6月10日 紋の国 新王様、やっぱり旅に出ることにした
おそらく平成27年6月10日
剣暦×○年5月10日
紋の国オーバーフラッグ
『決して朽ちぬ城』
毎回のことだが、あと一週間くらいで、行方不明の紋王を探し出さねばならないことになった。
本当、僕が気楽に構えている時に限って。
今朝から妙に宰相ナッシュ卿の表情が浮かないからどうしたのだろう? と思って訊いてみた。
彼、今月結婚するんだってさ。
宰相だけれど、貧乏貴族の五男坊。分相応な質素な式にするつもりで、呼ぶ友人も共に勉学に励んだ同期の若い連中だけでやると決めた。
ただ、ゴダバ陛下がまだ城にいた4月、『その式には、もちろん俺の席もあるんだろうな』と言ってくれたことが嬉しかったらしい。
宰相曰く『今月26日挙式の予定です。今の状況では、ゴダバ陛下は間に合いそうにありませんね。流石に、ミキテル様に参加をお願いするわけにもいきませんし』
随分、寂しそうに言ってくれる。
そういう大事な話は、もっと早く言えよ!
ブルーベリー食ってる場合じゃねえ!
旅支度。紋国専属案内人のゴリラ・ムーゲン・フォロイアさんにゴダバ王を探しに行くから案内を頼むと快諾してくれた。
僕が自分の足で先王を探しに行こうとしていることに気付き、宰相が慌てて止めてくれたが、この世界に流れ着いて以来、僕がそういうものを生きる理由としていることを説明。
議会が終わる15日までに帰ってくると約束することで、外出を取りつける。
新しい案内人、ゴリラさんと共に、早速出発する。
それなりに、僕にもアテがある。
出発しようと思ったら、何故か同じく旅支度を整えたお世話係のメイドさんが、城門の前で待っていた。
勝手している身なので、彼女に付いて来るなと言うこともできず、三人連れとなりそうだ。
ちなみに、このメイドさんの名前がやっとわかった。
皆が、ウルケと呼んでいた。
試しに『ウルケさん』と声をかけると振り向いてくれたから、多分あってる。