ある手帳の見返し
この文字を読める人へ
この文字が読めるなら、あなたは20世紀か21世紀の日本からこの世界に流れてきた人だと思います。
もしくは、神語(この世界では日本語をこう呼びます)を会得している獣頭人か王族関係者。
○ここは異世界ラドゥバレトフ。地球ではありません。簡単に言うと、剣と魔法の世界みたいなもんです。指輪物語とかゲド戦記知りませんか? エルフとか、ドラゴンとか、わんかさいます。背の低い太ったひげ面とか、喋るドラゴンとか、巨人とかがいます。
日本語通じません。でも、襲われそうになったら、北島三郎の『与作』かSMAPの「青いイナズマ」のサビを歌ってください。この世界の生き物の、最近の流行です。たぶん、その歌を聞いたら、なんかノリがよくなって知らない言葉で変な調子で歌い出しますが、「へいへいほー」とか「げっちゅう」と合いの手をいれてあげると、喜んでくれるはずです。
○今、この大陸で全種族を巻き込んだ、大戦争が起きようとしています。もし、あなたがこの手帳を読んでいる時、ターバンまいたスーパーマリオみたいなヒゲのおっさんが周りにいたら、注意してください。そいつが黒幕ブンゴです。
ふざけてるな、と思うかもしれませんが、マジです。
もし、この手帳が誰かの手に渡っているとしたら、僕は死んでいるかもしれません。
今、陰謀に巻き込まれ、戦争を止めるためにエルフの国に急ぐ最中に、日記の見返しに書き込んでいます。
最悪の事態を考え、僕の手記を残しておこうと思います。
僕と同じようにこの世界に放りこまれた人のために、この手帳を残します。
もし、すべて失敗したとしても、どうか、このことだけは、後世に語り継いでください。
例え種族が違おうが、国交がなかろうが、七人の王は全員平和を望んでいた。
おそらく平成26年3月24日
剣暦××年2月24日
草原の国と小人の国の間の草原のどっか。
高町観照