3月12日 エルフの国 ニオ王子の家出から一晩明けて、未だ戻らず。
おそらく平成27年3月12日
剣暦×○年2月12日
エルフの国フロッグワード
王都オトヤ
姫様とグイ将軍が、一晩経っても、戻ってこない。
そこまでは想定の範囲内。
けれど、今日の夜になっても帰ってこないというのは、ちょっと心配。
このまま二泊三日コースだろうか?
しかし、僕はそんな心配よりも自分の命の心配をしなければならない。
宰相テッサイ・ラ=セツさんが、【お前が逃がしたんじゃないか?】とかすごい眼つきで訊いてきた。いくら僕が無理無茶村の無理太郎でも、他人だけに無茶はさせない。信じてくれたのかわからないけれど、王子はまた高熱を出して休まれたということにして、政務を続けるそうだ。多分、この人も平気な顔して仕事してるけれど、心配していると思う。
意外だったのは、一番心配していたシュテン長官が一番落ち着きはらっていたことだった。あの見るからに心配性そうな顔のおじさん、グイ将軍にニオ殿下が拉致されたなんて言ったら泡吹いて倒れるんじゃないかと思ったけれど、まったく動じていなかった。【グイが殿下に害を加えることは、絶対にない。ならば、城の喧騒から離すのが目的と考えるのが自然。大分思い詰めていたようだし、外の空気を吸うのも悪くないだろう】とのこと。器広いね。
ウラ外務卿は、雇ったダークホビット忍者に後を付けさせることくらいしているだろうと思ってどこにいるのか訊きに政務室に会いに行ったら、なんか頭を抱えていた。
ホビット達は、尾行しているのがグイ将軍に気付かれて、追い返されたらしい。【すぐ戻る。城で待っていろ】との伝言を預かってた。
ウラさんが、エルフ語でなんかぼやいたが、エルフ語わかんないっつーの。
退室後、同行していた通訳のカクさんにウラさんが何をぼやいたのか訊いたら「【あいつ、昔から思いつめると周り見えないんだよなあ】と仰ってぃました」ということだった。
二人、仲いいのかな。
まあ、いいや。こういうのは、時間が解決してくれるのを待とう。