おそらく平成27年6月24日
剣暦×○年5月24日
紋の国オーバーフラッグ
縦一文字街道の宿場町
気付いてしまった。
なんだかんだ言って、ゴダバ陛下が帰ってきてるんだから、僕が王様やる必要ないやん。
しかし、気付いた時にはすでにメイドのウルケさんに変なローションみたいなの頭に塗りたくられて剃刀で綺麗に剃られた後である。こんちくしょう。
とりあえずこの発見を、今日は今日で厨房の裏手でじゃがいもの皮むきをしているたくましい体つきの禿げ頭に伝えた。
『陛下、さっさと王様に戻ってください』
『ちょい待って、この籠の中のじゃがいも全部皮剥いたらな』
『おめーの国だろうが』
こうして、僕はとりあえず、王様の代役を辞めることができた。
……できたのだが、しかしどうしよう。お城にこのまま居座っていたら、王様の本物と偽物がうろついていることになり、城の人達にも違和感を感じる人もいるかもしれない。『あのでかい人、なんだろう』とか。
城を出て町の宿場にでも仮宿を取ろうかと思っていたら、冒険の話が来た。
ゴダバ陛下とナッシュ宰相はジンさんとの協議の結果、玉座の偽物を作り、王旗完成の目途がつくまで、それを玉座の間に置くことで誤魔化すという案を受け入れてくれた。
うん、それがいい。あるべき人は、あるべき場所に。なのだ。
それで、国で費用を出してくれるので、僕は取り急ぎ、本物の玉座に使われているのと同じ材質の石を探して加工しなければならない。
しかしそこは抜かりなく、調べてくれていた。
縦一文字街道をまっすぐ南に二日行くと、石切り場があり、そこでドワーフ達が石細工を作っているという。ドワーフがこの国で村作っているというのにビビった。でもそう言えば、議会の資料に目を通している時にそんな話題もあった気がする。
そこに行き、ちょうどいい材質のもので椅子を彫ってもらうのだ。
……今更だけれど、玉座って石だったんだな。
そこで今日にも僕は出発する。
旅の仲間は好きに選んでいいということなので、勝手に選んだ。
今日の日中。石細工の玉座を運べるくらいの大型の荷馬車で、出発。
旅のメンバー
・僕
・ジンさん(犬頭人。僕のパートナー)
・ゴリラさん(猿頭人。この国の第一案内人)
・ドゥーブラ・センさん(王城備品管理係長)
・ウルケさん(なんか、また勝手に玄関で旅支度して待っていた)
このドゥーブラさん、元々王都の裏通りで賭場を経営していたのだが、ゴダバ陛下の推薦で城務めになったといういかにもな経歴の持ち主。
とにかく口が堅くて、陛下が何か隠し事を進める時には、用いられているそうだ。
この数カ月の騒ぎの間どこでなにしていたのか訊くと『戦争になる可能性もありましたので、某所で陛下の隠し資産をすぐ使えるよう現金に変える作業、ですかね』
またとんでもないのを仲間につけてしまったなあ。
あと、口堅いという評判の割に、いきなり核喋っちゃうんだ……。
道中は何の問題もない。一日では着かないので、予定していた途中の宿場町で泊まる。
やっぱり旅は楽しい。
今日の夕飯は、リウキュのバター煮。城のよりも味付けが濃かった。