2月7日 日記ではない
昔、タマちゃんに訊かれたことがある。
「アンタ、どうしてそんなに他人のためにそこまで頑張るにゃ」
いや、別にそこまで献身的なわけじゃないよ、余裕がある時なら、人を手伝うってだけの話で、切羽詰まれば自分優先するさね。
「傍から見てて、そは思えないにゃ。あんたがそれ本気で言ってるなら、感覚が狂ってるにゃ。暗がりの中の灯火のように、人を安心させる何かでありたい? そんな美意識のために命までかけて。何がそうさせるにゃ」
そりゃ、この世界だって、綺麗なもんばかりじゃないんだろうけどさ。せっかくだったら、自分の目の前くらいは綺麗な方が気分いいじゃない。
「あんたにそう思わせる根本って、一体何ニャ?」
昔、胃がんで死んだじいちゃんが、亡くなる三日前、意識失う前に言ったのよ。「負けたらあかんよ」って。その時は意味がわからんかった。でも、今は、この世界に来た今は、境遇に不貞腐れるなってことかなと思うようになった。
理由を言えと言ったら、多分そんな感じ。
「いいお爺様だったんだにゃ」
うん、いい爺ちゃんだった。
「なら、私もそうあることにするにゃ」
いやいや、タマちゃんが僕のマネなんてする義理はないって、損を選ぶ生き方なんて、絶対やめるべきだよ。
「私の生き方を選ぶのは、私にゃ。嫌ならあんたも少しは自分のこと考えるにゃ」
いつだったかなあ、この会話したの。
崖から落ちながら、ふと思い出した。
これって、走馬灯?