1月26日 紋の国 第2宿場町 上着の代わりを探しに行って、熊の毛皮を買う。
おそらく平成27年12月26日
剣暦××年1月26日
紋の国オーバーフラッグ
横一文字街道 第2宿場町
全員揃ったのだが、フッドさんが雇用契約の関係でまだ出発できない。
今日の夜までメイド服着て給仕をしていた。
やっとこさ、明日にしゅっぱつだ。
フッドさんに話を聞いていたら、どうやら、彼女がここでバイトし出してから客入りがいいそうだ。
フッドさん、オッサン受けしそうな性格の女の子だからな、うん。
彼女、生まれた村や王都では『騎兵の神の使い』なんて呼ばれるほどに馬の扱いに長けた娘ってことだけど、なんか、『商人の神』の使いなんじゃないだろうか。雇われた店雇われた店で繁盛しとる。
というわけで、今日は暇だったのでアームさんと一緒に服を買いに行く。
僕は上着をなくして半袖。カードで大負けして身ぐるみはがされたアームさんは、貧相な服。
カクさん曰く、エルフロードを突破するのは過酷な旅だから、丈夫な身を守れる服を用意するようにと言い付けられているので、特に。
しかし、問題は、この世界の人間という種族の平均身長から+30cm、平均体重から+70kgくらい重い僕に合うサイズの服なんて、あんまり置いてないだろうなということ。
結果、アームさんは分厚くて丈夫な生地の服を手に入れた。これ、なんて布なのだろうか。腕の太いアームさんが袖を通す割に、体の方はぴったりサイズ。
なんでだろうと思って、お店の人に訊くと、『職人見習いが腕と体のバランスを間違えて作ってしまったけれど、いい生地なんで捨てるのももったいないから置いておいたもんです。お安くしときます』
ついでにその見習いさん、うっかり間違えて身長190cm体重120kg胸囲130cnある男物の服とか作っちゃいないですかね? と訊いてみたが、さすがにそんなものは、なかった。
その後、色々な店を渡り歩いたが、どこにもなかった。
仕方ないからマントでも羽織ってごまかそうと思ったら、まず僕の体を包めるだけのマント(人間用)もない。
……そういや、地球にいる時も、大体地元の店にサイズなくて取り寄せてもらっていたな。
そんな中アームさんがこれならいけるんじゃないか? と言って指差したのは
熊か猪かわからないけど、大型四足獣の毛皮だった。
いや、あれ頭ついてるじゃん。
あれ、床に敷くためのもんじゃないの?
試しに羽織ってみたら、サイズぴったりだった。
物の試しに、購入して、帰る。
アームさんがくくる紐をつけて、ちゃんと着て歩けるようにしてくれた。
熊 (?)の頭の部分が、フードみたいに被れるようになっている。
だから、どうと言うわけでもないのだけれど。
※※
買って帰って、ノーズさんに見せる。
笑うのをこらえるように、腕をつねっていた。
カクさんに見つかる。
「……寒さは、しのげるかなぁ」
真面目だった。
タマちゃんに相談。
「獣頭人にでも化けて国境を超える気かにゃ? それは気の回し過ぎだと思うにゃ」
真面目だった。しかしその後、
「あの腕力馬鹿 (たぶんアームさんのことだろう)、止めりゃいいのに。もう少し堅物だと思ったんだけど、にゃ」
アームさんが選んでくれたことは、黙っておいた。その後、
「あれかにゃ、あんたといると、みんなカンテラ病にでも侵されるんじゃねーかにゃ? 後先考えず、無茶をするようになる」
「……」
「……」
「……でも、そうなると一番カンテラ病重症なのは、タマちゃんだと思うけれど」
「怖いこと言うんじゃねーにゃ!」