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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
新パーティ結成! 紋の国横断編
196/363

1月23日 紋の国 アームさんと合流した。

 おそらく平成27年1月23日

 剣暦××年12月23日

 

 紋の国オーバーフラッグ

 横一文字街道 第4宿場町



 ホームシックになってしまった。

 家族のことを、思い出してしまった。

 僕の家族なんて、もういないのに。


 第5宿場町に着く。まあ、思った通りアームさんがいた。

 何故か、騎兵服ではなく、雇われ人夫みたいな上半身裸で定期便馬車の荷の積み下ろしを手伝っていた。

 詳しく話を訊くと、アームさんは命からがらここまで逃げて、妙に派手な服を着たエルフとかちあったそうな。

 で、そのエルフがアームさんが探しているテトラさんの父親のことを知っているようなそぶりを見せたとかで、カードで勝負して勝ったら教えてもらえるということになったそうな。

 ぼろ負けして、全財産に着ていた服まで全部、取られてしまって今に至るそうな。

 とりあえず、約束の集合日になるか、誰か仲間が来るまでここで日雇いをして時間を潰していたそうな。

 なんだか、色々と心配していた僕がバカみたいで、少しだけさみしい気持ちが薄らいだ。

 明日は誰かとまた再会できるだろうか。

 僕はノーズさん当たりじゃないかと勝手にいぶかしんでいるのだけれど。



 ※※



 歩く時にタマちゃんと手をつないでいると、カクさんが

「ゎたしも、てをつなぎたぃです」

 とか主張しだした。

 何を言い出すのだろう、とびっくりしたが、珍しくカクさんが自分の要望を口にしたので、叶えてあげたい。

 と言う訳で、右手でタマちゃんの手を引っ張り、左手でカクさんの指を持つ。

 カクさん、すごい勢いで手を振る。痛い、痛い。


 道行く人達の視線が物凄い。

 確かに両脇に獣頭人侍らせて歩くのは、なかなか見ることのない光景だからなあ。しかし、大きなカクさんと小さなタマちゃんを連れて歩いていると

「けれど、こうしてぃると家族みたいですね」

 カクさんに先に言われた。

 黒豹と猫。同じ猫科だから、母娘に見えなくもないのかしら。

 そこで、ふと、今まで気にしなかったことが気になる。

「タマちゃんって、今何歳だっけ?」

「知らないにゃ? 14だにゃ」

 思ったより年上だった。見た目的に10才前後かと。

「イオちゃんと同い年なんだね。すると、カクさんとタマちゃん、ちょうど親子くらいだね」

 言ってから後悔した。

 あんまり、女性に年齢ネタをふって、楽しいことになった覚えがない。

 もし、カクさんが30代というのを気にしていたらどうしよう。


 おそるおそる顔を見るが、カクさんは普通の顔をしていた。

 代わりにタマちゃんが

「でも、その親子と手つないでるあんたは何にゃ、おとーさん?」

 ……あ、僕がそのポジションになるわけ?


 しかし、僕が28で、カクさんが30前半で、タマちゃんが14か。

 ……微妙な年齢差だな。


 すると、カクさんそこでやっと

「なら、カンテラさんが、旦那様ですか……」

 まあ、ポジション的に。


 そこで急にカクさんの手を握る力が強くなった。

 痛い、痛い! やめれ!

 そんな子どもの戯言に真剣にならないで!


 タマちゃんが、妙に楽しそうだった。そして

「懐かしいにゃ。父様と母様と暮らしていた時は、よくこうして並んで歩いたにゃ」

 ちょっと、驚いた。タマちゃんが実家のことを話すなんて。

「まあ、ふつーは、親子三人手をつなぐなら、娘は真ん中だけどにゃ」

 僕が真ん中にいることを、茶化してるらしい。しかし、反論。

「いや、手をつないできたのはタマちゃんじゃん。それに、僕が子どもの頃は父ちゃんが真ん中だったぜ?」

 すると今度はタマちゃんが目を丸くしていた。

「珍しいにゃ、あんたが自分の子どもの頃のこと口にするなんて」

「そう? よく言ってるよ?」

「人に訊かれてじゃなくて、自分から言うのは、もしかしたら初めて聞いたかもしれないにゃ」

 そんなもんかな。

「あんた、人にばっかり家庭の事情聞かないで、自分のこともたまには口にするべきにゃ」

 そうは言ってもなー。

「そうは言ってもなー。僕が10になる頃には、父ちゃんは死んでたし、母ちゃんは神隠しに遭ってたし、それ以外の家族も、大抵物心つく前に行方不明になってたから、思い出ってあんまりないのよ。あ、おじさん家で世話になってたから……、あーでもあんまり家に寄りつかなかったからなー。びっくりするくらい子ども時代のってないのよね」

 

 言ってから、後悔した。

 タマちゃんの手を握る力が、急に強くなる。

 痛い、痛い、やめれ。

「すまんにゃ、余計なことを訊いたにゃ」

「大したことじゃないよ」


 しかし、やっぱり後悔した。

 急に、実家のことを思い出した。

 それでも、それなりに思い出のあるあの町が。

 もう、帰れないからと諦めてこの世界に馴染もうとしていたことを思い出したせいか。ちょっと、ホームシック。


 すると、カクさん。

「カンテラさん……、可哀想」

 ドストレートな感想だった。そして、その恐怖を呼び起こす獣の凶相で

「私が、カンテラさんのママになります」

 

 本当に、この世界の人間は、何かがおかしい。


「いや、カクさん、オカンはいくらなんでも」

「じゃあ私はお姉ちゃんになってやるにゃ」

「タマちゃん、一回りも年下の姉なんて、いない。っていうか、その場合僕は何頭人になるのよ」

 カクさんとタマちゃんは顔を見合わせた後僕を見て

「熊頭人とか?」

 

 本当に、この世界の人間は、何かがおかしい。


 悲しんでるのが馬鹿らしくなる。


 おかげで、ちょっと救われる。


 


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