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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
目指せ退位! オーバーフラッグ王カンテラ編
269/363

6月4日 紋の国 新王様、落盤事故犠牲者慰霊式典に参加する。


 おそらく平成27年6月4日

 剣暦×○年5月4日


 紋の国『決して朽ちぬ城』



 紋の国を南北に走る陸路の要、縦一文字街道。

 そこには一か所だけトンネルを通る場所がある。

 どうしても、山道に一つ刳りぬかねばならぬ場所があり、6年の歳月をかけてトンネルを開通させた。


 途中で一度落盤事故があり工事人夫が大勢死んだ。

 今でも、彼らの犠牲を忘れぬために、慰霊式典が行われる。

 流石に、王様が顔を出さないわけにはいかないので、僕も行く。

 念入りに頭を剃って、上等な服を着て出発。

 宰相が、一緒に着いてきた。もう議会始まってるんじゃないの? と訊いたら、この式典があるから今日は議会休みなんだとか。

 そんなに大事な行事なのか……。王様代理として下手なことできんな、と勝手に緊張。

 急いで朝御飯を食べて、まだ涼しい内から出発したら、御昼前に着いた。

 意外と、王都から離れていない。

 以前リウキュの初物を届けてくれたカッパ村も、このトンネルの向こうにあるとのこと。

 式典会場には、カッパ村を含め、このトンネルを生活に利用する近隣の人々や、道路卿フラウボムネル・パメラ卿、工事関係の役人がずらり。

 

 今日の行事には笑いは特に必要なかったので、絶対に失敗しないように取り組んだ。

 式典が始まり、国家を歌い、ぼくが献花台の前にゆっくりと歩を進め、昨日の夜披露宴が終わって帰った後も何回も練習した弔辞を述べる。

 それ自体はとどこおりなく済んだのだが、問題が発生。

 終わった後、献花をして席に戻るのだが、うっかり、献花台の前で両手を合わせて目を瞑ってしまった。

 この国では、そういう御祈りの動作がなかったから、奇異に映ったのだろう。

 若干、ざわついた。

 しかし、やってしまったのは仕方ないので、何にもなかったふりして、堂々と席に戻る。

 内心びくびくだったけれども。


 帰りの馬車の中で、宰相から『あれは、なんだったのですか?』と訊かれて、しどろもどろに死者への御祈りであることを説明した。

 『大失敗した』と、落ち込んでいたら宰相は慰めてくれた。

 『少なくとも、あの場で陛下が本気で何かを想っていたのは、私達にも伝わりました。だから、失敗などではありません』

 ちょっと意外。この人、こういうこと言ってくれる人だったのか。

 

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