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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
目指せ退位! オーバーフラッグ王カンテラ編
281/363

6月16日 紋の国 テ・ケロムーチョ楽兵団の演奏にうっかり参加してしまう。

 おそらく平成27年6月16日

 剣暦×○年5月16日


 紋の国オーバーフラッグ 

 王都『決して朽ちぬ城』



 テ・ケロムーチョ楽兵団のゲリラ演奏会は大成功に終わった。



 ※※



 多くの人が賑わう王都の大広場は、突然現れた異人を含んだ音楽隊に騒然となる。

 そして彼らは紅蓮字十字の旗と、かつて異界から来た少女が描いた下手くそななんかよくわからない翼のある生き物がかかれた旗を掲げ、数百年にわたり伝承されてきた音楽を奏でた。

 あの日、異界から来た少女が傭兵達に無理矢理演奏させた、その音楽。



 『ペガサス幻想』じゃねーか?!

 なんでアニソンなの?

 しかも、「テ・ケロムーチョ」って台詞から察するに、その異界から来た地球人ってスペイン語喋るんだよね。なんで聖闘士星矢なの?!

 しかも、すごい音痴。

 洒落にならないくらい音色はへろへろ、抑揚のないメロディらしき何か

 いや、彼らは超一流の音楽家で、わざとそうやってるのは知ってる(演奏する彼らの表情は鬼気迫るものがあった)

 すげえな、わざとあんな風にやってるんだ……。

 すると、その音を聞き付けて、続々と人が集まってくる。

 彼らは魔道具によって、物理法則以上に遠くの人々にまで音を届けるわけだ。

 王都中にこの音楽が……。やばい、暴徒と化しかねないな。

 その時、誰かが彼らに向かい何かを投げつけた。

 リーダーの『小人工兵』の頭に当たる。

 背筋が凍る。

 よく見ると、真っ赤な熟れたトマトだった。

 気が付いて周りを見ると、広場の周辺、聴衆を囲むようにトマトだの水風船だの、当てても怪我しないような投げれる物を売る屋台が並んでいる。そして、下手くそな演奏にストレスがマッハで頂点に達した聴衆が屋台に駆け寄り、手ごろな投擲物を買い求めてゆく。よく見ると、屋台には紅蓮十字のマークが。つまり、楽兵団の回し者……。

 背筋が凍る。まさか、これ全部仕込みか……。

 その後の光景は戦慄物だった。

 広場中に集まった民衆が、あたっても怪我しないような物を中心にいる4人の音楽隊に狂ったように投げつける。

 こんな熱気は、なかなかないぞ。

 どうやって収拾つけるんだろうか。

 その時、恐れていた事態が起きる。

 魔道具『聞いたが最後丸一年は耳から音が離れない笛』でメロディパートをやってた【人間弓兵】が、潰れたトマトに足を滑らせてこけた。

 あたりどころが悪く気絶した。

 上がる悲鳴。

 メンバー達が彼に駆け寄るが、目を覚ます気配がなさそうだ。

 聴衆の怒声。これ、このまま中止したら暴動なるぞ、って熱気。

 さてどうなるかと不安げに見ていたら、聴衆の一人が物陰の僕に気付いた。

『あっ! 王様だ!』

 あちゃー。 



 その後は、ひどかった。ただでさえ悪目立ちする体型なのに、頭は剃ってるし赤いマントしてるしもろばれ。

 皆の声援を受けて、つい流れでステージに立ってしまった。

 【小人工兵】【人間歩兵】【大鬼歩兵】が、不安げな顔を僕を見る。

 さて、どうするか。

 三秒考えて、告げた。

『僕、この歌知ってるから歌います。伴奏してください』

 ラドゥバレトフ大陸剣祖文明圏に、ペガサス幻想フルコーラスが響いた日であった。

 広場中の数百人相手に届くようにとかなり無理した。

 こんなに大きな声で歌ったのは随分久しぶり。おかげで喉ガラガラ。

 とりあえず、広場の熱気は唄いきったことで昇華され、盛り上がりの内に僕達は逃げ出した。

 あれだけ盛り上がってもトマト投げるのなこの国の奴らは。

 とりあえず、今夜もガンツ親分の家に泊めてもらった。

 トマトまみれの僕達を見て『そのままで部屋に入るな、裏庭に行け裏庭に』と、こなれた対応をしてくれた。


 夜は打ち上げ。

 彼らが手配したグッズ(投げつける物)販売は、かなり売りさばいたらしく、今日は、テ・ケロムーチョ楽兵団結成以来の大もうけだったそうだ。


 

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