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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
新パーティ結成! 紋の国横断編
203/363

1月30日 紋の国 第1宿場町 落し物したんでちょっくら引き返してくる

 おそらく平成27年1月30日

 剣暦××年12月30日


 紋の国オーバーフラッグ

 横一文字街道 第1宿場町



 することがないので、朝に日記を書いている。

 なんだか町が騒がしいと思えば、よくよく考えれば、この世界の暦で年末がすぐそこまで来ているということに気付く。

 剣暦って地球の西暦と一カ月遅れてる以外は大体一緒なんだよね。

 ということは、明日は大晦日だけれど、この世界では何かするんだろうか。

 去年の年末年始は確か魔道具『動く鋼の巨人』とか言うのを隠ぺいするために必死だったので、お祝いどころではなかったのだ。

 というわけで、タマちゃんに訊いてこの世界の正月について教えてもら




 立った今、所用ができた。

 ちょっと今から第3宿場町まで出掛けてくる。



 ※※



 情報収集に出掛けていたタマちゃんが、青い顔をして、宿に帰ってきた。

 どうしたのかと訊いたら

「ごめんなさい、財布を、落としたにゃ」

 タマちゃんでもそんなことあるんだな。

「一緒に探しに行こうか どこら辺に落としたのか覚えある?」

「この前、馬車が襲われてるのを助けた時に落としたみたいにゃ」

 お茶を吹いた。5日前じゃん。

「あんたが馬車の消火の時に火傷して、塗り薬塗ろうと思って荷物を広げた時に忘れたみたいにゃ。多分、あの時に……道に」

「あー、あの時かあ」

 珍しいもんだ。いつも文句言ってるタマちゃんがこんなことを。

 今まで気付かないなんてこと、あるんだな。

 そう言えば、今回の旅の会計はカクさんしてるからな。

 まあ、茶化したいけれど、大分気がめいっているようなので

「そんな時もあるよ。お金は、仕方ないよ。道に寄付したとでも思って。さ」

 とか言ったら、なんかタマちゃん泣きそう。え、なして?

「金なんかどうでもいーにゃ。でも、あの財布は、あの財布は……!」

 そんな思い入れのある財布使ってたのか。あのガマ口財布。

「そんな大事な財布だったの?」

「うん……」

 ふーむ。

「じゃあ、今から探しに行ってみる?」

「……え?」

「休み休み歩いて5日くらいの距離の往復でしょ? 馬を借りて頑張ってもらえば、2日半くらいで帰ってこれないかな。予定では、明後日 (2月1日)の朝に出発だから、それまでに帰ってくればいいわけだし」

「馬なんて……どこにいるにゃ。それに私、馬になんて乗れないにゃ」


 スケさんを呼ぶ。

「スケさん、今すぐ速くてタフな乗り物が欲しいんだけれど、手配ってできないかな」

「……フロッグワード産の凶暴でタフな馬なら、すぐに一頭手配できますけど、買います?」

「買う」


 次に、フッドさんを呼ぶ。

『ねえ、フッドさん。今すぐ僕とタマちゃんを連れて、フロッグワード産の凶暴でタフな馬で走って欲しいんだけれど』

『いいですよー、騎兵服に着替えてきますね』

『軽いね』

『軽騎兵ですから』

 いや、伝令騎兵でしょ。


「というわけで、タマちゃん行こうか」

 タマちゃんがぼろぼろ泣き出した。

「駄目にゃ。あるかどうかわかんないにゃ。それに、そんなつまらないことで大事な御勤めに支障が出ちゃいけないにゃ」

「そんなこと言ったって、僕がここでこういうことしないとがっかりする人がこの世界には何人かいるから、仕方ないよ」

「だ、誰がそんなけったいなこと」

「ジンさんとか、姫様とか、タマちゃんとか」

「な、わ、私はそんな」

「というわけで、タマちゃん行こうか」

 差し出した手を、おっかなびっくり握り返された。


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