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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
目指せ退位! オーバーフラッグ王カンテラ編
280/363

6月15日 紋の国 ゴダバ陛下、王城に連行される。明日、広場で演奏会。

 おそらく平成27年6月15日

 剣暦×○年5月15日


 紋の国オーバーフラッグ

 横一文字街道第9宿場町 つまり 王都ダブルイーグル

 裏町のガンツ親分宅で泊めてもらう。



 ゴダバ陛下は、『コンサートが終わるまでナッシュ達には黙っていてくれ』とか言うけれど、皆陛下のことを心配しているのだから、無事であることは伝えなければならない。

 朝、こっそりゴリラさんを城に使いに出したら、朝御飯後くらいには、近衛騎兵連隊が駆けつけた。ゴダバ陛下からは裏切り者呼ばわりされたが、表返っただけのこと。

 騎兵につれてかれそうな陛下は、『頼むからコンサートだけは無事にさせてやってくれ』とか言うので、取り残されたテ・ケロムーチョ楽兵団の面倒を僕が見ることに。

 とりあえず、昨日匿ってくれた裏町の顔役のところにもう一晩お願いする。

 すごく苦々しい顔をしていたけれど、観念して泊めてくれた。


 かつてこの世界であった大きな戦争。

 行き場を失くし戦場を巡る4人の傭兵。【小人工兵】【人間歩兵】【人間弓兵】【大鬼歩兵】

 彼らの元にある日現れた異世界人の少女の行き倒れ。

 戦争に明け暮れる世界を5人で流浪している内に、少女が提案した。

 戦いに疲れた人達のために、演奏会を開くことを。

 演奏者は、楽器なんか触ったこともない4人の傭兵。そして少女。

 誰からも相手にされず、笑われながらも、半ばやけくそ気味に開幕した素人コンサート。

 あまりの下手さに物を投げられ追いまわされ、命からがら逃げのびた5人。

 逃げ延びて、生き延びた後、頭にトマトをぶつけられたままの少女が、異世界の言葉で仲間に言った。

「テ・ケロムーチョ」

 世界各地を巡って演奏旅行。いつしか、彼らの悪名は世界に響く。

 いつしか、病に少女が倒れ、残されたのは4人の傭兵。

 それから幾数百年。

 テ・ケロムーチョ楽兵団は、現存し、当代のメンバーは今僕と共にいる。


 今日は、小屋の中で演奏の準備。世界一下手な楽隊と言うからどんな音を出すのかと思ったら、ウォームアップや練習を聞く限り、滅茶苦茶上手だった。

 弦楽器の準備をしているのリーダー格っぽい【小人工兵】と少し会話できた。

・彼ら四人は、それぞれ国の音楽学校で教育を受けた一流の音楽家

・普通に演奏もできるのだが、初代の演奏をそのまま完全にコピーしているため、同じ場所で間違えたり、寸分たがわぬ下手くそな音色を出せる技術が求められる。

・何故そんなことをするか? それは、楽兵団の目的が、異世界の少女が何故我々に『テ・ケロムーチョ』と言ったのかを理解するために、音楽を続けているからだから。

 そこまで説明してくれると、初代から数えて78代目【小人工兵】は、横でリズム練習をしていた57代目【人間弓兵】とセッション練習を始めた。


 ふと、彼らに『テ・ケロムーチョという言葉の意味は、もうわかってるんですよね』と訊いたら、『もちろん』と返事が返ってきた。

 ……だったら、その女の子がどんな気持ちだったかなんて、もうわかってるんじゃないのだろうか。もちろん、そんなこと訊かないけど。



 明日、朝この大広場は人でごった返す。

 そこでゲリラ演奏を始めるとか。

 ちょっと、楽しみ。

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